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横井佑輔×野田慈伸×富川一人×齋藤明里 最強の布陣で臨む『俺ずっと光ってるボーイ、健之助』をたっぷり語る!

  • 2026.11.3
(左から)野田慈伸、富川一人、齋藤明里、横井佑輔 width=
(左から)野田慈伸、富川一人、齋藤明里、横井佑輔

11月4日に中野ザ・ポケットにて、PlayPlan×桃尻犬『俺ずっと光ってるボーイ、健之助』(作・演出:野田慈伸)が開幕する。本公演では、2019年に桃尻犬の本公演として初演された同名作が横井佑輔による初プロデュース公演として上演される。主人公は、地方都市の片隅で暮らす40歳の健之助。恋人・桜子との未来を描けず、バイト先のスーパーでも仲間たちにああでもないこうでもないと愚痴をこぼす日々。しかし、その背景には思いもよらぬ秘密があって……。不器用ながらも懸命に生きる人々の姿に“光”を当てる桃尻犬流人間賛歌。7年ぶりの再演の経緯、物語に込めた想い、キャスティング秘話、稽古場での実感……。熱のこもった稽古場で、プロデューサーの横井、作・演出の野田、健之助を演じる富川一人(はえぎわ)、桜子を演じる齋藤明里(柿喰う客)の4名に話を聞いた。

【写真】PlayPlan×桃尻犬 注目タッグ舞台を語る4人、トークが止まらない!

■初演は立ち見も続出! 最強の布陣で再び見せたい“光”

――7年を経たプロデュース公演にはどんな経緯があったのでしょうか?

野田:改めて振り返ると、桃尻犬にとって最もエポックメイキングな作品な気がしますね。クチコミで広がって、動員もかなり増えて……。今回プロデューサーとして声をかけて下さった横井さんも制作で入ってくださっていました。

横井:初演の時、台本の最初の10ページくらいを読んだだけで、「これは面白い作品になる」と思いました。劇場でもお客様が楽しんでくれているのを実感していて、立見が出る程の評判にもなりました。盛り上がってる空気を感じる公演だったと思います。

野田:確か、平田満さんもその時に初めて桃尻犬を観に来て下さったんですよ。その後アル☆カンパニーでたびたびご一緒させていただいているのですが、いろんな出会いに繋がった公演でもあります。

横井:これまで関わった公演の中でもずっと心に残っていて、『俺ずっと光ってるボーイ、健之助』のことをいろんな人に語っていたんです。やっぱりこの作品をもう一度みんなに観てもらいたい。そう思い自分にとって初となるプロデュース公演に選ばせていただきました。再演でじっくりとクリエーションしてみたら、また違った野田さんの魅力が出せるんじゃないかなとも思って。

野田:そうそう。桃尻犬作品の長編の再演は初めてなので、そこも楽しめたらと思います。

――初演の盛況ぶりが伝わってくるお話です。主人公・健之助を演じる富川さん、その恋人・桜子を演じる齋藤さんは本作にどんな第一印象を受けましたか?

富川:実は僕も初演を観客として観ていて、すごく面白かったんです。OFFOFFシアターで、いろんな衝撃の果てになんかよく分かんないけど感動させられちゃった作品って印象です。まさか自分が健之助を演じることになるとは全く思ってなかったので、オファーをもらった時は意外で驚きました。

野田:とみーさんとはいつかご一緒させてもらいたかったんです。すごい好きだったんで、どういうタイミングだったらお願いできるかなということを考えていて……。で、今回の企画の話が出た時に、今じゃないかなと思ったんですよ。プロデュース公演だからお金もいつもよりお支払いできるのではないか、という安心もあり……!(笑)

齋藤:私は横井さんからお声がけいただいて、初めて台本と初演の映像を拝見した時に「これは私だ、私がやるしかないやつだ!」と思ったんです。そのくらい桜子という役に親近感を抱いたんですよ。桜子はかなり精神が不安定で、世に言う「メンヘラ気質」なところがあるんですけど、私には彼女の言ってることが分かるというか、結構共感できる。過激な行動に走ったり、周りが見えない時もあるんですけど、心理としてそういう発想や思考に陥っちゃうのも理解ができるなって……。あと、なぜかそういう役柄をやることも多くて。だから、出会うべくして出会った作品であり、役だと思ったんです。

野田:齋藤さんは多分柿喰う客に入団したての頃かな、そのくらいの時期にチラシかネットかで名前と顔を見て、すごく気になる存在だったんですよね。そしたら、横井さんからも名前が挙がって、まだ芝居を拝見する機会はなかったのですが、直感的にいい予感がして……。で、一人芝居を観に行ったら、「ああもうこれは絶対安心だ」って確信に変わりました。

齋藤:その一人芝居も恋愛をこじらせてしまっている役だったんですよ。好きな男の人がいるけど、その人には別の相手がいて、それでも都合のいい女として接しているけど、本当はその好きな人の好きな女のことを殺したいって思ってる女の役で……。そして、その独り言を40分喋り続けるっていう芝居で(笑)。

野田:もうその時には桜子をビシバシ感じてたんだと思う!

