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「模試D判定」から逆転合格! 【中学受験】で過去問を1月に始めた親子の全記録

  • 2026.10.31
cocreco写真:Hakase/イメージマート

「早く勉強しなさい!」と怒りたい気持ちをぐっとこらえる……。中学受験の伴走で、親がもっとも頭を悩ませる瞬間です。

藤井さん(仮名)の娘は、小学6年生12月の最後の模試まで第一志望がD判定、過去問に取り組み始めたのはなんと受験本番直前の1月でした。

それでも子どもを信じて見守り続け、無事に合格を摑み取ったリアルな体験談から、子どもの自主性を引き出す伴走のヒントを探ります。

佐野倫子(さの・みちこ)

東京生まれ、早稲田大学卒。現在、東京大学大学院情報学環教育部在学中。航空業界・出版社勤務を経て作家・教育ジャーナリストに。おもな著書に『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)。2人の男の子の母。現在中受伴走2周目中。

特待生で入塾 しかし5年生でやめた!

──まず、中学受験を考えたきっかけから教えてください。

藤井さん:新聞広告で、日能研の子どもの思考力を試すという無料テストを見つけました。そのときは、「無料なら受けてみようか」くらいの気持ちで。

テスト後、近所の日能研から電話がかかってきて、特待生として通えると言われたんです。「無料なら通う?」と娘に聞いたら、「行く!」と乗り気で。そこで4年生から、国語と算数の2科目だけ通い始めました。

──特待生とは、すごいですね! それなら期待が膨らみそうですが。

藤井さん:ところが5年生になるころには、成績は真ん中あたりになっていて、特待ではなくなっていたんです。それまで無料でしたから塾代がぎょっとするほど高く感じられ、一度やめてしまいました……。

当時は、そこまで中学受験をするつもりがなかったので。ただ、娘はマイペースでのびのびした子なので、高校受験で内申を取るのは苦労するかもしれないな、と。高校受験大丈夫かしらという気持ちはありました。

──なるほど。そこから、また中学受験塾に戻ったのはどうしてでしょうか。

藤井さん:ある日娘が「日能研、楽しかったから、また行きたい」と言い出したんです。5年生の秋ごろだったかな。それで通い始めました。でもこのころにもまだ志望校もひとつもなくて、本人も塾が楽しかったから通っているけれど「本当に中学受験するのかな?」くらいの雰囲気でしたね。

国語は偏差値70・算数40台

──通塾を再開してから、ご家庭ではどんなふうに勉強していましたか?

藤井さん:それが、家では本当にやらなかったんです! 私も仕事が忙しくて、塾でやっているだろうと思いノータッチ。模試の結果もあまり見ていなくて。たまに見ると、国語はとてもいいのに、ほかの3教科があまりにもできていないんですよね……。

日能研の模試では、国語は偏差値70くらい、算数は40~45くらいだったと思います。あまりに算数ができないので、「理科と社会をやめて2教科に絞り、その分算数に力を入れたほうがいいでしょうか」と塾で相談したこともありました。でも、受けられる学校が狭まると言われて、そのまま4教科の勉強を続けました。

──国語がそこまで得意ということは、普段から本が好きなお子さんでしたか?

cocreco写真:yamasan/イメージマート

藤井さん:大好きでしたね。『ハリー・ポッター』も1日で1冊読んでしまうし、国語辞典や漢字辞典をずっと眺めているような子で。

本人も「国語は崩れない」というのが強い自信にはなっていたと思います。

──算数は、何か対策をされましたか?

藤井さん:6年生になってからは、朝15分くらい、夫と娘で計算ドリルをやっていました。「筋トレね」と言って、2人で一緒に競争で解くんです。私は算数を教えられないので、そこは夫にお願いしていました。あれは振り返っても助かりましたね。

【より良い中受伴走のためのメモ】

成績表を見ると、親の目はどうしても「できていない科目」に向きます。でも、苦手の対策を考えるときにも、本人が好きなものは大切にしたいところ。

藤井さんの娘さんにとって、国語は点数を取れる科目であると同時に、塾に通い続ける楽しみにもなっていたようです。ここは大切にしたいポイントですね。

「娘に嫌われたくない」言いたい気持ちをこらえた理由

──とはいえ、家で勉強をしない姿を見ていると、親も落ち着かないですよね。「もっとやりなさい」と言いたくなることはありませんでしたか?

藤井さん:もちろんありました。でも言うと、喧嘩になるのが目に見えているし、言ったところで、この子はやらないんだなとわかっていたので。

結局は本人のやる気次第だと思っていたので、「やりなさい」と言わずに、ぐっとこらえていました。

cocreco写真:beauty_box/イメージマート

──こらえることはしんどかったと思いますが、何が支えになっていたのでしょう?

藤井さん:娘に嫌われたくない、という気持ちですかね。あと、自分が中学生、高校生だったころを思い出しても、親にあれこれ言われるのは嫌だったな、と。ちなみに夫は、私よりもっと言わない人です(笑)。

最後の模試もD判定 母が焦り始めたのは12月だった

──学校選びでは、どんなところを大切にしていましたか?

藤井さん:のびのびしていて、子どもが自分で考えたり、探究したりできる学校がいいなと思っていました。娘は1年生から英語塾にも通っていて、6年生の秋まで週1回、ずっと続けていたんです。それもあって、英語に力を入れている学校を探していました。

その英語塾の進学セミナーで知った共学校に惹かれて、第一志望になりました。でも、模試では12月の最後までD判定。併願先には、第一志望校と似たような教育方針が気に入っていた別の共学校を考えていました。

──12月までその判定だと、そこから何か変えたことはありますか?

