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誰かの甘い恋が別の誰かには苦いものになることがある。:よろず女子百景(9)

  • 2017.1.11
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恋は時に残酷なもの。じぶんの本当の気持ちを見落としてしまうと、手遅れになったり、誰かを傷つけてしまうことも・・・・・・。

■誰かの甘い恋が別の誰かには苦いものになることがある。

あのとき、彼があんな顔で見つめ返してこなければ、この恋の結末は違うものになっていただろうか?
女友だちに「誰かいい人紹介して!」と言われて、仲の良い男友だちを紹介した。ちょっとがさつだけど良く言えばワイルド、大らかでいつも笑ってて人懐っこい性格の男の子だった。
3人でご飯を食べて、彼女は彼に好感触。良かった良かった、と後は二人に任せて、「この前彼と一緒にフットサルしに行ったの!」なんて報告を「イイじゃん。彼も気があるのかもね!」なんて一緒に盛り上がったりしていたのだけれど、何か突っ掛かるものを感じていて・・・・・・。
後日、再び3人で、今度は彼女の家に集まった。アロマキャンドルを焚いて、間接照明のムーディーな雰囲気づくりが施された部屋で、張り切って手料理を振る舞う彼女のいじらしさを横目に、私は正直、気が気じゃなかった。何か苦々しいものを感じていた。
このまま二人は付き合ってしまうのだろうか・・・・・・?
彼女がキッチンへ立った隙に、私と彼は二人きりになった。そっと彼の顔を見た。ワインを飲んで、お酒に弱い彼はなんだかもうトロンとしている。そんなほんのり赤く染まった顔で、彼は私を見つめ返してきた。何も言わないけど、キャンドルの炎が揺れるたびに光る彼のうるんだ瞳に、私は何かを感じてしまった。
ずっと前から彼のことを好きだったのかもしれない。そしてもしかしたら、彼も私のこと・・・・・・?
翌週、私は彼と温泉街行きの列車に乗っていた。浮ついた甘い気持ちとは裏腹に、女友だちに心底悪いなと心の中で懺悔しつつ。
あのとき、彼があんな顔で見つめ返してこなければ。いや、もっと前に、彼を女友だちに紹介なんてする前に、ちゃんとじぶんの気持ちに気づいていれば、よかった。(大島智衣/脚本家、エッセイ・コラムニスト)
(ハウコレ編集部)

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