齋藤:あははは! 直感が通じ合ってうれしいです(笑)。

横井:僕は齋藤さんのことを元々よく知っていたので、キャスティングのはじめの頃から、ハマり役だと思っていました。稽古を経て齋藤明里から「桜子」に近づいていったら、ますます魅力的な齋藤明里を見て貰えるだろうと思っています。富川さんは観客としてはずっと拝見していたのですが、ご一緒するのは初めてで、こんなに「健之助」がうまくできるのか!? と驚いています(笑)。合っているというか、合わせていただいているということなのだと思うのですが、とっても魅力的で感動しています。もちろん、他の俳優もみんな面白くて、最強の布陣がそろったなと思っています。

■正しくなくとも、懸命に どうしようもなくても、生きていく

――台本を拝読する限り、2人は少し変わった恋人関係で、どうしようもなさ、ままならなさを抱えながら一緒にいようとする姿が印象的でした。同時に、何か予想外のことが起こりそうな予感も感じて、思わず途中で台本を閉じました(笑)。ネタバレしない程度にその役どころについてお聞かせいただけますか?

富川:なんですかね、まあでもクズです(笑)。本能のまま生きてるように見えますがどうなんでしょうか。野田さんから「健之助は優しいクズで」という言葉をいただいたので、一緒に落ちていくじゃないけど、この2人はこの2人じゃないとダメなんだなっていうニコイチ的な存在にはなりたいと思っていて、今そのあたりを稽古で探しているところです。

野田:執筆当時は僕もまだ30代になりたてだったんです。そこから40歳の男の結婚像やどうしようもない男のあれこれみたいなのをイメージしながら書いてたわけですが、7年経って自分も40代を目前という健之助とほぼ同じ世代になってみたら、「甘っちょろいこと言いやがって!」とすごく思ったんですよ。そして、その違いはこの作品を再演する上でもすごく面白いなと思ったんですよね。優柔不断な男として生きている人のどうしようもなさみたいなのは、やっぱり大きな見どころになると思います。

齋藤:2人に限らず、登場人物たちがみんな開き直って、「私はこういう人間です」って生きているのがいいなって私は思います。善悪は別として、私ってこうです、俺ってこうですという生き方を貫いている気がするし、もしかしたら現代社会で生きる人たちが隠しているものがそこにはあるのかもしれない。だから、「自分の恥ずかしいところもそんなに隠さなくてもいいかも」みたいに思ってもらえたらいいのかなって。今の話を聞いててそんな風に思いました。とにかく、みんなが一生懸命生きてますよね。そこを見てほしいです。

野田:そうなんですよね。正しさという面で言えば、決して正しいと言えるような行いではなかったりするし、きっと観ていてそれを嫌だと思う人もいると思うんです。でも、そこに合わせる必要もないというか、逆にそこで励まされる人もいるのが今自分たちが生きている世界だとも思うんですよね。そういう意味でも、過去作の中でも最も真正面から書いた作品。何の話なんだと言えば、やっぱり愛の話だと思います。改めて読み返すと恥ずかしいところもあるけれど、恥ずかしがらずにやれればいいなって思っています。

富川:健之助って、基本的にずっと逃げてるし、でも、どこかあっけらかんとしていて、つかみどころがない男ではあるんですけど、最後まで通して観た時に、「ああ、だから健之助はこうなったんだな」って、そんな風に見える人間でありたいなと思います。野田さんが書かれるちょっとしたセリフや言い回しにそのヒントがあったりするので、小さなところも大事にしてやっていきたいなと思います。

横井:そう。この作品の魅力ってまさにそこなんですよね。今回のチラシを作る時にデザイナーさんには「日常的な風景にしてほしい」というオーダーを出したんです。それは観終わった後にこのチラシやタイトルを見て、「ああ、そうだったんだ」って、ハッとしてくれたらいいなと思っていて……。見た人の心にもちょっと、光ってくれたらいいな。そんな想いを込めて企画しました。

■光るのか、光らないのか 答えは劇場で!

