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時計とスタイル:テーラー・平野史也のケーススタディ

  • 2026.11.1
1970年代の〈ロレックス〉の時計「キングマイダス」

サヴィル・ロウ仕込みの正装を、変わり種のドレスウォッチで崩す

英国のテーラーにとって、腕時計はごく自然な身だしなみ。「〈ロレックス〉の『サブマリーナー』や〈オメガ〉の『シーマスター』を着けているカッターも多くて。修業先のオーナー、サイモン・カンディは小ぶりな〈オーデマ ピゲ〉を愛用していました」と、平野史也さんはロンドンでの修業時代を振り返る。

そんな環境で最初に選んだ高級時計は、独立を機に購入した〈ジャガー・ルクルト〉の「レベルソ・デュオ」。ただ現在のスタイルを形作ったのは、〈カルティエ〉の「タンク マスト」。以来、選ぶのは薄型で小径の手巻き。シャツのカフに収まり、スーツの邪魔をしないことが前提だ。

右は、独特なケースが目を引く〈ロンジン〉。ネイビーの革ベルトに替え、針のブルーと合わせた。その左にある〈ヴァシュロン・コンスタンタン〉の2本は、対照的な造形。中央の「Ref.4418」は湾曲したラグが特徴。シンプルな左端のモデルは30㎜径と小ぶりなサイズ。

時計と革靴の色を合わせるのも、流儀の一つ。普段は黒靴が多いため、時計も黒いレザーベルトの出番が多い。ただし、何もかも律儀に揃えるわけではない。グレーのスリーピースに白シャツ、黒靴という隙のない装いなら、あえてアールデコ調の変わったケースデザインを選ぶ。

名古屋のビスポークシューズ工房〈ボレロ〉で作ったパンチドキャップトウ
名古屋のビスポークシューズ工房〈ボレロ〉で作ったパンチドキャップトウ。
テーラー・平野史也さんの首元
英国ではピンキーリングも紳士の装いの一つ。金属色はゴールド系で揃える。

ネイビーのスーツを身に纏(まと)ったこの日、選んだのは1970年代の〈ロレックス〉「キングマイダス」。

「惹かれたのはどこか普通ではない佇まい。クラシックなスーツの袖口に程よい違和感を添えてくれます」

装飾できる場所が少ない男性のスーツスタイルだからこそ、手元のわずかな違いがものをいう。時計もまた、仕立てのいい服と同じく、サイズとバランスが肝心だ。

1970年代の〈ロレックス〉「キングマイダス」。幾何学的なケースが印象的。

profile

平野史也(テーラー)

ひらの・ふみや/1985年愛知県生まれ。2013年にサヴィル・ロウの〈ヘンリー・プール〉に入社。15年に独立し、ロンドンで〈FUMIYA HIRANO BESPOKE〉をオープン。帰国後は東京・西麻布にアトリエを構える。

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