【新連載！　はあちゅうのお仕事名言博物館】人間関係が気になって、意見できなくなったときに効いた名言とは？

会社員＆フリーランスとして働いてきた作家が、自身の経験した〝仕事にまつわる名言〞を紹介します。

真剣に仕事をしていると、どうしても、相手と意見が食い違うことが出てきますよね。けれど、社会人になりたての頃は、仕事中にわいた違和感を相手に伝えるのがとても苦手でした。仕事なのだし、割り切って伝えればいいのだとわかっていても、相手はそうとらえないかもしれない……などと不安が先立ち、意見を引っこめることもしばしば。当時は、嫌われることが何よりも怖かったんです。一緒に仕事をする相手に嫌われると、仕事にだって支障をきたすとも思っていました。

社会人経験を積むごとに、言いづらいことをうまく丸めて伝える方法を学びましたが、やはり、肝心な場面で意見を強く伝えられないことは何度もありました。それに加えて、後輩を指導する立場になると、注意のしかたにも悩むように。怖い先輩だと思われるのが怖かったんです。ネットではいくらだって威勢のいいことを書けたけれど、だからこそ、身近な仕事相手や後輩に嫌われることが怖い……そんな悩みを、知りあいの女性社長に打ち明けたところ、「仲よくなるために、仕事してるんじゃないよ」と言われました。このひと言を、今月の〝お仕事名言〞に認定させていただきます。

「仕事仲間」との間では、仕事を進めるのが最優先

社長は続けて「会社が、みんなが仲よく、楽しくするために来るサークルみたいな場所なら、お金を払ってほしい。そうじゃなくて、会社は仕事を進める場所だから。だから、会社はあなたにお給料を払ってるの」と言いました。そこでやっと目が覚めたのです。仕事をするために仲よくしてるのに、仲よくするために仕事をしてどうするんだろう、と。

それ以来、言いづらいことを言う時も「これは仕事！」と堂々と意見するように。衝突を恐れずに話すことは、いい変化を仕事にもたらしてくれました。たとえば、時間にルーズだった後輩にも、きっぱりと時間厳守を伝えることによって、会議を時間どおり始められるようになりました。以来、いい意味での緊張感が芽ばえ、所属部署全体のプロ意識が向上したと思います。フリーランスになった今も、大事なことは、たとえ自分の見え方が厳しい人になったとしても、しっかりと伝えるようにしています。それを続けるうちに、なれあわなくても、お互いへの信頼と尊敬があれば気持ちよく仕事ができるのだと学びました。よく思われるより、いい仕事をすることを優先させる。これは、今の私にとって仕事上の憲法とも呼べる鉄則になっています。
●はあちゅう
作家・コラムニスト。慶應義塾大学卒業後、「電通」、「トレンダーズ」の会社員生活を経てフリーに。公式ツイッター&インスタグラム■@ha_chu
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