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「貧乏がうつる」高校時代、俺をかばった女子→約10年後、医師になった俺が再会すると「誰?」え?

  • 2026.11.1

高校時代、貧しい家庭で育った俺は、お下がりの制服を同級生にからかわれていました。そんな俺をかばってくれたのが、クラスで目立つ存在だったアサミ。しかし高校2年の終わり、俺は突然転校することになったのです。

「貧乏がうつる」俺をかばった彼女

高校2年生だったころ、俺は新聞店でアルバイトをしていました。

家はかなり貧しく、学校生活に必要なお金を用意してもらうだけでも大変な状況でした。修学旅行に参加する費用を出すのもやっとで、スマホも持っていませんでした。

そんな俺が、同じクラスの神谷アサミと親しくなったきっかけは修学旅行でした。

班別行動中、俺は班のメンバーとはぐれてしまいました。今になって思えば、俺と一緒にいるのが嫌で、わざと置いていかれたのかもしれません。

スマホがないため連絡も取れず困っていると、アサミが声をかけてくれました。

事情を話すと、

「じゃあ、一緒に回ろう! 私、小松田くんと話してみたかったんだ」

と言ってくれたのです。

アサミは明るく、勉強もできて、クラスでも目立つ存在でした。そんな彼女が修学旅行後も気さくに話しかけてくれるようになり、俺はうれしく思っていました。

当時、俺には学校とは別に取り組んでいる「課題」がありました。

新聞配達先に住む男性から渡されるもので、「戦争を終わらせるためにはどうしたらいいか」といった、簡単には答えの出ない問題ばかりでした。

配達を続けるうちに男性とは少しずつ話をするようになり、俺はその課題について考えることを楽しんでいました。アサミも興味を持ち、一緒に課題を見ることがありました。

しかし、そんな俺たちをよく思わない男子がいました。

ある日、教室でその男子が俺のお下がりの制服を見て、

「貧乏で制服が買えないって先生に泣きついたんだっけ?」

と笑いました。

さらに伸びた髪までからかわれ、最後には、

「こっち来るな、貧乏がうつる」

と言われたのです。

するとアサミが俺の前に立ち、

「やめなよ! 高校生にもなって、そんなこと言ってて恥ずかしくないの!?」

と怒ってくれました。

男子は「女に守ってもらってるとかマジでだせえな」と言い残して去っていきました。俺は助けてもらったことがうれしい半面、自分が情けなくて仕方ありませんでした。

体育倉庫で知った彼女の不安

高校2年生最後の日、俺はアサミに大切な話をしようと決めました。

「話したいことがある」

そう伝えると、人のいない体育倉庫で話すことになりました。ところが俺が話を切り出そうとしたとき、突然扉が閉まり、内側から開けられなくなってしまったのです。

俺は必死に助けを求めましたが、次第に呼吸が苦しくなってきました。幼いころ、お仕置きで押し入れに閉じ込められた経験があり、それ以来、暗くて狭い場所が苦手だったのです。

震える俺を見て、アサミは抱きしめ、

「大丈夫、大丈夫、きっと大丈夫。絶対大丈夫、明日はいい日だよ」

と歌うように繰り返してくれました。

その声を聞いているうちに、俺は少しずつ落ち着きを取り戻しました。聞いたことのない歌だったので尋ねると、アサミは、自分が不安になったときに歌っているだけだと教えてくれました。

そして、「完璧なんかじゃない。完璧なふりをしているだけ」と打ち明けたのです。

アサミと父親には血のつながりがありませんでした。母親の再婚相手で、とてもやさしい父親でしたが、いつも「いい子だね」と褒められるからこそ、いい子でなくなれば嫌われてしまうのではないかと不安だったそうです。

