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秋の夜長読書❤︎サスペンスなら唯川恵さんの『手のひらの砂漠』

  • 2016.10.11
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読書の秋、到来。

日が沈み、暗がりのなか窓をあけると、ひんやりとした夜風が流れ込んでくる季節になりましたね。

たまには日々の忙しさを忘れて、秋の夜長に、涼しさを感じながら、ゆっくりと読書。そんな気分のときにおすすめの本を紹介します。

『手のひらの砂漠』唯川恵さん

文庫版、9月に発売されたばかりです!

直木賞受賞作である『肩ごしの恋人』をはじめ、数々の恋愛小説を世に送り出してきた唯川恵さんの、サスペンス作品。

主人公は可穂子、29歳。まさにバイラ世代。

この誠実な人となら、ささやかな毎日もきっと幸せに満ちあふれるーーそう確信して結婚した相手からの、思いもよらぬ暴力。

そして、命からがら夫から逃げ出し、様々な人の助けを得ながら、シェルターからステップハウスをなど転々とし、なんとか離婚。

行き着いたDVの被害女性だけで運営される自然農園で、可穂子は心の平安を取り戻すも、元夫の執拗な追跡は何年も続き、可穂子だけではなく、周りの人間にも危害が及んでーー。

と、これだけのあらすじでもサスペンス感満載なのですが、読み進めていくと、言葉にならないような恐怖が背筋をぞわっとさせます。

DV被害に詳しい弁護士の女性が、DVをする男性について、以下のように言うシーンがあります。

「気持ちの持ち方次第とか、とことん話し合えば分かるとか、そういうのとは別の次元の問題なの。思考の構造がまったく違うの。実際、懲役刑を食らって、出所したその日からストーカーにもどったって話も聞くくらいだもの」

これは、どのような努力も相手には通じない、何もなす術がない、というのと同じこと。

どれほどの絶望でしょうか。

でも、可穂子は、周りの人の助けもあって、その絶望を乗り越え、自立や自衛の道へ歩んでいきます。

手に職をつけ、合気道を習い、自分の人生をあきらめないことを選択したんです。

最後の元夫との対決、そしてラストシーンは切なくはありますが、きっとこの先、可穂子は幸せをつかめる、という予感に満ちたものになっています。

個人的に一番心を打たれたのは、父親にDVを受けていた登場人物の女の子も、可穂子も、男性への恐怖を乗り越え、心から愛せるひとに出会えたということ。

何度失敗したり、つらい目にあったりしたとしても、世の中ひどいひとばかりではない。

新たな出会いできっとまた人を信じられるようになるという希望がしっかり描かれていて、そこが心に沁みました。

わたしは深夜に部屋でひとり、この作品を読み始めてしまったため、「怖い、怖すぎる!」と小さな物音にもビクつきながらページをめくることになったのですが(笑)。

唯川さんの作品は、さすが読みやすく、展開のテンポも良くて、引き込まれて途中で読み終わることができないんです!

最後まで一気に読んでしまいました。

ぜひ、休日などまとまった時間をとって読むことをおすすめします。

会社帰りの電車の中で読んで、元夫が現れたシーンで読書を中断することになったら、駅から自宅までの夜道は怖くて歩けないかも(笑)

(編集カゲモン)

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