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片山正通がナビゲート。究極の買い物マニアによるプライベートコレクション展。

  • 2017.4.18
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現在東京オペラシティアートギャラリーで開催中の展覧会、「片山正通的百科全書」が話題だ。インテリアデザイナーとして世界中の名だたるプロジェクトを手がけてきたWonderwallの片山正通さんが、人生をかけて集めた多彩なプライベートコレクションがずらりと並ぶ様は、まさに圧巻。アート作品をはじめ様々なモノを買うことは、彼にどんなインスピレーションをもたらしてきたのだろうか。本人による展覧会のナビゲーションをとおして、“買い物”に対する熱い思いを語ってもらった。

“アートは人との出会いと同じで、二度と会えないかもしれない。だから決断はすごく早いですよ”

----現代アートに、骨董、ミッドセンチュリー家具、多肉植物そして本やCD。まさに「百科全書」ですね。ご自身の持ち物をここまで公開することはどんな気分ですか?

裸を見られている気分で恥ずかしいですよ!(笑)。でも、恥ずかしがってても仕方ないし、自分の好きなモノだけ見て下さい、っていう時代でもないと思います。僕は武蔵野美術大学で学生を教えていて実感するんですが、真っ裸になって自分をさらけ出さないと本当のコミュニケーションなんて取れないんですよね。そういう意味でも今回の展覧会ができたのはとても嬉しいです。

----アートを買うことには前から興味があったんですか?

ずっと昔から願望はありました。だけどそう簡単に手が届くものじゃないと思っていました。高そうだし、画廊は怖そうだし(笑)。それが、(TARO NASUギャラリーの)那須太郎さんと出会ってイメージが一変したんです。同郷で意気投合したのですが、那須さんは心底アートが好きな人。だからかえって厄介なんです(笑)。「売りつけてやろう」という魂胆が見えると僕も警戒するけれど、「これほんとにいいんですよ」とか言われると僕も真剣に理解したいと思って、もう最悪のパターン(笑)。

-----何かを買う時って、迷いますか?

基本的に迷ったものは買いません。だから決断は本当に早いですよ。ときどき作品が僕を呼んでいる気がするんです。「買ってよ」って(笑)。でも本当に冗談ではなく、僕が選んでいる感覚というよりも、お互い巡り会う運命だったんだと感じるときがあります。特にアートってすぐに決めないと手に入らなくなりますから。そういう反射神経というか、決断力は必要ですね。

-----アートを買ってよかったな、と思うことは?反対に後悔することはないんですか? スケールのある作品が多いので、単純に「置き場所どうするんだろう?」と思ってしまうんですが。

優れたアートは高度なコミュニケーション能力があると思います。僕のオフィスにいらしたお客さまがそれを見て、何かしら反応をしてくれる。そこから新たなコミュニケーションがうまれることも多いんです。作品を買って後悔したことはないです。それより買わなかったことで後悔をしたくない。だってもう次のチャンスはないかもしれないって思いますから。

気になる人に出会ったら、「今度食事にいこう」と誘います。だって自分から言わなかったら二度と会えないかもしれない。それと全く一緒で出会いを大切にしたい。だから作品を置く場所とかそういうのは全然気にしないです。後から考える(笑)。

----アートも人も、一期一会というスタンスなのですね。今回、作品を出品されているサカナクションの山口一郎さんとも、そういう出会いだったんでしょうか?

まさにそうですね。最初は、いちファンとして幕張メッセのライブに行きました。自分でチケットを取って、一番後ろの席で聴いてたのですが、内容はもちろん、音響が素晴らしくて感激したんです。それで、これはすごいミュージシャンがいると思って、僕が武蔵野美術大学で行っている特別講義“instigator”で授業をお願いしたくて会いに行ったのが最初ですね。一郎さんは本当にピュアで、音楽に対して真面目なんです。僕より15歳年下なんだけど、クリエイターとしてすごく尊敬してる人です。

“サイモン・フジワラはセンスがよくて、まさに天才です。ライアン・ガンダーは、僕がコンセプチュアルアート好きになるきっかけとなった作家であり友人です”

