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ヴィンテージマニアを興奮させる、歌手ダリダのモード展。

  • 2017.6.7

ガリエラ美術館で開催中の『Dalida, une garde-robe de la ville à la scène(ダリダ、プライベートからステージまでのワードローブ)』展は、モード展にしてはちょっと不思議な雰囲気だ。というのも、いつもより男性の鑑賞者の姿が多く、しかも展示されている服を撮影することに余念がないという、危ない食いつきぶり。そして年配女性はというと、複数の男性ダンサーを従えて「Laissez moi danser」を歌って踊る彼女のビデオを見ながら、いまにも美術館内で踊り出しそうに身体を揺らしていたり……。

『ダリダ』展のオープニング・シーン。左は1958年に初リサイタルのため、ジャン・デセがオペラレッドのビュスチエ・ドレスをデザイン。1981年に彼女は再びこのドレスでオランピア劇場に登場した。20年間大切に保管されたドレス、そして20年間キープされたスレンダーなボディライン!
photo:Benoît Fougeirol

ダリダ(1933〜1987)とは、エジプト生まれのイタリア人で、50〜70年代にフランスで国民的人気を博した歌手であり女優である。アラン・ドロンと大人の恋の駆け引きを粋に歌った「甘いささやき」は、さわりの“パローレ パローレ”が覚えやすいこともあって、日本でもヒットしたので、名前を知っている人もいるのでは? 54歳のときに失恋が原因で自殺。そんな人生が、ファンにはより一層彼女を忘れがたい存在にしているのだろう。

左:最初の部屋は1956〜1965年、彼女が20代から30代初めの頃の服を展示。1950年代の後半に着たシンプルなビュスチエ・ドレス6着の展示は、まるでバービー人形の着せ替えを見ているよう。
右:6着のうちの1着。ジャック・エステレルによる若々しいビュスチエ・ドレス。1959年。

左:中央のボレロはニナ・リッチ。1968年にパリ市からメダルを贈られた際に着用した。左のコートと右のケープはピエール・カルダン。
右:中央はカルヴェン。左右はピエール・バルマンで、同じデザインでも色違いでステージ用、ツアー用に。

展覧されているのは、ファッション大好き! というダリダの50年代末から80年代までのプライベートのワードローブ及びステージでの衣装の合計200点近く。その時代、時代を代表するスタイルの服ばかりで、ニナ・リッチ、ピエール・バルマン、イヴ・サンローラン、ロリス・アザロなどかなりの服が著名クチュリエやクリエーターのものだ。

左:第二室の展示は「1966〜1978 人気スターらしいドレス」。プライベートの服とステージ用のドレスが向かい合う。プライベートは当時の流行にのっとりヒッピースタイルだ。イヴ・サンローランのプレタポルテも愛用した。
右 ピエール・バルマン、ロリス・アザロ……ステージ用の白いドレスのオンパレード。

80年代はキャシャレル、ジトロワなどを着用した。

会場構成はロベール・カルセン。オペラ作品の舞台装飾を世界各地で担当しているだけでなく、オルセー美術館の『印象派』展、グラン・パレの『空へ、海へ、彼方へ──旅するルイ・ヴィトン』展など展示作品の単なる器というだけでなく会場そのものも鑑賞に価する展覧会を多数手がけている。ダリダ展での圧巻は、1978〜1987「ショーのための衣装」の部屋だろう。細長い会場にレコードをイメージした回転する丸いステージを複数配置して、赤、アニマルプリントなどテーマ別に服を展示。会場のスクリーンでヒット曲を歌い踊るダリダの姿を見ることができるのだが、1曲のうちに複数のドレス姿で登場という編集が楽しい。

メイン会場は「1978〜1987 ショーのための衣装」。クチュリエではなくステージ衣装専門デザイナーのミッシェル・フレスネー、ミンヌ・バレルなどによる華やかな衣装が並ぶ。

左:「スターのドレッシングルーム」と題した小部屋では グッチやランセルのヴァニティー・ケースを始め、靴やベルトなどを展示。
右:最後の部屋「スクリーンのワードローブ」では、ダリダが演じるシーンがスクリーンに映しだされ、その前に映画で着用したドレス類が展示されている。女優になることを夢見ていた彼女は、歌手デビューの後、1958年から複数の映画に出演した。映画出演の際の衣装を自分で選ぶことが多く、服に愛着をもつ彼女は同じドレスを2本の映画で使用。会場のスクリーンでそれを確認できる。
photos:Mariko OMURA

ガリエラ美術館は花で彩られた庭も時間を過ごすのに悪くない場所だ。ランチタイムはけっこうな数の人が集まってくる。晴れた日、展覧会を見たあとはぜひ庭に回ってみよう。プレジダン・ウィルソン大通り、パレ・ド・トーキョーの向かいに庭専用の入り口がある。

『Dalida, une garde-robe de la ville à la scène』展
会期:2017年8月13日まで
会場:Palais Galliera, Musée de la Mode de la Ville de Paris
10, avenue Pierre 1er de Serbie
75116 Paris
tel:01 56 52 86 00
開)10:00〜18:00(木・金〜21:00)
休)月
料金:12ユーロ
www.palaisgalliera.paris.fr

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