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SMAPのような革新的グループはジャニーズではもう生まれない!? イノベーションとブランディングについて考えてみた

  • 2016.10.13
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SMAP解散騒動を例に「雇用問題」や「組織における人間関係」の視点にたって考察するシリーズもいよいよラスト。Part3は、企業内イノベーションと企業のブランディングについて考えます。

“亜流”が生んだ『イノベーション』作品

植田:私、元マネージャーの飯島さんの仕事のネゴシエーション力がすごいなと思っているのは、SMAPを外部のクリエイターたちに預けていったことからなんです。電通から独立したばかりのCMプランナーの多田琢さんと、博報堂から独立したばかりのクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんの二人に、「二人とももう独立したんだから一緒に仕事できるよね」と、SMAPのアルバムやライブのプロモーションを預けたんですね。その先見の明、判断はすごいなと。それができたのは、SMAPがジャニーズ事務所の中で亜流だったからなんですよね、たぶん。

ぐっどうぃる博士:ああ〜、なるほど。

植田:主流だったら、どこまでいっても“ジャニーズのコンサート”だったと思うんです。バックダンサーとして後輩がたくさん出てきて、ジャニーズのファンだけが盛り上がる。ところが亜流だったために、いろいろ協力してもらえない状況だった。ならば、と外部の有能なプロデューサーに任せて、バックもプロのダンサーにして、多くの老若男女の鑑賞に耐えるコンサートにしていったんですよね。泣く泣くそうしていったのかもしれないけれど、結果論としてはそれが良かった。“亜流だった”というのは、飯島さんがSMAPをここまでにした一つの要因ではあったと思います。

ぐっどうぃる博士:となると、そういったことは今後、出てこないかもしれない?

植田:そういうことですよね。だからその意味でも、飯島さんのような人を失うのは、ジャニーズ的にはすごい損失だと思うんですよ。

ぐっどうぃる博士:外部のクリエイターに任せて大人のコンサートを作ったことには、それなりに人材やお金がかかったりしていないんでしょうか?

大企業には、新たな改革は起こりにくい

ぐっどうぃる博士:というのも、先ほどの経営者が与えるモチベーションの話(Part2「会社、上司、部下の心が自分から離れていかないためのコツとは?」)ともつながるのですが、SMAPを投資の問題として考えた場合、クレイトン・クリステンセンというハーバード・ビジネス・スクールの名物教授が著書『イノベーションのジレンマ』で、興味深いことを言っているんです。

それは、まあ大雑把に言えば「大企業には破壊的イノベーション、つまり、これまでの商品と違う価値を持つ革命的な商品は生まれない」ということなんです。

今うまくいっている商品があると、それ以外のことを始めるのが難しくなる。なぜなら、最初のうちは、現行の商品より質が低くて投資しようと思えなかったり、現行の商品を改善していくことが安全だと考えたり、現行の商品に使っている資産が、新しい商品に投資するとき無駄になると考えたりするからなんです。

そういう意味で言うと、SMAPというのはイノベーションが起きているわけです。正確には「破壊的イノベーション」と呼ばれる、全く新しい商品が生まれているんです。「亜流だから」とおっしゃいましたが、その亜流を経営者が認めていたということですよね。

植田:そうですね。たぶんジャニーさんが認めていたんだと思う。おそらくメリーさんも、最初は認めていたんじゃないでしょうか。最初からメリーさんに「それはダメ」と言われていたら、やれなかったはずですから。

ぐっどうぃる博士:だから、当時の経営者は素晴らしかったと言えるかもしれません。そして、そのイノベーションが今後起きないとすれば、深刻な事態です。時代の移り変わりに乗り遅れてしまう。結局、資産を持たない小さい会社しか成長できず、大きい会社は今の資産を守るのみで、ゆくゆくはつぶれてしまうことになる。

植田:なるほど。やっぱり企業って、二つの派閥があったほうがいいぐらいなんですね。一つの中にまとまっちゃうと、対立構図が何もない状態で、そこだけで皆、完結していっちゃう。そうなると、そのイノベーションジレンマが起こると。

ぐっどうぃる博士:あとは、寛容さが欲しいですね。企業内企業を認めるような。でもこれはなかなか難しいことで、クリステンセンも「まあ無理だろう」って言ってますけど。ジャニーズ事務所が、今、そうしたことをできる風潮がないとすれば、SMAPは奇跡のようなグループだったと言えるんじゃないでしょうか。