俺は、

「大丈夫。俺がキミの不安を全部食べてあげる」

と言い、「もぐもぐ」と食べるまねをしました。アサミは笑ってくれました。

その後、運動部の生徒が気付き、俺たちは無事に外へ出ることができました。そして俺が本当に伝えたかった話も、できないままになりました。

約10年後、別人の姿で再会

高校3年生になる春、俺は転校しました。

それから約10年。28歳になった俺は、高峰ナオキという名前で医師として働いていました。

勤めていたのは、養父が経営するクリニックです。

一方、アサミは父親の会社を手伝っていました。男性から声をかけられることも多く、初対面の男性には少し警戒するようになっていたそうです。

そんなある日、アサミの父親の会社の創立記念パーティーで、俺たちは再会しました。

アサミの父親は俺を、

「こちら、高峰ナオキ先生だ」

と紹介しました。

父親が俺の勤めるクリニックを利用することになった縁で、俺もパーティーに招かれていたのです。目の前に現れたアサミを見て、俺はすぐに彼女だとわかりました。

しかし、アサミは気付きませんでした。名字も違い、高校時代とは見た目も大きく変わっていたからでしょう。

思い切って、

「俺のこと覚えてる?」

と尋ねました。

ところがアサミは、以前カフェで話しかけてきた男性など、別の人と勘違いしていました。

俺が違うと答えると、

「じゃあ誰? ナンパみたいな手口で話しかけないでくれます?」

と警戒されてしまいました。

本当はその場で名乗るつもりでした。けれど、まったく自分に気付いていないアサミを前にすると、急に高校時代の自分を名乗るのが怖くなったのです。

ショックではありましたが、俺は少し安心していました。

高校時代の自分は、髪も伸び放題で、お下がりの制服を着ていました。そんなころの自分を覚えていないなら、それでもいいと思ったのです。

けれど俺は、アサミを一度も忘れていませんでした。

数週間後、アサミからクリニックへ連絡が入りました。39度の熱があり、自分で病院へ行くのもつらいというのです。俺は往診のため、彼女の家へ向かいました。

玄関でふらついたアサミをとっさに抱き留めた際、

「アサミちゃんっ」

と思わず昔の呼び方をしてしまいました。

診察を終え、休むよう伝えると、その日は両親が旅行中だったアサミが、

「ちょっと心細い……って言ったら笑う?」

と尋ねました。

その瞬間、10年前の体育倉庫を思い出し、俺は無意識に、

「大丈夫、大丈夫、きっと大丈夫……」

と、あの日の言葉を口ずさんでいました。

「え……?」

アサミがこちらを見ました。

俺は自分が何を口にしたのか気付き、慌ててその場を後にしました。後から聞くと、熱が下がってからも、俺が口ずさんだ言葉がずっと気になっていたそうです。

高校時代に自分が俺へ歌った言葉と同じだったことに加え、俺が思わず「アサミちゃん」と呼んだことも引っかかっていました。

それから数週間後、俺はアサミの父親の診察で再び家を訪れました。

そのときアサミは、俺が高校時代の小松田ではないかと確かめてきました。隠し通せるはずもありません。

俺が認めると、アサミは、

「やっぱり小松田くんだったのね!」

と言いました。約10年ぶりに、ようやく昔の俺だと気付いてもらえたのです。

突然消えた理由と初恋の真実

俺がなぜ突然転校し、名字まで変わったのか。きっかけは、高校時代に新聞配達先の男性と親しくなったことでした。

男性は、俺が提出する課題の答えを毎回熱心に読んでくれ、勉強を続けるよう励ましてくれていました。配達を続ける中で、学校のことだけでなく、家庭の事情についても話すようになりました。

その男性は医療機関を経営しており、妻との間に子どもがいませんでした。長く交流する中で、あるとき夫婦から、養子として迎えることを考えてみないかと話をされたのです。

もちろん、すぐに決めたわけではありません。

男性の妻や俺の両親とも何度も話し合いました。俺自身も悩んだ末、必要な手続きを経て、その夫婦の養子になることを決めました。

ちょうど養父の仕事の都合で引っ越す時期とも重なり、俺も一緒に転居することになったのです。高校2年生最後の日にアサミへ伝えたかったのは、このことでした。

一方、アサミも体育倉庫で俺と話した後、父親に自分の不安を打ち明けたそうです。

すると父親は、

「いい子じゃないときがあってもいい。アサミが間違えたら、パパが『間違えてるよ』って教える」

と言ってくれたといいます。

アサミは、父親に本音を話せたのは、体育倉庫で俺が「大丈夫」と言ってくれたことがきっかけだったと話してくれました。

俺にとっては、とっさに出た言葉でした。

それが約10年間、彼女の心に残っていたとは思いもしませんでした。

するとアサミは、

「どうして『同級生の小松田だよ』って言ってくれなかったの!?」

と怒りました。

俺が「高校時代の俺なんて、モサモサで貧乏でダサかっただろう」と言うと、アサミは強く否定しました。

「そんなことない!」

新聞配達先から出される難しい課題を、俺が楽しそうに解いていた姿がステキだったと言うのです。さらに、俺と一緒にいたくて、新聞配達が終わるころに待っていたこともあったと打ち明けました。

俺は驚きました。当時のアサミが、俺にそんな気持ちを持っていたとは思ってもいなかったからです。

俺も、ようやく言えました。

「俺も……好きだったんだ」

10年前、体育倉庫で言えなかった気持ちを、ようやく伝えることができたのです。

その後、アサミの診療は別の医師へ引き継ぎ、俺たちは医師と患者としてではなく、プライベートで会うようになりました。

やがて交際が始まり、数年後、俺からプロポーズしました。結婚を父親へ報告したとき、アサミは「パパが紹介したから好きになったんじゃない」と必死に説明していました。

「ずっと忘れられなかった人を、たまたまパパが紹介してくれただけ」

そう言うアサミに、父親は「それはそれで、ちょっと重いんじゃない?」と笑いました。

不安そうに俺を見るアサミへ、俺はまた、

「うん、大丈夫だよ」

と答えました。

まとめ

高校時代の俺は、アサミに助けてもらうばかりだと思っていました。しかし再会し、自分の何げない言葉も彼女を支えていたと知りました。これからも不安なときには、互いに「大丈夫」と言い合える関係でいたいと思っています。

※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

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著者:ライター ベビーカレンダー編集部/ママトピ取材班

ベビーカレンダー/ウーマンカレンダー編集室

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