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“おもてなし大国”のツケ…カスハラ&正当なクレームの違い分からず 怒りの根っこにある“客の心理”

  • 2026.10.24
カスハラと正当なクレームの違いとは?(画像はイメージ)
カスハラと正当なクレームの違いとは?(画像はイメージ)

カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)は、いまや社会全体の問題として取り上げられるようになりました。「おもてなし」が当たり前だった接客文化のツケで客側の期待が過剰となった結果、店舗で働く従業員が理不尽な要求や暴言を受けるケースは珍しくありません。

こうした状況を受けて法律が改正され、2026年10月1日からは、カスハラを防ぐために必要な雇用管理上の措置を講じることが企業などの義務となっています。もちろん、客の中には正当なクレームを主張するケースもあり、言動が強いからと言ってすべてをカスハラとして処理するのは適切ではないでしょう。

そこで、今回は『マンガでやさしくわかるカスハラ対策』(吉村園子著、西野肇監修、日本能率協会マネジメントセンター)を紹介します。本書は、カスハラ対策の義務化に合わせて発売された入門書です。

正当なクレームなのかカスハラなのか

本書には、本間という主人公が登場します。本間は、会社からカスハラ対策の体制づくりを任されたものの、何から手をつければよいか分かりません。そこで出会うのが、接客のプロでありながらもう1つの顔を持つ小料理屋の女将、さゆりです。

本間が女将に教わりながら対策の基本を身に付けていく過程を、漫画と図解で追う構成になっています。監修は弁護士で、法改正の内容も押さえられています。

本書の出発点は「どこからがカスハラなのか」という問いです。研修の場で現場の方々と話していると、対策に乗り出した企業でさえ、ここで迷っています。「目の前の客は正当なクレームを言っているのか、それともカスハラなのか」という判断が現場の個人に委ねられたままでは、どんなマニュアルも機能しません。

「カスハラ」を6つのタイプに分類

本書の特徴は、カスハラを「対処する」前に、客側の怒りの構造を理解させるところにあります。怒りの根っこにはどんな感情があるのか、慢性的なストレスがどう怒りを強めるのか、怒りにもポジティブな目的があるとはどういうことか。

客側が強い口調で話してきたとき、接客する側は一瞬で緊張し、早く解決しようと事実確認を始めたり、とりあえず謝ったりします。

しかし本書によれば、客側はまず話を聞いてほしい状態にあり、感情に寄り添うところから始めるのが初動の基本です。この初動対応が4つのステップで示されています。

実践編では、カスハラを6つのタイプに分けています。「正しさ」が暴走する正義感教育タイプ、「守られるはず」が崩れた権利擁護タイプ、「特別扱い」が当たり前になった過度なサービス要求タイプ、怒りの矛先がすり替わるストレス発散タイプ、人が標的になるパーソナルアタックタイプ、そして支配タイプ。

タイプごとに心理的な背景と対応策が示されており、相手の怒りがどこから来ているかで対応を変える、という発想が貫かれています。

会社が対策を決めて現場の従業員を守る

本書が終盤で扱うのは、それでも防ぎ切れないケースです。退避すべき危険サインを見逃さないこと、守るための連携としてのエスカレーション、専門家へつなぐタイミング。

そして最後の章の題は「マニュアルとは現場で迷わせないための基準」です。ここに本書の立場がよく表れています。

SNSで発信する手段を手にした客側と、断ることに慣れていない現場。この組み合わせが要求を押し上げてきました。おもてなしの精神を、線を引く仕組みのないまま現場に背負わせてきたことが問題なのです。

本書を読んでもらいたいのは、店長や現場責任者として、日々スタッフから「これはどうすればいいですか」と聞かれる立場の人と、カスハラ対策を整えたはずなのに、正当なクレームまで門前払いになっていないかと気になっている経営や管理部門の人です。

まず、線を引く仕事を現場の一人一人に背負わせるのをやめることが肝要です。「ここから先は応じなくていい」を、会社が決めて、会社が守ることです。

「おもてなしは、現場の社員や店員が壊れてまでやるものじゃない…」というのが私の考えですが、あなたはどう思いますか。

コラムニスト、著述家 尾藤克之

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