――物語や2人の関係の行方はもちろん、個性豊かな俳優さんたちが演じる登場人物たちの日常やその生き方についても想像が掻き立てられるお話です。稽古場はどうでしょう? 何か印象深いエピソードなどはありましたか?

野田:本公演だと新作になることがほとんどということもあり、稽古をみっちりやる時間があんまり取れないんですよ。でも、今回はすでに台本があるので、稽古初日からみっちりやれたんですよね。そうすると、余白を楽しめる感覚がすごくあるんです。新作だとまず立ち上げるのに精一杯になるところが、今回は立ち上がるっていうのはもう知ってるから、それまでの道中をいかに面白がりながら遠回りするか、みたいな……。そんな感じで毎日の稽古を楽しんでいます。

富川:桃尻犬の舞台ってめっちゃ面白いじゃないですか。でも、いざやると難しい。観るのとやるのじゃ全然違うんだなと感じています。おっしゃる通り、野田さんは余白を残してやってくれてるんですけど、その一方で、作品として「ここは通らなきゃいけない」というラインもあると思ってて、そのラインを押さえながら余白の中でどう自由にやるか。そこに難しさとやりがいを感じています。押さえるべきポイントを大事にしつつ、この座組ならではのバランスをみんなで探っていってます。毎日心のアンテナを張り巡らせています。

齋藤:すごく分かります! 私も自分の中の桜子像を作って稽古場に行くんですけど、それを通そうとしてもできない瞬間があって……。まさにアンテナを張って、その時々で拾えるものが違うんだけど、全部に綺麗に反応していかないとダメというか、何か落としちゃうと面白くなくなる瞬間がすごくいっぱいあるんです。でも、そこが刺激的だし、燃えます!(笑) 「絶対全部うまくハメてやる」って。重すぎても軽すぎてもダメ、みたいな綱渡りのバランスを1個1個丁寧にやっていくんだけど、同時に「丁寧にやってます」と見せないようにするのが実は1番大事だったりして。だから、桃尻犬に出ている俳優さんって本当にみなさんお上手なんですよ。

野田:いや、みなさんもですし、やっぱりこうやって話を聞いていても、2人とも本当にすごいですよ。劇団公演では大体あて書きだけど今回はそうじゃない難しさもあるんですけど、そんな中で本当に素敵にハマってくれていて……。

齋藤:あと、「野田さんの作品に出るよ」って言ったら、劇団員はじめすごくたくさんの人が面白がってくれたんですよ。「桃尻犬マジで面白いよね」とか「絶対観に行くね」とか……。だから、その期待も裏切らないように頑張りたいです!

横井・野田:うれしい〜!!!

――最後に、それぞれがこの作品の魅力はここだ! と思うところを教えてください。

野田:僕がまさにそうなのですが、「これが正しい」とか「こうしたら成功者になれる」とか、そういう世の中の風潮やムードに生きづらさや息苦しさを感じている人に共感してもらえるのではないかと思っています。情けなかったり、だらしなかったり、どうしようもない奴らしか出てこないお芝居ですが、愛すべき人間たちが懸命に生きている姿を楽しんで観ていただけたらと思います!

横井:僕にとって、「演劇ってこういうのだ」っていう作品だと思っています。もちろん、そうでない演劇もたくさんあるのですけど、僕が思う面白い演劇とはこういうの。演劇を見るのがはじめての人でもこの作品を見て、「演劇って面白い」と思ってくれたらいいな、と思っています。難しい話でもないし、「日常」みたいな話でもない、他のメディアでは見られない演劇ならではの面白さの作品ですので、お気軽に来てもらえたら!

齋藤:観終わった後に、お客さんの心になんでもいいから残ればいい。毎回そんな思いで演劇を続けてきました。そういう意味で、きっとこの演劇を観た人はそこで生きている登場人物のことが忘れられないんじゃないかな、と思っています。コメディが観たい人も、ハートフルな作品が観たい人も、エンタメが観たい人も、会話劇が観たい人も、それぞれの刺さり方ができる作品だと思うので、いろんな人に観にきてもらえたらと思います!

富川:『俺ずっと光ってるボーイ、健之助』というタイトルですけれども、果たして本当に光ってるのか、光ってないのか、光ってるとしたらどの辺なのか、みなさんの目で確かめにきていただけたらと思います。なるべく全ステージ光れるようには頑張るので、是非“ずっと光ってるボーイ”とは一体なんたるかを見届けに来ていただけたらうれしいです。

(取材・文:丘田ミイ子)

PlayPlan×桃尻犬『俺ずっと光ってるボーイ、健之助』は、中野ザ・ポケットにて11月4~8日上演。

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