藤井さん:私もさすがに「このままでは、まずい……」と思い、遅いとは思いますが冬休みにそれまでの模試を整理して、間違えた問題の解き直しを始めさせました。

過去問は私の準備が遅れに遅れていて、準備をし出したのが冬休み。本格的に解き始めたのは1月です……。

──なんと1月から! それは相当型破りですね(笑)

【より良い中受伴走のためのメモ】

1月まで過去問が手つかずだったというのはなかなか驚きですが、保護者が仕事をしながら塾の課題や過去問の進み具合まで把握するのは本来、非常に大変なサポートです。

「塾でやっているだろう」「本人はわかっているだろう」と思っていたら、実は手つかずだった、というパターンはよくあること。できれば過去問のスケジュールは何が進んでいて、どこで止まっているのかは、親子や塾で確認しておきたいですね。

「この問題文、面白いからママも読んで!」

──過去問を始めてから、印象的な出来事があったそうですね。

藤井さん:ある日、仕事中に娘から電話がかかってきたんです。とても珍しいので、どうしたのかと思ったら、「第一志望校の国語の問題文がすごく面白かったから、ママも読んでほしい!」って。

帰って読んでみると、確かに面白いんです。私もそれまではコピーして渡すだけで、出題された文章をちゃんと読んでいませんでした。

cocreco写真:akiko/イメージマート

──問題文が面白くて電話してくるなんて、娘さんの本好きという気持ちが伝わってきますね!

藤井さん:そうなんです! そして、この文章を出す学校を面白いと感じるなら、きっと娘に向いているんじゃないか、と直感的に思いました。それで、「あなたは、この学校に合っていると思うよ」と、学校のパンフレットもよく読むように勧めましたね。

記述が多い印象もあったので「パンフレットから学校の理念を理解して、学校の先生に自分がどういうことを考えている子なのかを伝えるつもりで記述を答えよう」と話したんです。そこから本当に本人のスイッチが入りましたね。

──模試の判定だけでは見えていなかった相性が、問題を通じてわかったのですね。英語を続けていたとのことですが、英語入試は考えなかったのでしょうか?

藤井さん:いえ、英検は準2級を持っていましたが、英語で勝負するほどではないかなと思い、そこは冷静に見極めて4科受験を選択しました。

【より良い中受伴走のためのメモ】

「この問題文、面白い!」という反応は、学校との相性を考えるうえで大切にしたい手がかりです。塾に相談するときも、「この判定で受かりますか?」に加えて、「この学校の問題で、うちの子が点数を伸ばすには、何から取り組めばいいですか?」と聞くといいですね。模試の判定では見えなかった、具体的な課題が見つかるかもしれません。

「私、受かった!」 からの初めて見た娘の号泣

──受験本番はどうでしたか?

藤井さん:2月1日は、午前に第一志望、午後に併願校。その結果次第で2日の受験校は考えようと、両校に出願してありました。

1日の第一志望の試験が終わって出てきた娘が、「私、受かった!」と言うんです。そうとう自信があったみたいで、本人はテンションが上がって、午後の試験までの間に公園に立ち寄って遊んだりして(笑)

ところがその夜、3人で合格発表を見たら、第一志望は不合格だったんです……。娘は号泣して、部屋にこもって、そのまま寝てしまいました。

それまでは、ずっとのんきなところがあって「絶対にここへ行きたい」と強く言っていたわけでもなかったので、あんな姿は初めてで。よほどショックだったんだなと思いましたね。

──午後の学校の結果はいかがでしたか?

藤井さん:そちらは合格していました。少しでも励ましたくて、朝に合格の画面をプリントして見せたのですが、すぐ元気にはなりませんでした。

2日の午前中に別の学校を受けることも検討しましたが、娘は1日午後に合格した学校の雰囲気や制服を気に入っていたし、家からも近かったので、そこへ進学してもいいな、と。それならチャンスがある限り第一志望を受け続けようと考えました。

──そして2日午後に、もう一度第一志望を受験されたんですね。

藤井さん:はい、2回目でなんとか合格をいただけました。今度の発表は、翌日昼間に私が一人で見ていて、思わず「ギャー!」と声を上げたら、娘が「何事?」という感じで(笑)。本当に大喜びでした。

【より良い中受伴走のためのメモ】

試験後の手応えと結果が違うことも、子どもが親の想像以上に傷つくこともあります。そんなとき、本人が気に入っている併願校の合格は、次の一歩を支えてくれます。藤井さん親子も、「ここへ進学できるなら」と思えたことで、第一志望への再挑戦を選べました。

cocreco写真:graphica/イメージマート

──振り返って、伴走するうえで大切にしていたのはどんなことでしょうか。

藤井さん:偏差値だけでは測れない何か得意なものを見つけてほしい、と思っていました。娘の場合は国語が得意だったので、そこで持てた自己肯定感を、絶対になくさないでいてほしかった。だから国語だけはキープさせようと、普段から、朝食時には一緒に新聞を読んだり、ことわざ慣用句問題集からクイズを出して遊んだりしていましたね。

───◆───◆───印象に残ったのは、過去問を読んだ娘さんが、その面白さをお母さんに伝えたくて電話をかけたこと。

受験が迫ると、過去問に対して親は「合格点まで、あと何点?」と思いがちです。でも、娘さんが伝えてくれたのは、「この文章、面白いよ」ということでした。その言葉を受け止めたからこそ、娘さんと学校との相性に気づいたわけです。

もちろん、Aさんも準備が遅れたと振り返っていました。親がどこで手を貸すかは、簡単には決められません。それでも、苦手なことに目を向けるばかりでなく、わが子が夢中になるものを一緒に面白がることはできます。

そんな時間も大切にしながら、伴走の日々を過ごせたらと思いました。

取材・文/佐野倫子

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cocreco『中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと』(講談社+α新書)著:佐野倫子
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