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Movie Column 14   肩の力を抜いて、今日はこもってムービーナイト

  • 2017.3.9

学校や仕事、子育て、毎日はそれぞれに忙しい。さらに習い事にジム、ステップアップのための勉強など隙間時間も惜しみなく、ほんとに世の中みんなよく頑張っている。でもちょっとだけダラダラしてはダメですか? 意識の高い生活も絶え間なく続いていたら、その張り詰めた糸はいつかパチンと切れてしまう。今夜はその手を少し休ませ、部屋の灯りを少し落としておうちシアターへ。

なーんにも考えたくない夜、ゆるりとした時間にはメッセージ性の高い映画はご勘弁。インディーズ映画のカリスマ、ジム・ジャームッシュ監督の『コーヒー&シガレッツ』は11話からなるオムニバス作品で、そこにあるのはコーヒーとシガレットと、たわいない会話だけ。とはいえ、ジャームッシュが切り取る日常なら、そこに意味など存在しなくてもセンスにあふれ、全編モノクロの映像は、カラーフィルムに慣れた私たちには美術館のアート作品のように新鮮だ。

11話の舞台は、どこかのダイナーやカフェ、ホテルのサロン。大半は今時珍しいくらいに廃れた場所で、おしゃれとは程遠い。けれど使い古されたテーブルや椅子、そのテーブルの上に置かれたサードウェーブでも何でもない、ただのコーヒーが驚くほど魅惑的なのだ。

中でもマイベストを言わせてもらうなら、イギー・ポップとトム・ウェイツが出演した「カリフォルニアのどこかで」。それぞれ本人役として登場する二人が、カリフォルニアのあるダイナーで待ち合わせするのだが、まったく話がかみ合わない。微妙な空気を穴埋めをするようにコーヒーを飲み、「コーヒーと煙草の組み合わせって最高だよな」とつぶやく。二人は結局意気投合するわけでもなく、ストーリーはおしまいに。

どの話にも感動的な結末はないし、哲学的な意味も隠されていない。そこにはコーヒーのようなほろ苦さがふわりと漂い、味わうようにただ受け止めて楽しんだらいい。

『コーヒー&シガレッツ』

価格 DVD:¥1,800+税/Blu-ray:¥2,500+税

発売元:アスミック・エース

販売元:KADOKAWA

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text:Momoko Yokomizo

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