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「どうでもいいこと」まで知りたいのが恋:よろず女子百景(1)

  • 2016.9.28
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全部、恋のせい。

スマホを握りしめたまま床に転げまわって身悶えしたり、「それってどういうこと!?」と鼻息を荒くしたかと思えば、ポロッと涙がこぼれたり・・・・・・。

そう。どれもこれも全部、恋のせいだ。

それでも、涙越しに見渡す景色はキラキラと輝いて。

恋に振り回される女ゴコロは、どこかやるせなくて、不憫で、いじらしい。

そんなせつなくていとおしい恋の風景を、脚本家でエッセイ・コラムニストの大島智衣さん(@ohshima_tomoe)がココロ向くままにつづります。

■何でもないことでも知りたくなるのが、恋

「この人と一緒にいられたら私は、いろんなことを上手にやれる気がする」

そう不思議と思ってしまった時から私は“彼のことを好きな女子”になった。

それなのに。たったひと言のせいで恋する女子の風景は変わってしまった。

とても好きだけど、そうとはまだ伝えられずにいた彼と3度目のご飯を食べてバイバイした帰り道に、嬉しくて、楽しくて、私は初めて彼に電話をした。

とりとめのないことをつらつらと、ホクホクと、一生のうちで今が最も幸せな時間!とばかりにウカれて声を上げては、喋りつづけた。そして、その流れで彼に聞いたのだった。

「じゃあさ。布団とベッド、どっちで寝てる?」

うん。メッチャどうでもいい質問なのは分かってる(笑)。

しかも、どうでもいい系の質問の中でも、

「目玉焼きには、しょうゆ or ソース?」とか、

「きのこの山派か? たけのこの里派か?」とか、

好みやこだわり・理由までを討論して掘り下げられるような議題ではなくて、ただちょっと、好きな人のまだ見ぬ一面を知って「布団で寝てるんだ? カ・ワ・イ~♪」とか想像したいだけだった。ちょっと気持ち悪いのもじゅうぶん分かってた。

それでも、好きな人の何でもないことでも知りたくなるのが、恋。でしょう?

■どうでもいい質問で分かった、どうでもよくない彼の本心

すると、さっきまでとは打って変わって声のトーンを落とした彼が、

「どっちだっていいでしょ、そんなどうでもいいこと」

と冷めざめと言うのが途切れ途切れの電波の合間から聞こえ、

プツ。ツーツーツーツーツー・・・・・・

と、突如電話は切れたのだった。

!?

えっ、私今、電話切られた!? 電話、切られたの!?!?

唖然として、何が起こったか状況整理がつかないまま、しばし放心状態。ただもう、なんか、ものすごーく最悪なことが起きたっぽいことだけは分かる。

なぜに? 布団とベッド、どっちで寝てるかなんてアホなこと聞いて呆れた? 怒った? 気持ち悪い下心、バレちゃった!?

いや確かに・・・・・・くだらな過ぎる質問だったかもしれない。でもさ、切ることなくない(泣)? や、電波が悪くて切れちゃっただけかも。それか、電池切れ? にしても声、チョー怖かったな・・・・・・気になる。けど聞けないよ。電話また掛けて「寝具関連の質問はNGだった?」とか到底聞けない!

もうすっごく・・・・・・落ち込んだ。

私との電話を彼は「切った」んだ、と。

なんだか、どうしようもないくらい、世界一じぶんがどうでもいい存在のような気がして。今後彼に何を話しかけてもどうでもいいことと思われそうで。

■百年の恋も冷め<させられた>恋の引き際

男性にとっては、

「今日の昼飯は牛丼にするか、ラーメンにするか」

「買い換えるならMacか、Windowsか」

なんかが重要ゴトだったりするみたいだけれど、

恋する女子にとっては男性が、

「布団で寝てるか、ベッドで寝てるか」

「ヒゲ剃りはカミソリ派? 電動シェーバー派?」

なんてことを聞いてみたくなるわけで。

だけどそんなこと・・・・・・人によってはホントにどうでもいいのかもしれない。

それでも、

どうでもよくないのが、“彼のことを好きな女子”で、

どうでもいいと言えてしまうのは、“彼女のことを好きではない男子”なんだなと思った。

そんな彼のピシャリによって百年分ほどの恋する想いも一気に冷めたというか、瞬間凍結〈させられた〉のだった。塩対応どころか液体窒素対応だったと言っていい。

そうして何も上手くやれないまま私は、“彼のことを好きな女子”をやめて、元のただの女子に戻った。しゅるるるる・・・・・・(涙)。

■どうでもいいことを聞かれて嬉しいのもまた、恋

あんなこと聞かなければ、この恋はうまくいっただろうか? 

いや多分きっと、遅かれ早かれ、私の片想いだったってことは、どこかのタイミングで分かったのだろう。ただそれが今回は、この世で最もどうでもいい質問をきっかけに分かっただけだ・・・・・・。

だけど、どうでもいいことを聞かれて嬉しいのもまた、恋。じゃないのかな?

こうして、この「悲壮!布団かベッドか事件」以来、それらのワードを聞いただけでも今だにゾクッとしてしまうけれど(笑)、それでもまだ、出会えることを信じている。

「どうでもいいじゃん」と笑いながらも答えてくれる、私をどうでもよくは思わない人に、出会えることを。(大島智衣/エッセイ・コラムニスト)

(ハウコレ編集部)

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