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「15分の深夜ドラマで観たい」「いい話」山奥の怪談話が、郵便配達員同士の心が通い合う友情物語に!?【作者に聞く】

  • 2026.10.29
ベテランの江藤さんには新人のアラタさんが 不気味に映っていたのかもしれない。 送達ねこ(@jinjanosandou)
ベテランの江藤さんには新人のアラタさんが 不気味に映っていたのかもしれない。 送達ねこ(@jinjanosandou)

「ああ、今日はいいお話を読んだなあ……」「今回はいつにも増して幾重にも深い話」「15分くらいの深夜ドラマで観てみたい」。そんな感想が寄せられた漫画がある。現役郵便局員の送達ねこ(@jinjanosandou)さんが描く「山に棲む」は、郵便配達員が実際に体験した不思議な出来事をもとにした物語だ。山奥で出会った奇妙な存在と、その先に待ち受ける出来事とは? 読者の心を揺さぶった作品の背景を、作者に聞いた。

踏み外せば谷底…山奥の配達先で目撃した着物姿の少女

その先に民家があれば郵便局員はどこまでも行く 送達ねこ(@jinjanosandou)
その先に民家があれば郵便局員はどこまでも行く 送達ねこ(@jinjanosandou)
山に棲む_P02 送達ねこ(@jinjanosandou)
山に棲む_P02 送達ねこ(@jinjanosandou)
「杖」は足腰のために持って行くのではなかった! 送達ねこ(@jinjanosandou)
「杖」は足腰のために持って行くのではなかった! 送達ねこ(@jinjanosandou)

山深い細道の先に民家がある限り、郵便配達員は手紙を届けなければならない。バイクすら入れない場所を担当することになった、郵便配達員のアラタさん。都会育ちの彼がまだ新人だったころ、教育係の江藤さんに連れられて、一般車両進入禁止の道の先にある集落へ向かった。

「こっからは歩きだ。上まで杖をついてく」と告げる江藤さんに、若いアラタさんは杖を断る。すると「足腰じゃねえよ!蛇追っ払うんだよ!誰がジジイよ!東京もんは何も知らねえ」と怒鳴られ、慌てて謝ることに。その道中、アラタさんは着物姿のおかっぱ頭の少女を目撃する。しかし、その直後に江藤さんに緊急事態が発生し、少女のことを気にしている余裕はなくなってしまう。山奥で見たあの少女は、一体何者なのか。

わからないものの恐怖は、愛に変わることもある

本作の主人公アラタさんは、おとなしい青年だ。そんな彼を、教育係の江藤さんは当初、怖がっているようにも見える。人が何かを恐れる理由について、送達ねこさんは「“わからない”ものへの感情もあるのでは?」と考えている。

人は自分の身を守るために情報を集める。そのなかで理解できないことに出合うと、恐怖を感じるのではないかという。「だから別に霊じゃなく対人でも『よくわからない人だから怖い』とかあると思うんですね」と作者。怖いから避けたり、身を守るために攻撃したりする姿は、相手を嫌っているようにも映る。だが、実際には単に相手のことがわからないだけなのかもしれない。

一方で、未知の存在との出会いには、自分に足りないものを補うきっかけが隠れていることもあるという。「だから『怖い』と思った相手を理解しようとすると劇的に仲良くなったりする。よい相方になることもある」と送達ねこさんは語る。理解できずに距離を置いていた相手も、知ろうとするうちに、本当は必要としていたことや、惹かれていたことに気づく場合があるのだ。

「相手を理解しようとすることは愛の本質にとても近い行為だと思います。だから『怖い話』は案外に『愛の物語』になったりすると思います」

恐怖を入り口にしながら、人と人との関係にまで目を向ける。読者から「いい話」「深い話」といった感想が寄せられたのも、こうした物語の奥行きがあるからだろう。

昭和の田舎に伝わる怪談と、絵のインパクトにも注目!?

送達ねこさんによると、本作には「昭和の田舎の怪談」も盛り込まれているという。「祖父から父、父から子へと語り継がれている怪談」として楽しんでほしいと話す。

本作を含む「郵便屋が集めた奇談」は、作者のもとに届いた、同僚の配達員たちが体験した不思議な話を漫画にしたシリーズだ。実際の体験をもとにした怪異譚だからこそ、山奥の風景やそこで起こる出来事にも、独特のリアリティーが漂う。

さらに、読者の注目を集めたのは、物語だけではない。作中の江藤さんの絵に対しても、「遠d…江藤さんの絵が強すぎて全く話が入ってこないので3回読み返しました(笑)」というコメントが寄せられた。背筋がひやりとする展開を追いながら、思わず笑ってしまうような絵のインパクトにも注目したい。

恐怖とユーモア、そして人を理解することの大切さ。山奥での不思議な体験を描いた「山に棲む」は、読み終えたあとにも心に残る作品となっている。

取材協力:送達ねこ(@jinjanosandou)

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