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「続編は考えられませんでした」山崎貴監督が明かす『ゴジラ-0.0』誕生秘話とキングギドラへのこだわり

  • 2026.11.6

邦画では異例の全世界1億ドル突破という興行収入を計上し、第96回米アカデミー賞では視覚効果賞を受賞するなど、グローバルに話題を広げた『ゴジラ-1.0』から3年。待望の続編『ゴジラ-0.0』がベールを脱いだ。前作から2年後の昭和24年、倒したと思われたゴジラが生きていて、戦後の混乱が収束しつつある日本を再び蹂躙する!

【写真を見る】ゴジラに加えて、もう1体の巨大怪獣が登場!

神木隆之介、浜辺美波、吉岡秀隆ら前作の主要キャストが再結集し、ゴジラを食い止める戦いを熱演。そして監督・脚本・VFXを務めるのは、もちろん山崎貴。前作でゴジラによるパニックをスペクタクルとして描きながら、終戦直後の日本人のドラマを緻密に築きあげ、賞賛の声を集めたのはご存じのとおり。そんな山崎監督に、続編に込めた想いを聞いた。

【写真を見る】ゴジラに加えて、もう1体の巨大怪獣が登場! [c] 2026 TOHO
【写真を見る】ゴジラに加えて、もう1体の巨大怪獣が登場! [c] 2026 TOHO

「神様のようなものが襲来してくるような、そんな感じを出したかったんです」

3年という長い期間を経ての続編だが、企画自体は前作が作られた頃から静かに動き出していた。「僕自身は前作を作り終えたとき、やりきったと思ったので続編は考えられませんでした」と、監督は振り返る。「初号試写の後、“続編があったほうがいいよね”という雰囲気が周囲で盛り上がってきたんです。それで、公開日の2023年11月3日に、正式に続編を作ることが決まった。それからファースト・プロットをひと月ほどで作り上げました」。

今回はゴジラに加えて、キングギドラというもう1体の巨大怪獣が登場。山崎監督が子どもの頃から好きだったという怪獣で、映画で描くのは念願でもあった。もちろん、キャラクターデザインにはこだわりが宿る。「神様というか、神の鳥に見えるようにしたかったんです。火の鳥や鳳凰は尾や尾羽が長いじゃないですか。翼膜のようなものも大きくして、神様のようなものが襲来してくるような、そんな感じを出したかったんです」。

ゴジラに負けず劣らず、強烈なビジュアルを誇るキングギドラ [c] 2026 TOHO
ゴジラに負けず劣らず、強烈なビジュアルを誇るキングギドラ [c] 2026 TOHO

全体像もそうだが、観客の心に恐怖とともに焼き付くのは、ゴジラと同様に“目”だ。「CGモデリングの田口(工亮)くんは、どうしても人間っぽい目にしたがるんですよ。個人的にはゴジラらしい半月型の目にしたいんですけど(苦笑)。ただ、これはこれでいいと思えたのは、知性が宿るからです。とくにギドラには一筋縄ではいかないずる賢さがありますからね」と、山崎監督は語る。神のような存在感は、この怪獣たちの目力からも発せられているのだ。

「典子がゴジラサイドの女性なので、ギドラのことを考える女性を置いたらおもしろいと思いました」

明晰な頭脳でギドラの行動パターンを分析する青山 [c] 2026 TOHO
明晰な頭脳でギドラの行動パターンを分析する青山 [c] 2026 TOHO

ギドラの登場に合わせて、本作にはもう1人重要な人間のキャラクターが加わった。長澤まさみ扮する気象予報士、青山だ。「前作に続いて登場する典子(浜辺美波)は、良くも悪くもゴジラサイドの女性キャラクターです。なので、ギドラについても、その存在についていろいろなことを考える女性を置くのはおもしろいアイデアだと考えました。ギドラは昔から暗雲や雷のイメージがありますし、それならば気象を研究する人を置こうということになったんです」 。ギドラの行動パターンを研究し、対策にあたる彼女の頭脳的な活躍にぜひ注目してほしい。

