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OLかけこみ法律相談所/そもそも、会社での「バレンタイン禁止」ってアリなの?

  • 2017.2.8
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男女の恋愛トラブルや会社での嫌がらせ、友だちとの金銭トラブルなど、どうしたら良いのかわからず、ひとりで抱え込んでいませんか? 周りの人には相談しづらい悩みこそ、法律のプロに相談。経験豊富なアディーレ法律事務所の弁護士がアドバイス!

突然、 「バレンタイン禁止」の通達が…会社の命令を無視して渡したらどうなるの?

【30代の女性からご相談】
勤め先で、突然「今年から、バレンタインは禁止とします」という通達がありました。
私は、お菓子作りが趣味なのもあり、入社以来、毎年同僚や上司に手作りのお菓子を手渡してきました。別に下心はなく、日ごろの感謝を込めて、という気持ちでした。今まで特にトラブルになったりしたこともないし、せっかくのイベントなので今年もお菓子を作りたいと思っています。

そもそも、材料費も自腹ですし、プライベートの時間を使って作るのに、会社がそれを禁止することなんてできるんですか?
もし、通達を無視してバレンタインにチョコを渡したりしたら、処分されてしまっても文句は言えないのでしょうか。

会社での「バレンタイン禁止」ってあり?

そもそも、会社の言う「ルール」には、なぜ従わなければならないのかが問題となります。
その理由は、その会社に就職する際に、我々は「労働契約」を結びます。
この契約の中で、使用者の指揮命令権、つまり会社に従業員がどのように仕事をするかを決めて、命令する権利があることが含まれているからです。皆さんも、上司から「○○という形で××しなさい」というように指示を受けて、その通りに仕事をすることがあると思いますが、これが指揮命令権の行使、業務命令に当たります。ただ、この業務命令と言っても、なんでも命令できるわけではなく、法律違反であったり、不合理であったりする場合には、逆らったとしても、懲戒処分(戒告・減給・解雇etc)の適法な根拠とはなりません。

問題は、上司や、人事部などから、働き方のルールとしてバレンタインのチョコ禁止と言われた際、それが合理的なルールと言えるかどうかということになります。

バレンタインのチョコを贈る人は女性に限定されるため、実情としては、上司や同僚に対して、チョコを贈るということが多くなると思います。この際、不平等にならないように気をつかって贈らなければならなかったり、女子みんなで贈らないと決めたのに抜け駆けして贈る子がいたり、義理チョコをもらった方が勘違いしてめんどうな感じになったりなどのトラブルを防止するため、ひとつの選択肢として、社内でのバレンタインチョコの禁止というルールも合理性があると言えますので、このようなルールを定めることも法的に問題はないでしょう。

バレンタイン禁止を無視し、強行したら処分される?

会社が従業員に、何らかの処分(懲戒処分と言います)を下すためには、その処分の内容と、ルール違反の程度やり方等について、釣り合いが取れている必要があります。

たまたま、1回、バレンタインチョコ禁止のルールを無視して渡してしまった等の事情だけで、仮に解雇・減給ということになった場合、渡し方等にもよりますが、やり過ぎとなって裁判などで争った場合には無効になる可能性が高いと言えます。現実には口頭注意等にとどまる可能性が高いでしょう。

ただ、複数回の注意を無視して、あからさまにチョコを配る、厳重注意をされても違反を繰り返す等の態様の場合には、より厳しい処分が下る可能性はあります。

チョコ強要はどうなる?

厚生労働省の指針によると、パワハラとは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」のことを言うとされています。上司や先輩、多数の男性社員等が手作りチョコ等を強要する行為は、業務上の必要性に欠ける行為になりえますので、パワハラにあたる可能性があります。

バレンタインはせっかくの季節ごとのイベントですから、うまくバランスを考えて、不快になる人が出ない形で、会社内の人間関係を円滑にできることが何よりかと思います。

【まとめ】
●会社による「バレンタインの禁止」は適法会社と従業員は「労働契約」を結んでおり、その契約には使用者(会社)の指揮命令権が含まれています。そのため、法律違反であったり、不合理な命令でない限りは、命令に従う必要があり、バレンタインの禁止については、社内でのトラブルを防止するためのひとつの選択肢として合理性があるため、法的には問題ありません

●バレンタインを強行したら、処分される?会社が懲戒処分を下すには、処分の内容とルール違反の程度等が釣り合っている必要があります。仮に1回程度、ルールを無視して渡してしまった場合は、現実には口頭注意等にとどまる可能性が高いですが、厳重注意されても違反を繰り返した場合等は、より厳しい処分が下る可能性があります

●チョコを強要されたら?上司や先輩、多数の男性社員等が手作りチョコ等を強要する行為は、業務上の必要性に欠ける行為になりえるため、パワハラにあたる可能性があります

アディーレ法律事務所 岩沙 好幸(いわさ よしゆき)弁護士

弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。
弁護士法人アディーレ法律事務所。
パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。
動物好きでフクロウを飼育中。
近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。

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