1. トップ
  2. レシピ
  3. エキスポに見る、台湾デザイン最前線!【2017トラベル 台湾】

エキスポに見る、台湾デザイン最前線!【2017トラベル 台湾】

  • 2017.6.10

会場のうちのひとつ、松山文化クリエイティブパーク内には台湾デザインミュージアムがある。
【さらに写真を見る】エキスポに見る、台湾デザイン最前線!【2017トラベル 台湾】
フードだけじゃない。デザインも注目が浴びつつある台湾。4月に台北で開催されたデザイン博覧会「台湾文博会(クリエイティブ・エキスポ台湾)」を追ってみると、若いデザイナーたちが新たな価値をデザインに生み出していこうとするパワーに満ち溢れていた。

最先端カルチャーの発信地に集結。

「台湾文博会」(台湾文化部主催、台湾デザインセンター運営)は台北市内がデザインやアートに染まるビッグイベント。会場はデザイン、クラフト、ライセンスと3つのカテゴリーに分かれており、展示場となっているのは華山1914クリエイティブパーク、松山文化クリエイティブパーク、台北エキスポパーク争艶館。華山1914クリエイティブパークと松山文化クリエイティブパークの元の建物はそれぞれ、日本統治時代に建てられた酒工場と煙草工場で、前者は2007年にリノベーション、後者は2011年に一般開放され、イベント会場などに使われる多角的空間に生まれ変わった。

現在では高感度なカフェ、レストラン、ショップ、ギャラリー、映画館や本屋などが入っており、広大な敷地内には緑も多く、最先端のカルチャー発信地となっている。「台湾文博会」は今年で7回目の開催だが、来場者は23万人以上、出展者は25カ国・644社と昨年よりも規模が大きくなり、台湾デザインに世界の関心が集まっているのを感じさせる。

「カルチャー・エクスプロージョン」。

テーマパビリオンのメインテーマは「カルチャー・エクスプロージョン」。台湾を代表する若手デザイナーたちがテーマに基づいてさまざまな作品に昇華。「台雑当道(Taiwanese Grocery Explosion)」と題されたゾーンでは、台湾で活躍するデザイナー4人、徐景亭、呉孝儒、游聲堯、曾熙凱がそれぞれの視点で、台湾の生活雑貨店「小北百貨」で販売されている商品をピックアップし、キュレーションして、「台湾という土地が育んできた美しいものとは?」といった視点で台湾の美学を検証、解剖した。「小北百貨」は生活雑貨が何でも揃うローカルチェーンのショップで、台湾のリアルな文化、ライフスタイルが商品から垣間みられる点でもおもしろい。

葉忠宜と張軒豪の2人のフォントデザイナーによる空港のパブリックサインの新しいデザインの提案は、フォントデザインの重要性、そして可能性を見る者に問いかける。リサイクルガラスで知られる会社「春池ガラス」のゾーンでは、リサイクルガラスを小石のように磨き上げたもの40トンを床に敷き詰め、参観者は裸足になってガラスの心地よい感触を体感する仕掛けも。

特別企画「工藝現場 Crafts LIVE」は、新潟・燕三条の「燕三条 工場の祭典」、富山・高岡の「高岡クラフツーリズモ」に加え、台湾の陶磁器産地「鶯歌(イングー)」が出展し、ものづくりのワークショップを開催。最終日の週末はすべての会場に長蛇の列ができるほど大盛況だった。

繊細で斬新な器のアート。

各展示会場では、さまざまなデザイナーや企業、クラフツマンなどの作品やプロダクトを並べたブースが並んでおり、そのなかでも目を惹いたブースが、今回の「台湾文博会」で文化&クリエイティブ賞を受賞した「Studio Lim」だ。デザイナーの林昀廷はイギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アートでプロダクトデザインを学び、その後、天然資源を用いた素材開発の会社で働いた後、帰国。その経験を生かしさまざまな自然素材と科学技術を組み合わせ、サスティナビリティにこだわった、新たな素材を生み出している。

木が由来の特殊な素材「Fiberwood」で作られたコースターとデザート皿は、どこか和紙のような繊維の持ち味を生かした繊細な模様。食卓に置くと柔らかな印象を与えるが、実際触ってみると固く、耐久性にも優れている。

アーティストでデザイナー、イラストレーターでもある張簡士揚の「只是 ZISHI Art」のブースに並んでいたのは、伝統的な中国の陶磁器にスケードボードにのった虎の絵をデザインした花瓶や皿、ティーポット。中国や台湾では白地の素地に青で虎や龍を絵付けした陶磁器は古くから存在するが、どこかユーモラスに描くことで、伝統に今の感覚を組み合わせている。

張簡士揚は動物や人間をブラックなユーモアを交えて独特の画風で描くことでも知られ、台湾のファッションブランドとのコラボレーションなど、その活動は多岐にわたる。今年の正月には5階建ての雑居ビルの側面にサーフィンをするウサギやドラゴン、馬など干支の動物をペイントして話題になった。

紙工芸をモダンに昇華するペーパーアーティスト。

PAPERSELF」は、中国の切り紙工芸「剪紙(せんし)」の技術を応用し、レースのように繊細な紙製のアイラッシュや美しいタトゥーシールが人気の、台湾出身のデザイナーによるペーパーアートのデザインユニット。現在はロンドンを拠点に活動しており、映画『ハンガー・ゲーム』でジェニファー・ローレンス演じる主人公のカットニスが「PAPERSELF」のアイラッシュを使用、全米映画俳優組合賞(SAGアワード)の受賞式でアン・ハザウェイがアイラッシュの一部をネイルに貼付けるアレンジで注目を集めたことも。

タトゥーシールは光る素材を多用し、光の反射で見え方が変わり、アクセサリーのような使い方ができるすぐれもの。アートとデザイン、ファッション、ビューティの要素が合わさった、早速、使ってみたくなるプロダクトだ。

そのほか、「Soyee」の愛嬌のあるLED卓上ライト「Ash Wood Robot Lamp」や、現代建築にインスパイアされ、コンクリート製の文字盤とスティールで作られた「22 Design Studio」の腕時計など、実力派デザイナーの作品が多数展示。今、台湾のデザイナーたちが目指すのは、自らのアイデンティティを作品にどう反映させ、表現するかということ。台湾デザインは今後、もっとおもしろくなりそうだ。
参照元:VOGUE JAPAN

の記事をもっとみる