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なぜMotoGPマシンは車高を下げると速くなるのか? 青木宣篤が体感したライドハイトアジャスターの驚くべき効果

  • 2026.10.22

※この記事は2022年に掲載した記事をもとに、内容を一部再編集して公開しています。ライドハイトアジャスターの採用状況やMotoGPのレギュレーション、技術に関する記述は取材当時の情報に基づいています。

MotoGPマシンは、加速時に車高を下げることで、さらに速く走ることができる。その秘密が「ライドハイトアジャスター(RHA)」だ。エンジンパワーを抑えることなくウイリーを防ぎ、より早くスロットルを全開にできるという。元MotoGPライダーの青木宣篤が、スズキGSX-RRで実際に体験したその効果とは? 元ヤマハのエンジニア・辻井栄一郎による解説とともに、車高と加速性能の意外な関係に迫る。

【青木宣篤】

「なってみた」どころか、言わずと知れたリアル元MotoGPライダー。現在も折に触れてスズキのMotoGPマシン、GSX-RRをテストで走らせている

車高を下げるだけで加速が変わる? ライドハイトアジャスターの絶大な効果

2022年当時、MotoGPで大きな話題となっていたライドハイトアジャスター(以下RHA)。

2021年シーズン中には各メーカーとも、走行中にリアサスペンションを縮めて車高を下げるRHAを採用していたが、2022年のマレーシア公式テストでは、ドゥカティがフロントサスペンションも縮めていることが確認された。

MotoGPでは電子制御サスペンションが禁止されているため、機械的な仕組みだ。ライダーが何らかの操作をしてサスペンションを縮め、一定の条件で機械的に解除される。

実は私は、スズキのMotoGPマシンGSX-RRでリアのRHAを体験している。

ウイリー抑止効果は想像以上だった。

ウイリーコントロールやウイングレットがあっても、急加速時には浮いてしまう前輪が、確実に浮きにくくなる。

ウイリーコントロールは作動するとパワーを間引いてしまうので、どうしても加速は鈍る。だが、RHAにはそういう「副作用」がない。

そしてRHAなしの時より、確実に早くスロットルを全開状態に持ち込める。

ただ、レース中にRHAを操作するのはかなり大変そうだ。

リアだけならまだしも、フロントも、ということになると、相当に煩雑だろう。

実際、2022年当時はこうした装置の禁止論も浮上していた。

プロフェッサー辻井栄一郎が解説するライドハイトアジャスターの仕組み

【Professor辻井栄一郎】

元ヤマハのエンジニア。大学客員教授経験もあり、ニックネームは「プロフェッサー」

ウイリーを抑える狙いに対し、加速時に車高を下げるライドハイトアジャスターは、もっとも効果的な仕組みです。

ウイリーコントロールさえ過去のものとしてしまうぐらい絶大でしょう。

通常の重心の高さでは、1G以上の加速をするとウイリーしてしまいます。

しかし重心が下がれば、1.3〜1.5G近くの加速が可能となります。

あまりに劇的な効果なので、そのうち禁止になるかも……。

車高を下げると、なぜウイリーしにくくなるのか?

重心位置は、バイクの基本特性を司る非常に重要な要素です。

下の図は、通常の重心位置のバイクで加速している状態を示しています。

加速度(後ろ向きの矢印)と、重力(下向きの矢印)の合力(斜めの矢印)に注目してください。

合力の延長線上に後輪の接地点があるため、ぎりぎりウイリーしていません。

加速が弱いほど合力の延長線は前方寄りになり、強いほど後方寄りになります。

後輪の接地点よりも後方寄りになった時、後輪がグリップしているとウイリーします。

もし後輪がスピンすると加速度が低下するので、ウイリーはしません。

当時のミシュランは特に後輪のグリップが強いとされていたため、よりウイリーしやすい特性と言えます。

車高が下がり、重心が下がると、同じ加速度でも合力の延長線が後輪の接地点よりも前方寄りになります。

つまり、加速力をキープしたままでもウイリーしない。

それどころか、ウイリーしづらくなっている状態なので、さらに加速力を高めることが可能となります。

車高を下げることは、非常に高い効果を発揮する「劇薬」なのです。

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