植田:確かに、そういうことですよね。

SMAPを守ろうと動き出したファンたち

植田:今回のSMAP解散騒動による大きな問題点は、事務所のイメージがガタ落ちの状況になりつつある…ということだと思うんですね。ファンが、ツイッターやSNSを使って、皆で証拠を寄せ集めて、時系列で事務所発信情報の辻褄の合わないところを突いて、欺瞞を暴こうとしているんです。「SMAPを救うために、事務所の悪を暴く」という状態になってしまっている。でも、事務所そのものがダメになってジャニーズのエンターテインメント全体のイメージが悪くなるのは、文化の損失だと思うんですよね。だから事務所のイメージを回復することも考えるべきかと・・・。

ぐっどうぃる博士:15年くらい前から“ブランディング”という言葉が注目され始めました。ブランディングというのは商品に一定のイメージを持たせることと言って良いと思います。そしてブランディングに成功したブランドには良いイメージがあり、消費者は似た機能を持つ他の商品と分けて考えます。たとえば、ルイヴィトンにしろ、スターバックスにしろ、アップルにしろ、それらの企業が出す商品は、他の似た商品と違うイメージを持ち、そのイメージがあるがゆえに、他と比べずに、その商品を選ぶことになる。

世界中に、似た機能を持つ商品やサービスが溢れ、企業は過当競争から逃げ出したいと思っています。その救世主となるのがブランディング戦略というわけです。

それと同時に、このころからインターネットが発達し、消費者の意見が徐々に消費者どうしに伝わるようになってきた。消費者は商品だけでなく、その商品を作り出している企業にも目を向け、きちんとした企業なのか、それとも消費者や従業員を虐げるひどい企業なのか常に目を光らせるようになりました。

そのようなブランディングの流れから考えるならば、企業はPart1で話した4つの軸の一つ目である世間、消費者すべてに対して、「我々は社会的に役立とうとしています」という理念を提示していかないといけない (Part1「SMAP解散は誰の責任?? 組織で生き抜く方法とは?」)ジャニーズ事務所の場合も、理念を提示し、その理念に照らし合わせてSMAPを解散させるかどうかを選択するのが正しかったと思います。

ただ、“沈黙する”というやり方も、ブランディングの一つではあるんですね。ヘタなことを言ってしまうと、皆に嘘を見抜かれてしまってボロボロになってしまいますから。それをしないのはちょっと賢いかな。でも一番いいのは、大義名分みたいなものを掲げることですよね。

植田:「多くの人に夢を与えます」みたいな?

ジャニーズ事務所にはブランディングが必要!?

ぐっどうぃる博士:そうです。今回の例でいえば、ジャニーズ事務所側が「SMAPを解散させることになったのは、多くの人に夢を与えられなかった我々の失敗です。本当に申し訳なく思います」と言えれば、イメージを回復しやすくなる。ブランディングの基本から考えれば、それを早め早めに打ち出すべきでした。

植田:今回、ジャニーズ事務所はヘタなことを言わないでいるのは良いのかもしれないけど、解散を全部、メンバーの確執のせいにしようとしているのはマズいんじゃないかと。

ぐっどうぃる博士:でもまあ、それも、すべて我々の推測なんですよね(笑)。その憶測のなかに我々みんなをとどめているのは、ちょっと賢いと思います。正確な情報は誰も知らない。

植田:ああ、なるほどね〜。だから何も言わないってことか!

ぐっどうぃる博士:ただね。何も言わない、ってことは少し前ならどこにでもあったけれど、今はインターネットの時代ですから。どんな情報でもすぐに入ってきちゃう。それなのに何も言わないのは風潮として、おかしい。だから時代遅れになりつつある、ということは言えるかもしれないです。

植田:そうですね。今、SMAPファンは、事務所に対して「何か言え」と怒っているわけですよ。もとはと言えば、事務所の経営陣の対立が発端なわけだから、事務所がちゃんと出てきて、説明するべきだと。ところがいっさい出て来ないで、すべてメンバーに押し付けられていることがファンの怒りなわけです。それを鎮めるため、事務所がブランドイメージを上げるためにはどうすればいいでしょうね。

