1. トップ
  2. 100万分の1の奇跡!北海道産「お菓子のための」小麦が誕生…食べ比べてわかった『口どけ』

100万分の1の奇跡!北海道産「お菓子のための」小麦が誕生…食べ比べてわかった『口どけ』

  • 2026.11.5

地球温暖化の影響で、収穫期や種まきの時期が劇的に変化している北海道の小麦づくり。

十勝の農家が直面する課題を克服するため、10年間で100万を超える候補からお菓子用の新品種「北海道白」が誕生しました。
気候変動に立ち向かう研究者とパティシエの挑戦を追います。

変わりゆく農作業の暦

Sitakke

コシがあるうどんや、ふっくら焼き上がるパン、しっとりとしたケーキにも…。
様々なメニューで、主役にも引き立て役にもなる小麦。

日本の小麦の約8割は輸入品ですが、国産小麦の約3分の2は北海道産です。

帯広市で6代目として農業を営む有塚利一さん(41)は小麦の「きたほなみ」を育てています。
種を植えたあとの今の時期、農家の仲間たちで話題に上るのが『天気』の話です。

「毎日みんな天気の話。集中的に雨が降ったりするので、畑が乾かなかったり、最悪は作物が流されたりしてしまうので、悩んでいる」

秋に種をまき、雪の下で冬を越す小麦。春の雪解けから成長し、夏に収穫します。
ところが、気候の変化で作業時期に変化が生じています。

Sitakke

「昔は9月20日ごろ小麦の種をまいたが、今は9月下旬や10月に。収穫作業も8月だったが近年は7月中旬ごろに始まる。昔と比べたらだいぶ変わった作物体系になった」

気候が変わり始めたことで、農作業の負担も増えています。

「病気になったり、いままで来なかった虫が来たり。今まで使っていなかった農薬をかけて、回数を増やしたりしている」

小麦の研究者は、十勝だけでなく道内全体で『農作業の暦』が変わり始めていると指摘します。
道総研・中央農業試験場の杉川陽一主査は「昔のように9月15日ごろにまくと、雪が降るころには少し大きくなりすぎる。対策として少し種まきを遅らせている」と説明します。

変わりゆく北海道の気候を見据えて、品種改良を研究する現場を訪ねました。

まるで宝くじ?100万分の1の確率で誕生した小麦

Sitakke

訓子府町にある北見農業試験場では、未来の品種の研究開発が行われています。

道総研・北見農業試験場の其田達也主査は「どれだけたくさん取れるか。取れたものの品質、うどんやパンがおいしいといった試験をしていく」と説明します。

Sitakke

片方の畑には約20万の個体から選ばれた6000の『候補生』たちが植えられ、もう片方には、さらに選び抜かれた400の候補が育っています。

「作物なので1年に1回しか取れない。1回の結果で『よい』となっても、天気は毎年変わる」

収穫量や品質、病気への強さなどを調べて、エリートコースの中からさらに絞り込んでいきます。10年間で試すのは延べ100万以上の候補です。

「宝くじに例えられることもある。何十万・何百万の中からひとつの品種になる」

Sitakke

その長い挑戦から生まれたのが「北見95号」です。
目指したのは、北海道の『お菓子のための』小麦でした。

「北海道はお菓子が有名だけど、地場の小麦で菓子用の小麦がないのは、お菓子大国なのにもったいない」

生地の粘りが弱く、モチモチしにくいのが特徴の、お菓子作りに適した北海道産小麦。
「北海道白」の名前で、収穫量が増える2027年秋以降から本格的な流通が始まる見込みです。

『菓子用小麦』の実力は…

Sitakke

その実力はどれほどのものなのでしょうか。

北海道産の小麦を使い続けてきた、札幌市の菓子工房「ケイク・デ・ボア」のパティシエ・森伸司さんに試してもらいました。

いつもの「きたほなみ」と、新しい品種の「北見95号(北海道白)」。
同じ分量で焼き比べてみました。

まずは「きたほなみ」で作ったクッキーを試食すると…食感がザクザクして楽しい!
森さんは「少し生地が粗い感じがする」と表現します。

続いて「北見95号」で作ったクッキーを試食すると…口どけの早さを感じます!
「舌の上に残る時間が少ない」と森さんが話します。

Sitakke

次に、パウンドケーキの断面を比べて、森さんは「きたほなみの方が目が細かくて、95号の方が少し大きく感じる。95号の方が軽い」と分析。
従来の「きたほなみ」はしっとりとした食感ですが、「北見95号」はより軽い仕上がりになりました。

森さんは「北見95号はショートケーキに使うと違うと思う。より使いやすい粉が出てきたという印象」と話します。

北海道のお菓子のために誕生した、北海道の小麦。
しかし、「研究者にとって今回の完成はゴールではない」と、道総研・北見農業試験場の其田主査は話します。

Sitakke

「北見95号はひとつの到達点には到着した。一方で温暖化が進み、気候の変動が激しくなる。気候変動に耐えるような品種の開発は絶えず進めていきたい」

北見で小麦の品種改良の研究が始まって100年。
次の北海道を支える小麦は、この畑から生まれるのかもしれません。

取材・文:HBC報道部
編集:Sitakke読者編集部ぬまぬま
※掲載の内容は、HBC「今日ドキッ!」放送時(2026年10月14日)の情報に基づきます。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