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『VOGUE JAPAN』6月号、編集長からの手紙。

  • 2017.5.2
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「イットガールと巡る、東京ヴィンテージ・クルーズ。」 「水曜日のカンパネラ」として活動するコムアイさん(左)と、女優の小松菜奈さん(右)をはじめ6名のイットガールたちがハイブランドとのミックススタイリングに挑戦。 Photo: Takanori Okuwaki
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自由な「宝探し」で、スタイルレッスンを。

最近の若い女性たちにはヴィンテージショップ好きがとても多いとか。編集部の若手エディターはもちろんですし、お会いする機会のあるモデルや女優の方々も、みなさんワードローブの多くはヴィンテージだという話をよく聞きます。それは、私にとってはちょっと驚きでした。実は、私自身も20代の頃はヴィンテージショップを覗くのが好きで、お気に入りの「掘り出し物」を探すのに、ワクワクと長い時間をそこで過ごしたものでした。そんな記憶の中、グランジの90年代が過ぎたあたりから、街を歩く若い女性たちの装いから「古着」的なニュアンスが消え、もう「古着」は古いのかしら、なんて感じていたものですから。しかし、この数年、個性的なヴィンテージショップの噂をよく聞くようになり、また人気が復活しているのを肌で感じて、ちょっとうれしい気がしていたのです。

そこで、今月号ではおしゃれに敏感なイットガールたちが案内するヴィンテージ特集を組むことにしました(p.100)。高畑充希さん、小松菜奈さん、福士リナさんなど、第一線で活躍する女優やモデルの方々が、お気に入りのヴィンテージショップで自分好みのスタイルに身を包み、なぜヴィンテージが好きなのかを語ってくれました。「手頃な価格で好きなものが見つけられるから」、「かつての時代のスタイルが学べるから」、「味があるから」等々。すべて納得ですよね。私も「世界にひとつしかない(たぶん)自分だけの宝物」を探して、ラックからラックを時も忘れて吟味していたのを思い出します。

初めて訪れた外国の都市の思い出は、必ず土地土地のヴィンテージショップとそこでゲットしたアイテムと結びついていました。レースのブラックドレス(ロンドン)、クロコのハンドバッグ(NY)、オリーブグリーンのレザージャケット(アムステルダム)……。それぞれ年代もテイストも違うものですが、「自分が好きなもの」であったのは圧倒的に確かで、そんなヴィンテージショップで過ごした時間が自分のスタイルを見つけるための大切なレッスンだったような気がします。

今号では恒例の4都市コレクション・スナップの大特集もあります(p.127)。世界中から集まるファッショニスタたちが、思い思いのおしゃれを競い合うオフランウェイの華やかさは年々増すばかり。同じような特集をヴォーグでは15年以上続けていますが、どんどんスタイルが自由にミックスされてきているのを実感します。スポーティ、グラム、ロックにボヘミアンetc.。こんなスーパーフリーなミックス感はランウェイでも主流になりつつあります。グッチ(GUCCI)を見てみればわかること。もはや「~スタイル」や「何年代風」といったカテゴリーに意味はなく、新しいものもヴィンテージ風も同じ価値をもってモードというステージに並んでいる、ということでしょう。

そこで大切になるのが「これが好き!」というパーソナルなスタイルの選択です。先にお伝えしたように、私にとってその感覚を磨く場がヴィンテージショップだったわけですが、今は、街中がファッションという名のレッスンの場になっているのではないかと思います。ミレニアルズと呼ばれる新世代にとってはそれがもはや常識。その証拠に、今回ヴィンテージ特集に登場した女性たちはみんな、ブランドの最新アイテムとヴィンテージを極めて自然に組み合わせていました。新しいファッションはいつも若い世代から生まれてきます。しかしながら、自由なミックス感がモードの主流になっている今、年齢も性別も超えるスタイルの選択の時代がすでに訪れているのも感じます。スタイルを生むのは年齢の若さではなく、年齢とは関係なく誰でもが(もちたいという意志さえあれば)もつことができる“若い情熱”のなかにある、と言えるのではないでしょうか。

つい最近、会社のすぐ近くに話題のヴィンテージショップがオープンしたと聞きました。私も久しぶりに「宝探し」に出かけたいと思っています。“未知の冒険”へのワクワク感こそが“若い情熱”を生むエネルギーに火をつけてくれるはずですから。
参照元:VOGUE JAPAN

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