ぐっどうぃる博士:今回の騒動は、今から言ったところで手遅れという気がしますけどね(笑)。

ジャニーズがすべきことは、今後、徐々に信頼を回復していく作業をすることでしょう。まずは企業理念を定めることを勧めます。たとえば「女性に夢と感動と安らぎを与える」とか「女性に夢と安らぎを与えることで社会に貢献する」など。そして、定めた企業理念にそって、一貫して活動し続けることですかね。例えば、番組の企画でも、グッズでも、あるいは、企業理念と関係しそうなNPOにお金を出すでも、似た企業理念を持つスポンサーとコラボ商品を出すことでも。あらゆることでそのメッセージを感じさせる活動をするわけです。すると徐々に消費者に、そのイメージがついていき、支持されるようになっていくでしょう。

植田:たぶん、今のジャニーズ事務所には、そういうブランディング・コンサルタントが最も必要なんでしょうね。

ぐっどうぃる博士:そう思います。

植田:タレントと芸能事務所で考えると特殊な面もありますが、例えば、多くの顧客に愛されている商品を突然なくすことにして、それを商品や開発者の欠陥のせいにして企業として何も説明しないっていうのは、リスクマネジメントの意味でも最悪の選択ですよね。企業イメージを回復するためには、まず、なぜなくすことにするのか、顧客が納得する前向きな説明を、企業としてする必要はありませんか?

ぐっどうぃる博士:ブランディングという視点で捉えると、企業は「人格そのもの」と言えると思います。そう考えると、植田さんのおっしゃる通り、多くの人が愛した商品に関して、どうしてそれが無くなったのかを、誰もが納得できる形できちんと説明したほうが良いでしょうね。そういう人格のほうが愛されます。

また、繰り返しになりますが、インターネットの世界では情報を完全に隠すことは難しい。その場合、なるべく嘘偽りなく誠実に説明したほうが無難でしょう。

社会への影響が大きい企業ほど、立派な人格が求められます。一方で、消費者をバカにしているような、あるいは被雇用者を虐げるような、さらに言えば安易に嘘をついたり、都合の悪いことを隠す企業は、消費者にそっぽを向かれてしまうリスクが高くなると思います。

植田:なくす説明だけだとイメージダウンは避けられないので、新しいブランドメッセージを発信しないとダメですかね。

ぐっどうぃる博士:本当に大きなお世話だと思いますが、ジャニーズが反映し大きくなっていくためには、まずは、成熟した立派な人格だと思ってもらう必要があります。それに加え、社会が支持するような企業理念をつくり、その理念に沿って商品やサービスを作っていくことだと思いますね。

植田:まぁ今回の場合は納得できる説明は作れないんでしょうけどね・笑。

まとめ

・大企業には革命的なイノベーションは生まれにくい。しかしそれは、時代の移り変わりに乗り遅れてしまうかもしれない深刻な事態。・インターネットの普及により、消費者は商品はもちろん、その商品を作り出している企業の姿勢をも知ることができるようになった。・企業は、自ら定めた企業理念にそって、一貫して活動し続けることが大切。社会に対して、嘘偽りなく誠実に。

プロフィール


ぐっどうぃる博士:理学博士(生命科学)。恋愛カウンセラー。自身の体験と生命科学的視点を合わせた独自の恋愛メソッドを展開し人気を集めている。悩める女性の恋の問題が解決するサイト『恋愛ユニバーシティ』を主宰し、他の専門家と共に、日々電話相談サービスや掲示板で答えている。現在、WEB、書籍、雑誌等など多方面で活躍中。また大手企業のマーケティングリサーチや企業のブランディング戦略にも参画。著書に『モテの定理』『恋愛マトリックス』(SBクリエイティブ)、「恋で泣かない女になる61のルール」(講談社)などがある。


植田奈保子:株式会社サンケイリビング新聞社取締役東京編集制作担当 兼株式会社リビングくらしHOW研究所取締役所長 1981年サンケイリビング新聞社入社。ジャニーズタレントに興味なかったが、ドラマ「沙粧妙子-最後の事件-」で猟奇殺人犯役をやった香取クンを見てその危うさ、哀しい目に魅了され、「蘇える金狼」でハマった。以来SMAP5人の絶妙なバランスが大好きでウォッチし続けている。

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