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【うるおい女子の映画鑑賞】開けてしまったら致命的。”昔好きだった人”というパンドラの箱

  • 2017.3.26
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「女性」の視点で映画をみることは、たとえ生物学的に女性じゃなくても日常では出会わない感情が起動して、肌ツヤも心の健康状態もよくなるというもの! そんな視点からオススメ映画を紹介する【うるおい女子の映画鑑賞】。第36回は『ビフォア・サンセット』(米・2004年)を紹介します。

この作品は1995年に公開されたラブストーリーの傑作『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』の9年後を描いた続編で、同監督に加え、主演のイーサン・ホークとジュリー・デルピーも続投しただけでなく、脚本にも参加した意欲作です。正直、続編の製作が発表された当時、1作目のファンとしては神聖な名作を続編で汚されるのではと心配でしたが、3人ともよほど頭とセンスがいいのでしょう。「これがまた傑作でビックリ!」という一本です。

”点”でのみ触れ合う男女関係の美しさ

9年前、ウィーンの街で日の出までの数時間を過ごしたセリーヌとのことを小説に書いたジェシー。本のプロモーションの一環でパリの書店で記者たちに囲まれていると、そこへ9年ぶりにセリーヌが姿をみせ、ふたりは再会を果たします。ジェシーの飛行機が発つ日没までのわずかな時間、ふたりは9年前のように、今度は新緑溢れるパリの街を歩きながら、これまでのこと、あのときのことを語らい合います。

前作同様、全編ほぼふたりの会話劇でのみ構成される相変わらずの潔さにも関わらず、目まぐるしく変わるパリの美しい風景は生命力と愛に溢れ、大人になったふたりの言葉の選択や、目線、沈黙、作り出す空気からはそれぞれが過ごした9年が読み取れて、1秒たりとも目が離せないほど色鮮やかな作品です。
やっぱり女々しい(けど愛おしい)男に成長しているジェシーと、やっぱりちょっと面倒でだいぶ気の強い(だから愛おしい)女に成長しているセリーヌ。そしてふたりはやはり、賢い大人に成長しています。その賢さはお互いに、お互いのことを、「点」で接することで永遠に輝いていられる存在であることを充分に承知していることから伺えます。

賢い”せつなさ”の味わい方

結婚をして、物理的に多くの時間を過ごし生涯をともにすることだけが愛じゃない。一瞬にしか宿らない愛だからこそ永遠になる。そんな、言葉にすると何とも陳腐な男女の関係を、このふたりは必要以上に感傷的になることなく、しかし、ポエティックに、洗練された会話、体、目線、それらに宿る年月で画面に映していることが見事です。
運命のいたずらで再会できなかったことは切ないけれど、「じゃあ会えてたら上手くいってたのか?」というとそうではないことも薄々気づいているんだろうし、夫婦関係の不満を話すジェシーをセリーヌは本気で略奪したいとは思わないんだろうし。ただふたりは、キラキラした無限大の恋のツボミを壊さないように大切に大切に保管して、たまに寂しいときにそのツボミをそっと取り出してワインでも飲んで、また明日からがんばる活力にしていく。ただそれだけの関係なのです。

その箱開けるべからず

ふたりは結局付き合うことはなかったけれど、お互いにとっての青春の象徴。もう二度と戻らない青春が真空パックされていて、それが互いの瞳の中にあるという美しさと虚無感を同時に理解している賢いふたり。

素晴らしいこの映画の賢いふたりから学ぶことは、このツボミすなわち、”昔好きだった人”パンドラの箱は決して開けてはならないということ。すぐに魔法はとけて無くなるどころか、30歳を超えた女子は致命的な打撃を受けること間違いなし。美しい映画も、タラレバを考えるとホラーになるから不思議ですね。

text:kanacasper(カナキャスパ)