----人とのつながりが片山さんのパワーの源なのでしょうか。アートに話を戻すと、現代アートでは、ライアン・ガンダーサイモン・フジワラの作品数が突出してますね。

ふたりは大好きな作家で、個人的にも交流があります。サイモンはまだ30代と若いですが、天才としか言いようがありません。虚実ないまぜの物語を作品にして、社会の闇を浮かび上がらせるのですが、それがとても巧妙で面白いし、何よりセンスがいい。そしてライアン・ガンダーは僕がコンセプチュアルアートを好きになるきっかけを与えてくれた作家。彼をきっかけに本格的にアートにハマっていきました。またコンセプチュアルアートの第一人者として有名な河原温の作品と、そのオマージュ作品を制作した他の作家の作品は、実は全く意識しないで買っていたのですが、美術的に文脈が見える編集で一つの場所で展示することになりました。点と点が結びついて線になる感じというのかな。

----こうした現代アートのなかにひょっこり現れるホッキョクグマに驚きました。

このホッキョクグマの剥製は、仕事で家具を買いに行ったときに見つけたのです。ひと目で欲しくなって、その場で即決でした。今ではWonderwallのオフィスのシンボルになっています。そしてこれを見た人が、「片山さん、動物が好きなんだね。じゃああげるよ!」と言って、立ち上がった巨大ホッキョクグマの剥製をプレゼントしてくれました。クマがクマを引き寄せてくれたんです(笑)。

剥製も昔から好きで、第一号はヘラジカの頭部の壁掛け。日本国内ではなかなか見つからないのですが、ある時、歩いていたらふと出会ったんです。僕のアートコレクションは、人と動物をモチーフにした作品が多いのです。自然の造形になにか惹かれるものがあるのでしょうね。

-----剥製とならんで異色なのが骨董のコレクションですね。片山さんのお仕事からは骨董のコレクションというイメージがあまりありませんでした。

それはよく言われます(笑)。骨董っていうか、がらくたも沢山含まれるのですけれど。昔から大好きで、時間があるときはアンティークショップでひたすらぼーっと見てたりするんです。国内外のアンティークショップや蚤の市など色々なところで購入しました。どんな小さなものでも自分で買ったものは全部覚えてます。

あと骨董については、アートディレクターの渡邊かをるさんの影響も大きいと思いですね。かをるさんには本当にたくさんのことを教えてもらいました。余談ですが、かをるさんが亡くなられた後、彼がオーナーだった鎌倉のTHE BANKというバーを僕が引き継いだんです。僕はお酒が飲めないのですが、彼の遺志を継いで次の世代にもつないでいきたかったのです。

----ミッドセンチュリーの家具はいつごろから買い始めたんですか?

10年ほど前からですかね。最初はパリで購入しました。プルーヴェ初心者としてはスタンダードチェアが欲しいと思って行ったんです。でも4脚ぐらいないと絵にならないので、迷っていたところ目にとまったのがAntony Chair。これなら1脚でも格好いいので決めました。今ではシャルロット・ペリアン、ピエール・ジャンヌレなど展示している家具を持っています。Gallery SIGNから買うことが多いですね。

-----今欲しいものは何ですか。

今だったら建築作品ですね。前川國男さんの素晴らしい住宅があるんです。売りに出ていないんですけれどね。僕は宝くじが当たっても、何の迷いもなく1週間で使い切る自信があります(笑)。僕にとってモノの価値は金額では測ることができないものなのだと思うのです。片山正通
インテリアデザイナー、ワンダーウォール代表、武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科 教授。1966年岡山県生まれ。ピエール・エルメ・パリ 青山、ユナイテッドアローズ(六本木)、INTERSECT BY LEXUS(青山、ドバイ、予定:NY)、THE BANK(鎌倉)、PASS THE BATON(丸の内、表参道、京都祇園)、THOM BROWNE. NEW YORK AOYAMA、colette(パリ)など、国内外において、数多くのプロジェクトを手掛ける。4月6日には武蔵野美術大学で行う特別講義"instigator"をまとめた書籍『「未来」の「仕事」のつくりかた』が発売された。
http://www.wonder-wall.com
【展覧会情報】
片山正通的百科全書 Life is hard... Let's go shopping.

期間:2017年4月8日[土]─ 6月25日[日]
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
開館時間:11:00 ─ 19:00 (金・土は11:00 ─ 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日
入場料:一般 1,200円(1,000円)、大学・高校生 800円(600円)
tel:03-5777-8600(ハローダイヤル)

参照元:VOGUE JAPAN

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