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非正規雇用かは関係ナシ!? “老後破産”に陥る人の共通点

  • 2014.12.17
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【女性からのご相談】

40代の主婦です。子どもはいません。私はスーパーのアルバイト、夫は通信関連の会社の契約社員で月収はふたり合わせて20万円台前半。夫には頼れる実家というものはなく私の方は近郊に実家がありますが兄夫婦とその子どもたちもおり、入り込む余地はありません。世帯収入の半分近くは家賃に消えます。

子どもがいないので何とかやってはいますが夫婦ともに非正規のため、いつ雇用契約を更新しないといわれても不思議はありません。年金の支給が始まるまでの間つないで行けるのかと考えると、夜中に飛び起きてしまいます。これは“神経症”というものでしょうか? 夫婦共通の趣味でもあるテディベアのコレクションをネットオークションで売って多少の副収入を得ていますが、不安は消えません。

●A. 今は非正規で当たり前。それだけで老後破産を心配することはありません。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

総務省によって公表された『平成24年就業構造基本調査結果』によれば、“雇用されている人”に占める“非正規の職員・従業員”の割合は38.2%で、働く人のおよそ4割に達していることがわかりました。今やわが国では“非正規で働く”ことは“当たり前”のことなのです。

公共放送が2014年9月に特集した『老人漂流社会“老後破産”の現実』という番組では、今わが国では200万人余りの高齢者が“破産”寸前の状況に追い込まれているという現実を紹介していました。

“老後破産”の具体的事例として紹介されているような人には(その衝撃性ゆえに取り上げられたということもあるとは思いますが)かつては正社員として働き十分な収入と持ち家があり、相応の貯蓄もしていたような人も少なくはなく、“非正規=老後破産”ということでは決してないのです。

下記の記述は都内でメンタルクリニックを開業しうつ病や神経症を中心とした精神疾患と雇用の不安の問題に向き合っている精神神経科の臨床医に伺った話しに基づいて、すすめさせていただきます。

●神経症は薬物療法で症状の改善はできますが、それが本質的な解決とはなりません

『ご相談者さまの場合は不安を主症状とする神経症で、不安神経症が疑われます。ただし、国際疾病分類などでは、「神経症」という用語はすでに正式な診断名としては使われなくなっているため、「全般性不安障害」と呼ぶのが正しく、心配ごとや悩みなどを原因として発症し、慢性的な不安や緊張といった精神症状と眠りの途中で目が覚める・息苦しさ・動悸などの身体症状がみられます。

抗不安薬などを用いた薬物療法である程度の症状の改善は期待できますが、それだけでは問題の本質的な解決にはなりません。非正規の雇用形態には、“会社の都合でいつ雇い止めになっても契約上文句が言えない”ことへの不安感が常に伴うため、その不安を軽減しないと根本的には治らないといえます』(50代女性/前出メンタルクリニック院長・精神神経科医師)

わが国のある著名な哲学者は、「非正規雇用が就業者全体に占める割合は今後も増々大きくなる」と述べており、その理由は、「企業の間接部門は開発・製造といった直接的に収益を生む部門のように自分の成果を数値化して示すことができないため“人に関わるコストをどれだけ削減したか”で成果を主張するようになるからだ」という趣旨の説明をしています。

では、今後もどんどん“非正規で当たり前”になっていく流れの中で、いたずらに“老後破産”の不安に陥らずにイキイキと暮らして行くには、どうしたらいいのでしょうか。

●老後破産の状態に陥る人に多く見られる共通点~非正規の人にはない問題点がある~

『各種メディアの“老後破産”に関する報道をみると、その憂き目に遭っている人の多くにはいくつかの共通点があるように思えます。それまでは経済的に比較的恵まれた状態にあったのに、病気・怪我・事故・倒産・解雇・離婚などの不慮の事態に遭遇したという点と、遭遇後もそれまでの生活様式や金銭感覚をなかなか変えられなかったという点です。

そういった点は、もともと、「今月はいくらいくらの範囲内で生活しなきゃ」といった自己管理ができている非正規で働く人たちにはない問題点といえます。逆にいえば、状況に応じてライフスタイルを変えることができる人は、老後破産にまでは至らないということです。

ほんの一例ですが、「アイビーリーグ・モデル」という米国の大学生のスタイルをわが国に紹介し1960年代から70年代にかけて一世を風靡したアパレル企業の創業者社長は、1978年に約500億円の負債を抱えて会社が倒産してからはそれまでの贅を尽くした生活様式をガラリと改め、「清貧」をモットーにフリーの紳士服プロデューサー兼エッセイストとなって、2005年に93歳で没するまで、「お金では買えないお洒落」を提唱しつづけました。

こういう人は、経済的に満たされた状態から一転不遇な状況に陥ったとしても、“老後破産”への道は進まないのです』(50代女性/前出メンタルクリニック院長・精神神経科医師)

●雇い止めに遭うおそれもあるが、次の職場が見つかる確率も高い

また、これだけ非正規が当たり前の社会になってくると、企業はもはや非正規の人なしではとても業務を回していくことはできません。ご近所のスーパーを思い起こしてみてください。レジを担当している人は全員“非正規”のパートさんやアルバイトさんです。そうでなくても最小限の人数しかいない正社員がレジに入りっぱなしになっていたら、今度は管理業務に手が回りません。

つまり、今の職場で雇い止めに遭っても次の職場が見つかる確率はとても高いのです。

特に労働集約型の業種である小売業や飲食業、食品加工業、運輸梱包業、観光業、介護福祉事業、その他サービス業全般においては、その気になって探しさえすれば何かしらの募集が常に存在する状況が今後も続くことは間違いありません。

●雇われずに収入を得る道は、用意しておくに越したことはない

非正規雇用という“雇われ方”に不安がつきまとうのは事実ですので、旦那さまと共通の趣味でもあるテディベアのご商売をより付加価値を高めた形にレベルアップして、“雇われずに稼ぐ道”を作っておくことをもよいかと考えます。

申請時に手数料は要りますが、所轄の警察署から“古物商”の許可をもらえば、アンティークとしての価値の高いテディベアも堂々と扱うことができます。テディベアは世界中に愛好家がいますから、日本製で希少価値の高いものをネットで紹介するなど、ご夫妻で楽しみながら深めていけば思わぬ好結果が期待できるかもしれません。

『ご相談者さまご夫妻はこれまでも、親族にも頼らず二人で肩を寄せ合って生きて来られたのですから、その事実に自信と誇りを持ちましょう。自信と誇りが持てたとき、気がついたらいつのまにか、夜中に不安で飛び起きることもなくなっているかと思います』(前出・精神神経科医師)

(ライタープロフィール)

鈴木かつよし(エッセイスト)/慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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