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まずは、ちくわで一服!『闘う! 母ごはん』中田ぷうさんインタビュー

  • 2016.10.7
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ワーキングマザーにとって、帰宅からの家族の夕食づくりは、まさに時間との闘いです。

2016年7月に『闘う! 母ごはん』(光文社)を上梓したフードライターで編集者の中田ぷうさんも、ふたりのお子さんをもつワーキングマザー。プロの料理家による数々ものハイセンスな料理本を手掛けた中田さんの初の著書は、自身の家庭の食卓を1年間記録した食日記です。

『闘う! 母ごはん』著者の中田ぷうさん

そこには、家族の食を支えるすべてのワーキングマザーへのエールがこめられていました。

■SNSの「いいね!」より「ちくわで一服」

「大学卒業後に出版社に勤務し、そのあとフリーランスのエディターとなって主婦雑誌の編集をしていました。そのころから、タレント本や有名料理家のレシピブックを担当。いまは年間6冊のペースで、料理本の企画発案から編集まで携わっています。

料理を仕事にしてはいるものの、じつは、私自身の料理スキルは、すごく低いんです。だから、毎日のごはんづくりは、必死(笑)」

朝食をつくり、送りだしたあとに仕事をし、気がつくと夕食の時間。休日には、さらにお昼ごはんも加わって、一日中ごはんをつくっては食器を洗っているという中田さん。

「そんななか、子どもは『おなかすいたー』『早く(食べたい)―』と容赦なく言ってくる…。この追いつめられる感じといったら! ひとり目のときは私も未熟で、ついイライラしてしまうこともありました」

キッチンまで入ってくるお子さんに「危ないから向こうで遊んでいて!」と怒ることもしょっちゅうだったといいます。

「でも、ごはんにこだわるあまりに、空腹で待ちきれない&甘えたい子どもをしかりつけてしまったら、それはもう母親のエゴでしかありませんよね。

そこで、あるときから、そんなに必死に夕食をつくらなくてもいいんじゃない? 保育園や学校でちゃんと栄養士がつくったごはんを食べているんだから…と頭を切りかえるようにしました」

中田さんが取り入れた方法は、「とりあえず一服」してもらうことだそう。

「家に帰って、子どもが『おなかがすいたー!」と騒ぐようなら、ちくわや魚肉ソーセージを手渡す。 “一服”してもらうようにしたら、ごはんづくりがスムーズにいくようになりました(笑)」

世のなかには、仕事も家事も子育ても完璧な“できるお母さん”がたくさんいて、そのためのノウハウもあふれています。しかし、そのせいで自分を追いこんでしまうお母さんもいると中田さんはいいます。

「『ちゃんとやらないと』と妙に気負ってしまうお母さんって、多いですよね。でも、そんなにがんばりすぎなくていいんじゃない、もっと肩の力を抜きましょうよ、という思いから生まれたのが『闘う! 母ごはん』です」

■母の使命は「家族をひもじくさせない」こと

「じつは、SNSに投稿されている、おしゃれな料理写真を見るのも大好きなんです。私も、これは上出来! と思えたものに『#かっこつけごはん』というハッシュタグをつけて投稿することもあります。

でも、それは時間と心に余裕があるときだけ。普段は、『一刻も早く子どもたちのおなかを満たすこと』が最優先です」

子どもたちが早くごはんを食べられるように、中田家のごはんには特徴があるのだそうです。

・食材はすべてざく切りorひと口大

「時間がかかる千切りやみじん切りはしません。いや、みえをはりました。できないんです(笑)。ニンジンやカボチャなど、厚みがあると火が通りにくい食材は炒め物には使わず、煮込み料理専用にしています。見た目の繊細さには欠けますが、食べごたえがあり、満足感が高いですよ」

手間も時間もかかる大根おろしは、フードプロセッサーでつくるそうです。

・大皿にどかんと盛る

「食べたい量を食べたいだけ食べていいのよ! というアピールです(笑)。複数の料理をワンプレートに盛りつければ、洗い物もぐっと減ります」

・揚げ物は市販のものに頼る

メインの1品になるから揚げやとんかつは、子どもも大好きなメニュー。素うどんにのせる天ぷらやサンドイッチに挟むコロッケも満足度をあげるアイテムです。

「でも、衣づけの手間や油の処理を考えると、時間がかかる料理ですよね。母の手づくりを子どもに食べさせたいという思いが基準でも、『それはそれ」『これはこれ』という線引きも必要。

だから、堂々と市販品に頼ります。そのかわり、温めは電子レンジではなく、フライパンで。このひと手間が私なりの気づかいです」

・ひとつのフライパン、ひとつの鍋でつくれるものだけ

「まず卵を炒めて取りだし、次に肉を炒め、先ほどの卵を戻して加える…といったレシピも“複雑レシピ”として却下します。

全食材を一度に入れるか、どんどん足していくだけ! といったシンプルレシピだけが残りました」

・調味料は近所のスーパーで手に入るものだけ

「わが家の味つけは、シンプルです。基本はオリーブオイル、ごま油、さとう、塩、しょうゆ、みそ、酢、酒、みりんといったところ。安心は大切なので、産地を見たり、オーガニックのものを選んだりするようにしていますが、だしパックや粉末のうどんスープも使いますよ」

スペシャルなハーブやスパイスを使えばさらにおいしくなるのはわかっているけど、汎用性が低い調味料は、結局使いきらずに余らせてしまうことに。コスト面を考えてもデメリットになるといいます。

「わが家にあるのはスタメンになるめんつゆとオイスターソース、そしてナンプラーとバルサミコだけです」

毎日つくることを考えると、手のこんだ料理よりも簡単で手間いらずの料理。働くママにとって、負担のないレシピでないと続かないというのが中田さんの考えです。

「でも、働くお母さんに限って、子どもを日中、保育園などに預けている後ろめたさもあって、手を抜かない傾向が強い気がします」

子どものごはんづくりは、まさに闘い。カップめんの日やスーパーのお寿司をお皿に盛るだけの日がないと、やっていられません。

後編では、“もっとものぐさになっていいんじゃない?”というメッセージを伝えたかったという中田さんの、とっておき秋レシピを紹介します。

(マムズラボ)

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