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猫のスゴイ能力/教えて! 猫博士。Vol.1

  • 2026.10.22

「猫はただかわいいだけじゃない。実は、驚くようなポテンシャルを持っているんです」。知っているようで、意外と知らない!? 猫の秘めたる能力を、動物学者の今泉忠明先生が解説。

聴力は人間の3倍以上。ネズミの歌が聞こえている!

元来、ハンターである猫は、獲物である虫の羽音や小鳥のさえずり、ネズミなどの鳴き声、動くを聞くために高い音域の聴力が発達しています。

人間の可聴域は約20〜20,000Hz、猫は約60〜63,000Hzなので、高い音に関しては人間の3倍以上、猫は聞く能力に長けているのです。妊娠中の猫や子どもがいる母猫はさらに聴覚が敏感になり、95,000Hzくらいまで聞こえているともいわれますから、すごいですよね。

また、猫は耳介筋という筋肉が発達していて可動域が270度ほどあり、広範囲の音を聞き取ることができるのも強み。時々、猫は何かの気配を察知してある場所を凝視している時がありますが、きっとネズミの歌声とかゴキブリが動く音とか聞いているのでしょう。決して霊的なものをキャッチしているわけではないからご安心を。でも、ネズミとかゴキブリがいると思うと、安心はできませんね(笑)。

ニオイは生きるための情報源。トイレもすぐに覚えちゃう

猫の嗅覚は人間の20万〜30万倍といわれています。もっとも、犬は人間の100万〜1億倍なのですが(笑)。それは、犬は猫よりも鼻面が長く、球粘膜というニオイを感じる細胞がたくさんあるからなのです。とはいえ、猫だって十分鼻が利くんですよね。外出していて家に帰宅すると、飼い猫は買ってきたものや飼い主のニオイを嗅ぎにきて、スリスリとしますよね? それは、ニオイから外の情報を得ていると同時に、スリスリすることで自分のニオイをこすりつけて、上書きして、安心しているのです。

ところで、猫は小さな子猫でもすぐにトイレを覚えますよね。実はこれはすごいことなんです。でも、なぜすぐに覚えられるのか。

最近、南米で行われたヤマネコの調査で、オセロットやジャガランディ、マーゲイというヤマネコは、ラトリスという共同トイレを利用していることが判明したのです。もともとネコ科の動物は単独生活者で、トイレはマーキングのために転々とするものと思われていました。でも、共同トイレを使って、排泄物のニオイから他の個体のさまざまな情報を得ていて、互いを意識する社会性があることがわかったのです。そのDNAがイエネコにもあるから、大事な情報交換の場であるトイレを自然と覚えるという説明がつく。猫のトイレは人間のSNSのような存在であり、ニオイは大切な情報源なのです。

動体視力と暗い場所での視力には長けてます!

動いていないものを判別する猫の視力は、0.1〜0.2程度。決していいとは言えません。だけど、動いているものに対しては非常に敏感。動体視力はとても優れていて、人間の約4倍といわれています。景色はぼんやりとしていても、その中で動いているものはくっきりと見えていて、しっかりと獲物をキャッチできるのです。

そして、猫は暗闇でもものがきちんと見えているという点も特徴的。それはタペタムという目の奥の反射板が、わずかな光でも増幅する作用があるため、真っ暗な中でも自由に動き回って狩りをできるのです。

持久力はないけれど、瞬発力には自信アリ

身体を動かす筋肉には、収縮速度が速く俊敏ではあるけれど疲労しやすい白色筋と、収縮速度は遅いけれど繰り返し運動に優れ、持久力がある赤色筋の2種類があります。猫は白色筋が多く、狩りは忍び寄って、最後の瞬発力で獲物を仕留めるタイプ。犬は赤色筋が多く、狩りは長い間追いかけて、相手がくたびれたところを捕まえるタイプです。

これまでにイエネコが最高時速48キロで走ったという記録があるのですが、それはウサイン・ボルトよりも早いことになります。でも、猫は全速力でせいぜい20メートルくらいしか走れません。一気に加速する瞬発力はものすごいけれど、持久力がない。それで獲物を捕まえられなければ、諦めちゃうんですよね。でも、そもそも時速48キロという記録も、本気出したのかどうか…。人間は金メダルのために必死で走りますけど、猫はそんなことは関係ないですから。実はもっと速く走れる可能性を秘めているんですよね。

ちなみに、白色筋が多い猫はジャンプ力にも優れていて、助走なしで2メートルくらいの垂直ジャンプができます。自分の体長の4、5倍くらいの高さを軽々と跳べちゃうんです。

知能は人間の2歳児くらい。いや、それ以上!?

猫は人間の行動を観察していて、器用にドアや引き出しを開けたり、ごはんやおやつなどの言葉に反応したり、時には嫌がらせをしたり。その知能はゴリラやチンパンジー、オラウータンなど類人猿の次、ニホンザルと同じくらいのランクで、哺乳類の中でも高いほう。人間の2歳児くらいの知能はあると言われています。

でも、僕はそれ以上あるんじゃないかと思っています。猫は犬のように人間に従うタイプじゃないし、気位が高くてスンとしているから、その本心はわからないけれど。わかっていても反応をしないだけで、実はいろんなことを理解している気がするんです。

(猫の魅力を専門家が解説する連載「教えて! 猫博士。」は毎月1回更新! 次回は11月上旬に公開予定です)

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今泉忠明さん

動物学者。1944年生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業後、動物学者の父に誘われ、国立科学博物館所属の特別研究生として哺乳類の生態学、分類学を学ぶ。上野動物園動物解説員、伊豆高原ねこの博物館艦長などを歴任。著書も多数。

イラスト・HONGAMA 取材、文・野尻和代

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