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“戦争”をテーマにしながらもシリアスと笑いの緩急で上質なコメディに/劇団SET『愛と友情の大脱走』稽古場レポート

  • 2026.10.23
劇団スーパー・エキセントリック・シアター第64回本公演 ミュージカル・アクション・コメディー『愛と友情の大脱走 〜ラブ&ピースフォーエバー〜』稽古場の様子 width=
劇団スーパー・エキセントリック・シアター第64回本公演 ミュージカル・アクション・コメディー『愛と友情の大脱走 〜ラブ&ピースフォーエバー〜』稽古場の様子

三宅裕司、小倉久寛らを中心に創立された劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET/エスイーティー)。第64回本公演は、アメリカ出身で俳優・ナレーター・MCとして活動するブレント・オリアンをゲストに迎え、新作『愛と友情の大脱走 ~ラブ&ピースフォーエバー~』を上演する。公演を前に行われた通し稽古の様子をお届けする。

【写真】ゲスト出演のブレント・オリアンもすっかりSETになじんだ様子

◆シリアスと笑いの緩急はさすが! SETならではの上質なコメディに

この日は初の荒通しということで、開始前に演出の三宅が中心となって修正箇所を確認。緊張感もありつつ、セリフのニュアンスや動きの確認中も良い芝居や面白い場面があれば笑いが起きる。和気あいあいとした雰囲気の中で通しがスタートした。

本作の舞台は、ベトナム戦争を受けて日本で反戦運動が起きていた1960年代。ベ平連(ベトナム平和維持・連絡市民団体)の事務所に、脱走兵・トミー(ブレント・オリアン)が逃げ込んでくることから物語が動き出す。

トミーの脱走を手引きした人気歌手の恋人・桜木蘭子(良田麻美)、トミーを無事に逃すために奔走するベ平連のメンバーたち、それを手助けする人々、国の威信やプライドをかけてトミーを捕まえようとする日米の軍・警察関係者たち。

それぞれの事情や思惑が絡み合い、思わぬ事態に――。

こう書くと、戦争をテーマにした重たい話だと思うかもしれない。 だが、劇団SETは分かりやすくて誰もが楽しめる“ミュージカル・アクション・コメディー”を半世紀近く作り続けてきたカンパニー。本作も、歌やダンス、アクション、笑いをふんだんに取り入れつつ、ホロリと泣ける上質なコメディに仕上げている。

英語と日本語でコミュニケーションを取ろうとしてすれ違いによって生まれる面白さ、個性豊かなキャラクターたちの言動、各キャラクターが大切にする価値観や生き方など、冒頭からシリアスと笑いの緩急が抜群だ。また、前線に出る兵士たちの苦悩、各国の思惑、国同士の関係を知ることで、単純に「戦争は良くない」で終わらず、それぞれの立場や理想について自分なりに考えることができる。 若い世代の中には「ベ平連」や「ヒッピー」に馴染みがない人も多いだろう。だが、芝居を通してどんな考えを持つ団体か掴むことができ、歴史に関する知識に自信がなくても楽しめるのでご安心を。

トミーと蘭子のロマンスは、微笑ましくも切なく、応援したくなる。愛国心と戦争に対する恐怖、蘭子への愛といったトミーの気持ち、生い立ちが丁寧に描かれているため、観ている方も自然と彼を好きになるはずだ。歌手として成功しながらもトミーのために危険な橋を渡る蘭子の愛と覚悟に共感したり、憧れを覚えたりする方もいるのではないだろうか。

◆三宅裕司&小倉久寛の掛け合いに稽古場も笑いの渦

ベ平連の新人メンバー・猛(白倉基陽)と智規(長谷川慎也)の成長と友情、彼らを取り巻く人々の物語も見応えがある。 勉強はできないが人懐っこく行動力がある猛と、理想に囚われがちな東大生・智規が価値観の違いでぶつかりながらお互いを理解していく姿は、少年漫画のような王道の熱さがある。

蘭子と一緒にグループ活動をしているさゆり(丸山優子)・桃子(白土直子)の友情、マネージャーとして彼女たちを支える堤(栗原功平)、若者たちを見守る大人の愛情。ベテランキャストは笑いを担っている場面も多いのだが、締めるところをきっちり締め、作品の土台を作っている。人生についてきちんと考えて生きてきた年長者らしい言葉を届けるキャラクターが複数いることで、作品に深みと温かさが生まれていた。

トミーやベ平連を応援していると「敵」のように見える警察や軍も、ユーモラスで憎めない一面を持つキャラクターとして魅力的に描かれている。メインどころからちょっとしたキャラクターまで一人ひとりが愛すべき人間として存在しているため、本番までの稽古を通してさらに磨かれていくのが楽しみだ。

そして、お決まりになっている三宅と小倉のシーン。小倉演じるヒッピー村の村長のとぼけた言動に三宅演じるベ平連のメンバー・永井が翻弄され、噛み合わないやり取りで笑いを生み出している。……と思いきや、いつのまにか三宅がイニシアチブを取っている状態に。本番さながらのコミカルで意気のあった芝居が繰り広げられ、カンパニーメンバーからも大きな笑い声が上がる。二人の掛け合いの面白さが味わえるのはもちろん、全員がこの作品を楽しんでいる様子が伝わってきた。

村長と永井のシーンはとてもユーモラスだが、ここからラストに向けて怒涛の勢いで物語が展開していく。戦争の不条理さの中で個人に何ができるかを考えさせられるが、人と人とのつながりによって生まれるポジティブなエネルギーに希望を抱くこともできた。

コミカルだが骨太な物語に加え、華やかな歌やダンス、アクションも大きな見どころ。人気歌手として活動する蘭子・桃子・さゆりはアイドルらしい王道ポップソング。ヒッピー村の人々はフォークソング、トミーの逃走を助けてくれる漁村の人々は威勢の良い民謡風の楽曲と、場面ごとに曲調やパフォーマンスがガラッと変わるのも楽しい。場面の転換、各コミュニティのカラー、キャラクターの心情などが一瞬で伝わるため、音楽が持つパワーも改めて感じることができる。

アクションパートは緊迫感のある駆け引きが見応え充分だ。若手からベテランまで入り乱れた熱いシーンに、ハラハラドキドキしながら展開を見守ってしまうはず。

トミーと蘭子のロマンス、脱走劇の結末、周囲の人々のドラマをぜひ劇場で見届け、そこから多くのメッセージを受け取ってほしい。

(取材・文:吉田沙奈)

劇団スーパー・エキセントリック・シアター 第64回本公演『愛と友情の大脱走 ~ラブ&ピースフォーエバー~』は10月29日~11月8日東京・サンシャイン劇場で上演。

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