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正木裕美弁護士のOLかけこみ法律相談所/「●●ちゃんの顔、ウケるw」 友達のSNSで公開された“ブス顔”写真、 消してもらうには…?

  • 2017.4.8
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男女の恋愛トラブルや会社での嫌がらせ、友だちとの金銭トラブルなど、どうしたら良いのかわからず、ひとりで抱え込んでいませんか?
周りの人には相談しづらい悩みこそ、法律のプロに相談しましょう!

友達のSNSに勝手に掲載された“ブス顔”写真! 消してもらうには…?

【30代の女性からご相談】
今、写真加工アプリがすごく流行ってますよね。
お互いの顔を入れ替えたり、目が大きくかわいく写るようになっていたり、私はスマホに疎いのでよくわかりませんが、いろいろな加工ができるらしいです。先日、友達数人と飲んでいたときに、みんなスマホで写真を撮ったのですが、その写真を勝手に加工してSNSで公開されているのを知りました。しかも、すごく変な顔に加工されていて、はっきり言って“ブス”にされていました。

「●●ちゃんの顔、ウケるw」というコメントとともに投稿されていて、知り合いが見たら私だとわかると思います。こんなのってひどいと思うんですけど、訴えることはできますか?

人の写真を勝手にアップする行為は違法じゃないの?

特に女性は、写真に映った自分の顔が気に入らないだけでもとても気になるのに、変な加工をされた上に勝手に公開なんてイヤですよね。ブログ、Twitter、インスタ等で簡単に写真をアップできるようになり、トラブルもたくさん起きています。

そもそも、「他人の写真を勝手にアップするのは禁止!」とはっきり規定している法律はありません。

しかし、判例では、有名人・一般人を問わず、「肖像権」という「みだりに自己の容ぼう等を撮影され、これを公表されない人格的利益」、簡単にいうと、他人に勝手に写真を撮影されない権利や、撮影された自分の写真を勝手に公開されない権利があるとされています。この肖像権を違法に侵害したら、損害賠償義請求や差止請求が認められることがあります。

ただ、他人を無断で撮影したり、その写真を勝手に公表したからといって、必ず違法になるわけではありません。

肖像権侵害として違法かどうかは、裁判上、撮影された人の社会的地位、撮影された内容、撮影場所、撮影した人の撮影目的、撮影方法、撮影の必要性などを総合的に考慮して、撮影された人の人格的利益の侵害が社会生活上、受忍限度を超えているか、で判断されています。

そもそも(自分では自分だと分かったとしても)画像加工により個人特定できなければ肖像権侵害はないですし、公共の場で撮影された写真より私的なもののほうが違法性が高いとされやすいといえます。
今回は、一般人の写真で、知り合いが見たらわかる程度の加工しかされておらず、面白半分に加工して公表したものでしょうから、違法になる可能性が高そうです。

普通の顔とブス顔のアップでは罪の重さが違う?

普通の顔とブス顔では、後者のほうが心理的なダメージは大きくなりますよね。先ほど述べたとおり、法律的にも、写真の内容は違法性を判断する1つの要素とされています。

わざとブスに加工した悪意のある写真は、侮辱的だと言っても過言ではなく、普通の写真より違法と判断されやすく、公表による損害も大きいと判断されやすくなるでしょう。

少し事情は違いますが、おもしろ半分に、顔に障害のある方の写真を無断で撮影、SNSに「笑いとまんない 死ぬ」と投稿した女子高生が侮辱罪で書類送検された事件もあります。具体的な事実を示して、被写体の社会的評価をおとしめるようなことを書き込めば、さらに重い名誉毀損罪になる可能性もありますし、おもしろ半分に他人をおとしめる行為をしては絶対ダメですね。

消してもらうことはできる?

みなさんが一番希望されるのは、「賠償金よりも、アップした写真をすぐに消して!」ということ。

まずは、アップした友人に対してすぐに削除してほしいと伝えましょう。友人が応じてくれない場合でも、SNSの管理者に対し、肖像権侵害ということで削除要請もできます(SNSによっては、申出用のフォームや対応方針があることもありますので、確認してみましょう)。

しかし、友人や管理者がすぐに対応してくれるとは限らず、最終的には、裁判で写真の公表の差止請求を行い、写真の削除を求めていくことになりますが、困ったときは弁護士への相談をオススメします。

SNSやネットの普及で便利になった反面、軽い気持ちで悪気なく行った肖像権侵害やプライバシー侵害も増えています。ネットに公表された情報は、一瞬で世界中に発信・拡散する性質があるので、全てを削除するのが事実上不可能だったり、場合によっては誰かの一生を左右してしまう危険もゼロではありません。

撮影・公表は相手の承諾を得る、一切特定ができないように画像を加工する、誹謗中傷・不快な表現をしないなど、法令、マナーや他者への思いやりも忘れず、トラブルゼロでネットライフを楽しんでくださいね。

【まとめ】
●人の写真を勝手にアップする行為は違法?
無断で写真を撮影されない権利や、撮影された写真を勝手に公開されない権利として「肖像権」があります。ただ、他人を無断で撮影したり、その写真を公表したからといって、必ずしも違法ではなく、撮影された人の人格的利益の侵害が社会生活上、受忍限度を超えているかで判断されます

●普通の顔とブス顔のアップでは、罪の重さが違う?
写真の内容は違法性を判断する1つの要素。悪意のある加工がなされた写真は、普通の写真よりも違法と判断されやすく、公表による損害も大きいと判断されやすくなるでしょう

●消してもらうことはできる?
まずは、アップした人に対してすぐに削除してほしいと伝えましょう。応じてくれない場合は、SNSの管理者に対し、肖像権侵害で削除要請もできます。それでも対応してもらえない場合は、最終的には、裁判で写真の公表の差止請求を行い、写真の削除を求めていくケースもあります

◇アディーレ法律事務所 正木 裕美(まさき ひろみ)弁護士

愛知県出身 愛知県弁護士会所属
男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、ネット犯罪などの刑事事件、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。身内の医療過誤から弁護士の道へと進む。2012年には衆議院選挙に愛知7区より日本未来の党の公認候補として出馬し、「衆院選候補者ナンバーワン美女」とインターネットや夕刊紙で大きな話題を呼んだ。

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