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モードなバレンシアガ展とブルーメンフェルド展へ。

  • 2017.4.12

初夏のパリ、興味深い展覧会や写真展が多く開催されている。その中でモード・ファンが喜びそうな展覧会を2つ紹介しよう。

まず、ブールデル美術館内の3室を使って開催されている「Balenciaga, l’œuvre au noir(バレンシアガ、黒の作品)」展から。これは今季のテーマが「スペイン年」のガリエラ美術館による企画の第一弾。クチュール・メゾンを構えたのはパリだが、 クリストバル・バレンシアガ(1895〜1972)はスペインのバスク地方の小さな漁村ゲタリアの生まれである。会場は、バレンシアガの黒い作品とアントワーヌ・ブールデルの白い彫刻が対話する構成だ。

左:Balenciagaのアーカイヴからのリプロダクション2点。Balenciaga Archive Paris  © Pierre Antoine
右:1966年夏のコレクションより。裏地なしのシルククレープのソワレは、美しい背中の仕事を見忘れないよう。Balenciaga Archive Paris© Pierre Antoine

黒はクリストバルにとって、子ども時代にから見慣れている母国スペインの伝統的な色であり、余計な飾りを削ぎ落とした色であり、クリスチャン・ディオールが「彼の服は宗教である」と評したように、修道僧的インスピレーションの色である。ウール、レース、ビロード……光沢あり、あるいは光沢なし、透明、あるいは半透明というように彼が用いた黒はさまざま。シルエットは常にシンプルそのもので、バレル・ライン(1947年)、バルーン(1950年)、セミ・フィット(1951年)、チュニック(1955年)、サック・ドレス(1957年)などが、“クチュリエ中のクチュリエ”と呼ばれる巨匠の手から生まれた。

左:1950年のドレス「Eisa」。素材はシルクタフタ。Collection Palais Galliera - © Julien Vidal / Galliera /Roger Violet
右:1952~53年秋冬コレクションからウール・クレープのスーツ。小柄だったカーメル・スノウによると、この袖丈は女性の身長を数インチ高く見せる効果があったそうだ。Collection Palais Galliera - © Julien Vidal / Galliera /Roger Violet

左:1963年のドレス。素材はクリストバル・バレンシアガのために開発されたガザール。Collection Palais Galliera - © Julien Vidal / Galliera /Roger Violet
右:1965~66年のコレクションより。メカニック・レースのジャケットとドレス。リボンはシルク。Collection Palais Galliera - © Julien Vidal / Galliera /Roger Violet

左:右上は1956年夏のドレス。右下は1956年夏のコレクション。左上は1963年夏のコレクション。左下は1955年夏のコレクションより。
右:彫刻のアトリエでは帽子の展示も。左は1962年のガザール素材の帽子。photos:Mariko OMURA

展覧会は美術館の石膏のホールと呼ばれる巨大なスペースから始まる。テーマは「草案と構造」で、トワルとパトロンの展示だ。彫刻のアトリエが第二室で、ここから「シルエットとボリューム」がテーマとなる。その後テーマは「黒と光」「黒と色」と続く。展示されているのはガリエラ美術館およびバレンシアガのアーカイヴ所蔵の品々で、100点近く。第三室の廊下では、クリストバル・バレンシアガによるクロッキーとその完成作品の写真なども見ることができる。

地下スペースでの展示。©Pierre Antoine

黒いボックス内に保護され、カーテンを自分で開けて鑑賞するBalenciaga Archive所蔵のドレス数点。例えば4枚のパネルで構成された1967年冬のガザールのドレス(左)や、ガザールのケープとシルククレープのドレスのアンサンブルのソワレ(右)など。©Pierre Antoine

地下では黒いジュエリーの展示も。©Pierre Antoine

「Balenciaga, l’œuvre au noir」展
Musée Bourdelle
18, rue Antoine-Bourdelle
75015 Paris
tel:01 49 54 73 73
開)10:00~18:00
休)月曜
料金:10ユーロ

パリのセーヌ河沿いの建物レ・ドックで開催されているのは、アーウィン・ブルーメンフェルド(1897〜1969)の写真展だ。「あ、これ知ってる」「この写真、見たことがある!」……といった声が、会場のあちこちから聞こえてくる。彼の名前を覚えていなくても、Vogue、Harper’s Bazaar、Cosmopolitanといったアメリカのモード誌に掲載された彼の写真は、大勢の人々の記憶に残るものが多いせいだろうか。展覧会のタイトルは、「Studio Blumenfeld : New York 1941-1960, l’art en contrebande(密輸入のアート)」。

レ・ドッグの建物に入るや展示会場に至るまで、すでにビジュアルの楽しみが待っている。

右端の1951年のアメリカン・ヴォーグ誌のカバーに見覚えのある人も多いのは?

ドイツ生まれのアーウィン・ブルーメンフェルドは、パリを経由して、1941年にアメリカに活動の場を移した。ヨーロッパですでにアヴァンギャルドの洗礼を受けていた彼は、1940〜50年代には写真技術のさまざまな可能性に挑戦し、重ね焼き、ソラリゼーション、着色など実験的でシュールリアリスティックな写真を多数残している。彼特有の光と色の遊び、被写体の連続……どれもがグラフィック的で高いファッション性が強い印象を残すスタイリッシュな写真だ。この時代の彼の活躍の場は、名物編集長のカーメル・スノウによってADにアレクセイ・ブロドウィッチが起用されたHarper’s Bazaar。同時期にアヴェドンもこの雑誌の撮影をよく任されていたが、彼とは異なるスタイルの写真を撮るブルーメンフェルドもブロドウィッチが信頼するメインフォトグラファーの1名だったのだ。

テクニックを駆使する彼の写真は、モデルがスタジオで撮影された時点と、広告や雑誌となって世間の目に触れるものは大きな違いがあったそうだ。

左:1950年代のアメリカン・ヴォーグ誌は彼がカバー撮影したものが少なくない。
右:左端の写真は、アメリカン・ヴォーグ誌のために当時のトップモデルDovimaを撮影したときの1枚だ。

会場では初公開写真も含め200点の作品を展示。目をひくのは、ブルーメンフェルドのNY のスタジオと同じように彼自身が選んだ白黒写真のベスト100が飾られた屏風だ。インスピレーション源となった写真であり、その屏風は時に広告やモード撮影のセットにも使われていたとか。この100点を始め、会場で展示されているモード写真やビューティショットは、若いフォトグラファーたちにとってアイデアの宝庫ともいえるだろう。

左:1955年ごろに広告のために撮影されたカットの別バージョン。©The Estate of Erwin Blumenfeld
右:ダンサーのSaddler Wells。1952年撮影。  ©The Estate of Erwin Blumenfeld

モノクロ写真で構成された屏風 My best 100。展覧会の会場構成を担当したのはVasken Yéghiayan。

「Studio Blumenfeld : New York 1941-1960, l’art en contrebande」展
会期:~2017年6月4日まで
会場:Les Docks Cité de la Mode et du Design
34, quai d’Austerlitz
75013 Paris
開)11:00~19:00
休)火
入場料:5ユーロ

 

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