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春の京都の風物詩『KYOTOGRAPHIE』今年の見所は?

  • 2017.4.26
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京都の街を借景に炙り出される、不条理な「愛」の本質。『 KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2017』

アーノルド・ニューマン『イゴール・ストラヴィンスキー、作曲家・指揮者』ニューヨーク、1946年。ピアノに全身全霊を委ねるかのような音楽家のポートレート。

イサベル・ムニョス「メヴレヴィー教団」シリーズより、イスタンブール、トルコ、2008年。神と一体化し、高次の精神性に到達する儀式といわれる。

春の京都の風物詩となった写真フェスティバル、『KYOTOGRAPHIE』。国内外の選りすぐりの写真作品が歴史的建造物やモダンな近現代建築の空間に展示され、普段は公開されていない建物に足を踏み入れる絶好の機会でもある。今年のテーマは「LOVE」。宗教や歴史、地域や環境、世代や階層によって「愛」の形はそれぞれだ。また多様であればこそ、微妙な差異が軋轢や衝突も生んできた。
スペインの写真家イサベル・ムニョスは、イスラム教神秘主義スーフィズムの儀式的な旋回舞踊を撮影した「Love and Ecstasy」、コンゴの森林地帯でゴリラやボノボなど霊長類の率直で烈しい愛情表現を撮影した「Family Album」、ふたつのシリーズを出展する。数多くの著名人を撮影したアメリカの写真家アーノルド・ニューマンは、スタジオ撮影が当たり前だった1940年代、被写体の人物が慣れ親しんだ場所で、愛着のある象徴的な事物を取り入れ、彼らの個性や偉業を示唆するポートレートを世に送った。オランダのハンネ・ファン・デル・ワウデは街で偶然知り合った老夫婦に6年間寄り添い、老いてなお創造的に生きる彼らの深い愛情を、奇妙な生活と美しい自然を通して写し出した。また沖縄出身の山城知佳子は、他者の記憶を自身を媒介として濾過することにより、神話的なスケールの物語を紡ぎ、生を受けた土地への愛を表現する。
私たちが「愛」と呼ぶ感情や概念はますます複雑でいびつになり、愛の過剰や欠如は果てしない憎悪や暴力を生んできた。不条理に満ちた現代の「愛」の本質を、写真家たちの視線はより原初的に、ストイックに、温かく、ユーモラスに炙り出そうとする。写真表現には時に、目に映る現実の背後にあるものを透視する力があるのだ。

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2017』

会期:開催中~5/14
京都市内16カ所
開催時間・休館日・料金はプログラムによる

●問い合わせ先:
info@kyotographie.jp
www.kyotographie.jp

*「フィガロジャポン」2017年6月号より抜粋

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