典子とゴジラをつなぐものとは…? [c] 2026 TOHO
典子とゴジラをつなぐものとは…? [c] 2026 TOHO

彼女や作戦チームの案に則って航空作戦が実行に移され、主人公であるパイロット、敷島(神木隆之介)らが空へ飛び立つ。今回もこの航空アクションは大きな見どころ。前作では主に洋上が舞台となっていたが、本作では山崎監督の故郷である長野県松本市の上空という設定で展開する。「松本の上空のかなり高いところにドローンを飛ばして、全方位を撮影しました。現代の建築物が多いことは覚悟していましたが、いちばんの問題は、田んぼが昭和のものとはまったく違うことでした。きれいに区画整理された田んぼが、どうにも嘘くさく見えてしまった。一度作ってみてから、“やっぱり田んぼを変えたい”とお願いしました。変えていくと、どんどん昭和の風景になっていくんですよ。おかげで敷島が自由に空を飛び回れる、当時の感覚が生まれたと思います」と、過去に多くの作品で昭和の風景を再現してきた山崎監督ならではのこだわりが生きたシーンとなっている。

 上空でギドラとの戦いを繰り広げる敷島 [c] 2026 TOHO
上空でギドラとの戦いを繰り広げる敷島 [c] 2026 TOHO

「原子爆弾投下の日の広島を再現することは、けっこう食らったし、辛い作業でした」

変わらぬ強烈なビジュアルで観客の心をつかむゴジラ [c] 2026 TOHO
変わらぬ強烈なビジュアルで観客の心をつかむゴジラ [c] 2026 TOHO

昭和といえば、本作にはもう1つ大きなチャレンジがあった。それは昭和20年8月6日、つまり原子爆弾投下の日の広島を再現すること。クリエイターにとって大変な責任感を伴う作業となることは想像がつく。「広島の場面については相当、議論を重ねました。オブラートに包んだような表現はよくありますが、生々しいものはあまり見たことがありません。世のなかから戦争の記憶が薄れていって、気が付けばそれを隠そうとしている風潮さえある。僕らは戦争を体験された方から直接話を聞いた最後の世代かもしれない。実際のあの日の広島がどうだったのか?これはいまやっておかないなといけないんじゃないかと思ったんです」。山崎監督はクリストファー・ノーラン監督と対談した際に、「『オッペンハイマー』に対する日本人側の返答のような作品を作ってほしい」と言われたというが、本作はそのアンサーなのかもしれない。

大切な娘を守るため、敷島と典子が下す決断とは…? [c] 2026 TOHO
大切な娘を守るため、敷島と典子が下す決断とは…? [c] 2026 TOHO

「実際に広島に行き、高校生たちが戦争体験者の話を聞いて描いた絵を見せてもらいましたが、そこからインスパイアを受けました。彼らのように当時のことを学ぼうと思えば学べるけれど、普通に生活していればそこにはなかなかたどり着きませんよね。そういう要素がゴジラの世界のなかにあったとすれば、観た方が広島を思い出してくれるんじゃないか?そうと決めたら、表現者としては逃げてはいけない。本当に生々しいものを作らないといけない。作っている最中も僕自身、けっこう食らったし、辛い作業でした。作り終えたいまでも怖いし、正しいことをしたのかどうかもわかりません。それでも、僕らが子どもの頃に読んで衝撃を受けた『はだしのゲン』のようなトラウマは大事だと思っています。ゴジラの映画を見て、不意討ちのようにそれを食らうのも、体験として大事なんじゃないかと考えています」。そもそもゴジラは核兵器の産物として設定された怪獣であり、シリーズのいくつかでは裏テーマにもなっている。本作における原爆のシーンが物語にどう絡んでくるのかは、その目で見て確かめてほしい。

昭和の田んぼを再現するのが大変だったという山崎監督 撮影/杉 映貴子
昭和の田んぼを再現するのが大変だったという山崎監督 撮影/杉 映貴子

前作『ゴジラ-1.0』はアメリカでも大きな反響を呼び起こしたが、日本の観客との反響の違いについても尋ねてみた。「ショックだったのは、アメリカがまだ戦争をしている国であるという現実を突きつけられたことです。敷島はPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えているキャラクターですが、アメリカの観客の方は“こういう人、たくさんいるんだよ”と。僕らは過去の物語として戦争を撮っていますが、アメリカは現在進行なんですよね。そこに大きな衝撃を受けました」。

『ゴジラ-0.0』は前作と同様に、敷島とその疑似家族のドラマを核において物語を転がしていく。彼らは戦争の傷跡を克服できるのだろうか?ゴジラやギングキドラによる、さらなる“戦争”にどう対峙するのか?山崎監督の強力な意匠に触れながら、このスペクタクルを体感してほしい。

取材・文/相馬学

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