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朝ドラ【ブラッサム】あの有名作家も登場!? 大作家誕生を予感させる演出にワクワク

  • 2026.11.2

朝ドラ【ブラッサム】あの有名作家も登場!? 大作家誕生を予感させる演出にワクワク

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていたきます。作家・宇野千代をモデルに、明治・大正・昭和を生き抜いた葉野珠の人生を描く「ブラッサム」のレビューです。

有名作家をモチーフとした登場人物が続々登場

秋山格之介。「鋭い洞察と独自の感性で名を馳せる文壇の寵児(公式HPより)」とされる人気作家、代表作は『羅城門』『蜘蛛の巣』。そう、高良健吾が演じるこの秋山の代表作は、芥川龍之介をモチーフとした登場人物である。
「文学は呼吸。吸うように読んで吐くように書く」
そんなセリフもまた、天才作家の雰囲気たっぷりだ。

以前も本稿で触れたが、実際の人物をモチーフとした朝ドラ、特に文化面の色合いの強い作品には、この秋山ばかりでなく、『あんぱん』ではいずみたく、永六輔など、『カーネーション』は高田賢三や沢田研二、『芋たこなんきん』には藤本義一といったように、誰もが知る実在の著名人をモチーフあるいはイメージしたキャラクターが登場することによって、メインの登場人物の人生の世界をよりクッキリと浮かび上がらせてくれることがあるところが魅力のひとつである。

作家・宇野千代の人生を、石橋静河が主人公の珠として演じるNHK連続テレビ小説『ブラッサム』の第5週、「狂騒で、東京」が放送された。本作も、秋山はじめ、発表されているキャスティングを見ても、この先さまざまな有名作家をモチーフとした登場人物が続々登場し、珠に大きな影響を与える展開が期待できる。

さて、同僚教師との関係がもととなり「ふしだら」という噂があまりにも広まってしまったことで働くこともままならず生きづらくなってしまった珠は、生まれ故郷の岩国を出て上京した。東京帝国大学に進学した保(金子大地)のお世話係として保の下宿に「妹」だと嘘をつきふたりの東京での同居生活が始まった。

もちろん時代性もあるわけだが、ずっと珠を縛り続けてきた、地方特有の窮屈なしがらみから解放され、自由の街・東京で心機一転、立ち読み歓迎、気さくな店主のいる書店「ぶくぶく堂」に家事の合間を見ては足を運ぶようになり、大好きな本に触れる時間を得ることで、少しずつ自分を取り戻していく。

ぶくぶく堂で、女学生時代に愛読していた『イワンのばか』に再会し、その日本語訳を「心にススッと入ってくるんですよ」と店主に語っていたところにやってきたのが、その翻訳を担当した小山牛丸(イッセー尾形)当の本人である。珠が特に感銘を受けたというくだりを伝えると、それは原作に存在せず、小山が勝手に書き加えたという衝撃の事実が発覚、しかしそれによって、文芸の表現の自由さと面白さ、そして可能性の大きさをあらためて実感する、珠にとって大きな出会いのひとつであっただろう。

そんななか、保が実家からの仕送りが受けられなくなるという報せを受け、生活のために珠はレストラン「悠楽軒」でウエイトレスとして働くこととなる。朝ドラの世界では、主人公を取り巻くさまざまな登場人物との出会いや交流の場として自然な演出が行いやすいなじみの飲食店は多くの作品で有効な「装置」のような役割となることは多い。

「悠楽軒」も実在したレストランがモチーフとなっているようだが、出版社の近くにあるというシチュエーションから、作家や編集者の常連客が多い場となっている。秋山もその常連のひとりであり、売れ行きNo.1の文芸雑誌『首都公論』の編集長、黒崎(遠藤憲一)にも出会うこととなる。

「たいした度胸だ」と大笑いされつつ……

そんな環境である。当然珠はおおいに影響を受け、再び原稿用紙に向かい小説を書き始める。岩国を舞台にした女性教諭が主人公の半自伝的小説といっていいであろう短編小説を書き上げ、黒崎に読んでほしいと手渡す。

この大雑誌の編集長への大胆なアプローチは、当の黒崎にとっても驚きだったのか、「たいした度胸だ」と大笑いされつつ原稿は預かられる。

しかし、後日、「稚拙。つまらん」と辛辣な意見を突きつけられる。黒崎が「素人」と言う通り、珠はまだ何者でもない。視点を変えると、そんな何者でもない「素人」が書いた原稿を、当代きっての雑誌編集長が読む時間を割いて批評する。その事実が、珠の可能性を教えてくれている。もっと腹の中を見せろ、そう檄を飛ばしたのだった。

黒崎の忌憚のない感想に落ち込む珠だが、それを知った秋山は、それはよかったと言い、こう続けた。
「自分を信じられない人間にいい小説は書けない。何があっても自分を手放しちゃいけないよ」

秋山、黒崎、そして小山……わずか数回の間にこの先の珠の行く道に大きく影響を与えてくれそうな人物が次々と登場する。これらのエピソードは、宇野千代の実際の歩みにも近い。『首都公論』のモチーフであろう『中央公論』を出版する中央公論社は、珠と保が暮らす東京・本郷にあり、実際にウエイトレスとして働いたレストランもまた、その近くにあったものだ。

「油断してると無邪気に心をえぐりに来る瞬間があった……」

編集部で黒崎は、ふと珠の小説を思い出し、その稚拙ゆえの〝純粋〟な言葉に何かしら掴まれるものがあったことを認めていた。まだ芽吹いていない才能の片鱗を予感させ、しかもそれを見抜く存在がいる。ものづくりをする人間にとって、またはそれを描くものを楽しく享受する人間にとって、定番ではあるがなんともワクワクする、のちの大作家の誕生を予感させる演出である。

いっぽうで保との関係も日々を重ねることで少しずつ深まっていく。下宿先にも結局ふたりはきょうだいでないことがバレてしまうわけだが、誠実さを買われ、引き続き男女での同居を認められることになる。

そんななか、保はあらためて珠に思いを伝えるが、珠は「恋仲になったらきっと終わりが来る」だから怖いのだという。悪い噂で故郷を追われるというあまりにも辛い結末を迎えた珠が恋愛に身構えてしまうのは当然である。しかし保はそんな珠を強く抱きしめ、ようやく二人の思いは通じ合う。

そして数ヶ月後、珠の妊娠が発覚する。喜びととまどいのなか。新たな幸せを噛み締める。この先気になるのが、母として、妻としての生活が始まっていくことで、せっかく芽吹こうとした書き手としての才能はどうなっていくのか。もちろん史実はあるものの、作品内での珠はどういう選択をしていくのか。
「何があっても自分を手放しちゃいけないよ」

珠は「自分」を持ち続けることはできるのだろうか。秋山の言葉が余韻をもって響く。

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