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エルメスの「シェーヌ・ダンクル」と「パンク」の出合い。

  • 2017.6.19
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先月、京都に期間限定でオープンしているエルメス祇園店で、最新のジュエリーコレクション「シェーヌ・ダンクル・パンク」にフォーカスしたイベントが開催された。ジュエリー部門のクリエイティブ・ディレクター、ピエール・アルディが手掛ける反骨精神とエレガンスがシンクロする最新作コレクションが、その世界観を投影した特別な空間でお披露目された。今回、このイベントのために京都に駆けつけたピエール・アルディに直撃!クリエーションについて、大いに語ってもらった。

エルメスのジュエリー部門クリエイティブ・ディレクター、ピエール・アルディ ©Alexis Armanet

—新作のジュエリーについての質問です。メゾンを象徴するアイコニックなモチーフ、シェーヌ・ダンクルとパンクが融合することになった経緯について教えてください。
ピエール・アルディ(以下P):今年のエルメスは “オブジェに宿るもの”を年間のテーマに掲げている。僕自身、このテーマを聞いた時にメゾンで一番、意味やセンスを持つオブジェは何だろうと考えたんだ。それからまたエルメスのメゾンの外にあるオブジェと比較もしながら、ものが持つ意味合いを考えた。外にあるオブジェで実用的なもの、例えば安全ピンとかね。釘やトンカチなど、誰もがどんな用途なのかを知っているものと同じように今回選んだ安全ピンもまたみんなが知っているもの。そして、少しジュエリーに近い部分があると思ったんだ。安全ピンは、物と物をつなぎ合わせたり、閉じると実用的で、さらにフォルムが非常にシンプルである。ブローチとして、安全ピンのフォルムを捉えた時に、とてもシンプルであることも気に入ったんだ。僕が今回、興味を持ったのは、2つのものを比較し、それを近づけるという作業。シンプルでフォルムとしては単純過ぎるものと、かたやエルメスのように洗練されたもの。その異なる2つが融合した時にどうなるかが知りたかったんだ。

ブローチ「シェーヌ・ダンクル・パンク」シルバー¥96,120 ©STUDIO DES FLEURS

ブローチ「シェーヌ・ダンクル・パンク」ホワイトゴールド/ダイヤモンド¥6,998,400 ©STUDIO DES FLEURS

—“パンク”の象徴として選んだのが安全ピンということですか?
P:世代によっては、そうだね。この安全ピンには、いろいろな意味があってね。フランス語で安全ピンを意味する単語は、赤ちゃんを連想するような言葉を繋いでできている。ピンの部分で刺す、痛みを表現しながら、柔らかい、優しいイメージも同時に持ち合わせているのが安全ピンなんだよ。そして、70年代に流行ったパンクのシンボリックなモチーフでもある。そのような、いろいろな意味合いを持つモチーフである安全ピンに興味を持ったんだ。さらに、実用性だけを追い求めたシンプルなフォルムで、特別な価値を見出されることのないデザインと、高価で高貴なものを組み合わせるアイデアが面白いと思った。ジュエリーの世界では、安全ピンのように、ものを繋いだり、止めたりするような機能を持ったものは少ないし、さらにある時代、ジュエリーのように装飾として使われていたこともある。そんな安全ピンは、とても稀有な存在だと思うんだ。反体制のモチーフである安全ピンをプレシャスなものミックスする作業はデザイナーとしても楽しかったよ。

© Nacása & Partners Inc./Courtesy of Hermès Japon

—今回、ジュエリーの新作を京都・祇園店で発表されました。その感想は?
P:初めて祇園店を訪れたのだけど、とても素晴らしく、美しい空間だと感じた。またエルメスが手掛ける空間が違う国、異なる表現、違う歴史を持った場所で体験できるのも興味深いと思ったね。今回は、パンクがテーマの新作だから、挑発や破壊などの言葉、あるいは破るというアクションからインテリアのイメージを広げてたんだ。例えば、壁などはたたき割ったような痕跡がみられるような仕上げになっていたりね。そこにジュエリーを飾って、ムードを表現した。60-70年代に活躍したアーティスト、ゴードン・マッタ=クラークの作品がインスピレーションソースになっている。

© Nacása & Partners Inc./Courtesy of Hermès Japon

—京都ではどこか行かれましたか?
P:京都は2度目だったので、少しは街のことはわかっていたんだ。小道を歩いたり骨董のギャラリーに行ったりしたよ。短い滞在だったから、お寺などをめぐる時間はなかったけど、ああいう京都の風景、僕は大好きなんだ。

—旅先で風景などは、デザインのヒントになったりしますか?
P:場所や風景と言うよりも、そこで出会った人たちのエレガントな所作や雰囲気が記憶に残り、ものづくりに影響を与えることはあるね。人々の体の動かし方などもね。僕の作品は抽象的な部分も多いから。皆さんと見えているシーンは同じだけど、違うことを記憶に留めているんだと思うよ。

イベントは、下記店舗でも順次開催。「シェーヌ・ダンクル・パンク」の世界観を体験して。

「CHAINE D'ANCRE PUNK」
期間:6月21日~7月3日 エルメス銀座店 3階 ジュエリー&ウォッチ フロア
期間:7月22日~8月6日 エルメス 伊勢丹新宿店
 ●問い合わせ先:
エルメスジャポン
tel:03-3569-3300
http://www.hermes.com

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