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特技がなくても大丈夫? 平凡な息子の将来を案じるママへのアドバイス

  • 2017.1.24
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こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

都内でメンタルクリニックを開院し、個人的には筆者と共通の趣味を介した友人でもある精神科医のA先生(50代・女性)はここ数年、主に男の子を持つママからある相談を受けることが多くなったと言います。

その相談とは、「息子は勉強もスポーツも音楽や美術といった芸術面でもこれといった得意分野がなく、将来そこそこの収入を得られる職に就けるのかどうかがものすごく不安」といった内容のものだそうです。

なぜ女の子ではなく男の子のママなのか。その相談に答えはあるのか。一緒に考えてみましょう。

●男の子に対して「逆ジェンダー差別」があるわが国の社会

この手の相談事が男の子を持つママから集中的に寄せられることについてA先生は、わが国には女の子に対してというよりも、むしろ男の子に対して「逆ジェンダー差別」ともいうべきものが根強く存在していることが一つの原因としてあると言います。

『たとえば女の子であれば別にこれといってものすごく勉強やスポーツができなくても、子どもが好きだから保育士になりたいとか、食育を通して世の中に貢献したいから栄養士を目指すといった夢が持てる面があります。

ところがそういった職業の世界はなぜかわが国では男の子に対して排他的なところがある。女性の社会進出を進めるうえでも男性の保育士がもっともっと増える必要があるにもかかわらず、男性がその道を選ぶことに躊躇をしてしまうような雰囲気があるのです。

まさにこれは男性の社会進出を阻害する「逆ジェンダー差別」のようなもので、こういった例はよく見ると日本社会の随所に見ることができます』(50代女性/都内メンタルクリニック院長・精神科医)

●普通の男の子が持てる夢が少ないという現実

A先生が指摘する「逆ジェンダー差別」のようなものが男の子に対して存在するうえに、これといって勉強もスポーツも音楽も美術も得意でない男の子が持てるような夢が、今の世の中には少ないという現実もあります。

昔だったらそんな男の子は最低限の勉強だけはしたうえで技術力を持った町工場に就職して職人になるという道がありました。

ところが今は経済のグローバル化にともなってそういった町工場は国内では少なくなってしまいました。

また、勉強は好きではないので料理人を目指すといったケースも以前は多くありましたが、今は料理人修行ができるような経営基盤がしっかりしたお店はどちらかというと富裕層をお得意さんとして成り立っている場合が多いです。

そのため、広く一般庶民のために料理を作りたいという夢を持った子にとっては、「ちょっと違うんだよな」という感じがあるかもしれません。

●中の上程度に勉強ができる子が担当してきた分野の方が人工知能に取って代わられる?

ゲームクリエイターになりたいと思っても小さなころからソフト・プログラミングの習い事をさせてもらえなければ基礎を身につけることができないし、通知表がオール3の普通の男の子は何を目指したらいいのか。

ママたちの悩みはわかるような気がするのです。でも、悲観的にばかりなっていることはありません。A先生は次のように言っています。

『これからの数十年間で人間が実際に人工知能に仕事を奪われてしまう職業分野というのは、そのほとんどが「中の上程度に勉強ができる子が担当してきた分野」です。

具体的に言うなら、銀行の審査・融資担当者や税理士、警察官や自衛官といったフィジカル系以外の公務員、法律事務所の事務員などといった仕事で、人間から切り替えてもさほどのコストがかからず仕事の内容に関してはむしろ正確性が増す分野だと言えます。

これに対して、例えば理容師や美容師、ダンサー、ゲームクリエイターでもソフト・プログラミングではなくストーリー創作の担当者といった感性がものをいう分野は人間の仕事として残ります。

これといって勉強もスポーツも音楽もできなくても、普通の男の子たちが活躍できる分野は無限にあると言ってもいいでしょう』(50代女性/都内メンタルクリニック院長・精神科医)

●多くのママが自分の息子の将来が心配だからこそ塾に通わせ無難な道を歩かせたがる

いかがでしょうか。

考えてみれば、世の多くのママが男の子を塾に通わせ、そこそこ有名な大学を卒業させ、規模の大きな会社に就職させたがるのも、みなさん自分の息子が勉強でもスポーツでも芸術分野でもそれほど秀でているわけではないからと心配しているがゆえなわけです。

かつて、忌野清志郎さん(故人)というロックスターは、『これといって才能のないやつは大学に行ったらいいさ』という名言を残しましたが、まったくその通りなのです。

他人より物凄く秀でたものを持っている子は放っておいてもその道のプロフェッショナルになって行きますので、あえて大学になど行く必要はないのです。

けれども、わが子のことが心配で精神科の医師に相談するママたちの“子を思う気持ち”は、それはそれでとても尊いものなのではないでしょうか。少なくとも筆者はそう思います。

大丈夫。これといって特長がないように見えて、息子さんはいずれちゃんと自立して行きますよ。今も息子さんが夢中になって遊んでいる“あれ”を、生涯の仕事として。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)
●モデル/REIKO(SORAくん、UTAくん)

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