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エルヴィスの名曲274曲を無断学習か、AI企業に巨額訴訟

  • 2026.10.25

「キング・オブ・ロックンロール」ことエルヴィス・プレスリーの楽曲の権利者が、対話型AI「Claude(クロード)」を開発する米AI企業Anthropic(アンソロピック)を提訴した。訴えによると、無断でAIの学習に使用されたとされる楽曲は、「好きにならずにいられない」などの名曲を含む274曲にのぼる。(フロントロウ編集部)

1曲15万ドル、総額約4,100万ドルを請求

訴訟は現地時間2026年10月23日に起こされた。原告には、エルヴィスの楽曲カタログや名前・肖像に関する権利の多くを管理するライセンス大手、オーセンティック・ブランズ・グループ(ABG)の関連会社のほか、エルヴィスの楽曲の権利を保有する複数の団体が名を連ねている。

訴状に記載された楽曲は、「好きにならずにいられない(Can’t Help Falling in Love)」「冷たくしないで(Don’t Be Cruel)」「恋にしびれて(All Shook Up)」「ア・リトル・レス・カンヴァセイション(A Little Less Conversation)」といった代表曲から、あまり知られていない楽曲まで計274曲。原告側は、著作権を侵害された楽曲1曲につき15万ドル、総額約4,100万ドルの損害賠償を求めている。

原告側の主任弁護士リチャード・ブッシュ氏は訴状のなかで、「エルヴィス側の原告は、前例のない規模の著作権侵害を基盤にビジネスモデルそのものを構築した被告に対し、独占的な権利を行使するためにこの訴訟を起こした」と主張。さらに、「エルヴィス側の原告は、これらの象徴的な楽曲を守ることに強い決意を持っている」と記した。

訴状ではさらに、Anthropicが訴訟を受けて「ガードレール(安全対策)」を設けたとされる後も、Claudeが既存の楽曲の構成や印象的なフレーズをほぼそのまま再現する出力を続けていると主張。AIが楽曲を無断で使用し、「無許諾の二次的著作物」を生成しているとの立場を示している。

アーティストの権利者による初期の大型訴訟のひとつ

AI企業をめぐっては、これまでもユニバーサル・ミュージックをはじめとする音楽出版社やレコード会社、アメリカレコード協会(RIAA)が訴訟を起こしてきた。しかし、特定のアーティストの遺産を管理する権利者側がAI企業を相手取った大型訴訟としては、今回が初期の事例のひとつとなる。米Billboardは、個々のミュージシャンの権利を代表して起こされた訴訟として、これまでで最も注目度の高い事例だと伝えている。

なお、ブッシュ氏は音楽の著作権訴訟で知られる弁護士だ。2000年代にはエミネムの代理人としてデジタル配信をめぐる訴訟を手がけ、その後はロビン・シックとファレル・ウィリアムスのヒット曲「ブラード・ラインズ」が、マーヴィン・ゲイの「Got to Give It Up」の著作権を侵害したとする訴訟で、ゲイの遺族側を担当。賛否を呼んだ裁判で勝訴を勝ち取った。

Anthropic側の主張は?

米Billboardが現地時間10月24日にAnthropicへコメントを求めたものの、すぐには回答が得られなかったという。今回の訴訟に対する同社の具体的な反論は、現時点では報じられていない。

一方、AI業界ではこれまで、既存の著作物をAIの学習に使用する行為は、著作権法上の「フェアユース(公正利用)」に該当すると主張してきた。Anthropic自身も、ユニバーサル・ミュージックなどの音楽出版社から歌詞の無断使用を理由に訴えられている別の訴訟で、2026年4月に裁判所へ提出した書面のなかで、歌詞の学習は「変容的(トランスフォーマティブ)」な利用にあたり、Claudeは歌詞や音楽とは無関係な用途にも幅広く使用される汎用モデルだと反論している。AIの学習がフェアユースに該当するかどうかは、数十件にのぼる訴訟で争われており、法的な判断が定まっていない論点となっている。

AIと音楽をめぐっては、AI生成楽曲をボットで不正に再生させた男性に実刑判決が下されるなど、さまざまな問題が浮上している。音楽史に名を刻むエルヴィス・プレスリーの名曲をめぐる今回の訴訟も、今後の行方が注目される裁判のひとつとなりそうだ。

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