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小瀧望「表現、パフォーマンスは僕の根底にあり続けるもの」 ”これ以上ない”30代に向けて自分史上最難関の舞台に挑む

  • 2026.10.18
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小瀧望 クランクイン! 写真:米玉利朋子(G.P. FLAG inc)

映画、ドラマでの活躍はもちろん、読売演劇大賞 杉村春子賞や優秀男優賞を受賞するなど、舞台でも高い評価を受ける小瀧望。井上ひさしの幻の戯曲『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』で好演を見せた彼が、この秋上演の『ロックンロール』で新境地に挑む。稽古開始前の小瀧に、「僕史上最難関」と語る本作の魅力、そして7月に30歳を迎えた心境などを聞いた。

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◆“恩人”小川絵梨子との再タッグに気合十分!

イギリスの劇作家トム・ストッパードが祖国チェコスロヴァキアを舞台に、22年間の歴史的情勢のうねりも描きながら自由の尊さをうたう本作。愛するロックンロールと母親を守るためソ連軍の侵攻に揺れる祖国への帰国を決意するケンブリッジ大学の留学生ヤンと、ヤンの大学教授であるマックスの対照的な信念を持つ2人を中心に、激動の時代を生きる姿を描く。

劇中では、ローリング・ストーンズやピンク・フロイド、ボブ・ディラン、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドなど実在した著名なアーティストの楽曲が鳴り響き、弾圧に屈することなく現在も活動を続けているチェコスロヴァキアの伝説的なバンド、ザ・プラスチック・ピープル・オブ・ザ・ユニヴァースの音楽も物語のキーとして登場する。

演出は、小瀧とは舞台『検察側の証人』以来のタッグとなる小川絵梨子。共演に村川絵梨、大鶴佐助、上口耕平、那須佐代子、吉原光夫ら実力派キャストが顔をそろえる。

――今年2作目の舞台出演となる本作。オファーを聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?

小瀧:小川さんともう1回ご一緒できるということでぜひ!と。その時は概要しか聞いていなくて、まさかこんなに難しい作品だとはごくごく最近知りました。

小川さんとの出会いは僕の人生において大きな転機でした。小川さんの演出での引き出し方や引っ張り方がすごく自分の性格に合ったんだと思うんです。「まだまだ足りてないよ」「もっともっと」と言われて、当時は「どういうこと!?」となりましたが、稽古動画を見ると「まだまだ表現できていなかったんや」と一目瞭然で。「稽古動画を見て分かることもめちゃくちゃあるな」「これは確かに足りてないわ」と思ったんですよね。それでもやっぱり徐々にしかエネルギーを出せなかった自分を諦めずに引っ張り続けてくれた、その懐の深さに魅力を感じますし、本当にはっきりした性格の方なので僕はすごく好きなんです。

僕の表現者という五角形をグッと広げてくれた人で、僕自身まだまだ未熟ですけど、感謝せざるを得ない人ですね。『うま』を観に来てくださった時に褒めてもらえましたが、それで調子に乗らないように真摯に作品に向き合います。

――実際に台本を読まれての印象はいかがでしょう。

小瀧:「なんじゃ、こりゃ!」って。「どういうことだ?」「どこで急にこうなった?」というのが結構多いなと。それは多分装置や照明、演出で分かりやすくなると思いますが、細かいところを見落とすと、「ちょっと待って!」「説明をしてくれ!」みたいなところも多いクセのある作品だと思います。でもそれがこの作品の魅力であるというか。また1つステップアップできる作品が目の前にあるんだなという印象です。

文字で見ていると「この人たちは何がしたいんだ?」と感じる部分も多いんですけど、やっぱり役者の声で聞くと、「なるほど」「これってこんな笑えるシーンなんや」というのが、経験上より立体的に感じられるんですね。なので稽古が始まってご一緒する皆さんの声で聞くのが本当に楽しみです。

◆素朴と真っすぐな部分は自分とも重なる

――演じられるヤンとご自身の共通点はありますか?

小瀧:素朴で真っすぐみたいなところは、自分とすごく重なる部分かなとも思います。

でも、ただ単にロックが好きで、「ロックこそ自分の生きがい!」みたいなことを、果たしてこの時代に自分がヤンなら言えたのかな?とも思って。それぐらい、当時の時代背景や文化の違いを理解しないと、これが戯曲になる意味がない気がしています。時代背景や情勢、主義の違い、それも単に対立するものが2つじゃなくいろんな派閥の人がいる。それらを細かいディティールで届けないと面白いものにはならないと思うんです。そんな中でヤンを丁寧に作っていって、しかも22年間という年月を演じるというのは、今はまだちょっと想像ができないですね。大変なことに挑んでいくんだなっていうワクワクもありつつ、「できるかな?」っていう思いの方が今はちょっと強いかもしれないです。

実は『うま』が終わるまで、パンクしそうだったので台本に手を付けていなかったんです。『ロックンロール』のプロデューサーに「小瀧さん、これは相当、人としてのパワーがいります」と言われても、「ほぉ」と全然分かっていなかった(笑)。「小川さんがキャスティングされた皆さんと一緒だから大丈夫でしょう」と思っていたら、自分が一番大丈夫じゃなかったんですよね。

――プラハにも足を運ばれたとうかがいました。

小瀧:視察という名の旅行で。歴史的な建造物や劇場、美しい大聖堂を見たり、プラハ城に行ったりしました。非常に美しい街でした。今回初めてのヨーロッパだったのですが、いい思い出になりましたし、いい刺激も受けたので、作品に活かせると思います。

◆表現、パフォーマンスは根源にあり続けるもの

――先日30歳を迎えられて、心境的な変化や30代は面白くなりそうだなという感触はありますか?

小瀧:男は30からみたいに言いますが、これ以上ない30代にしたいと思っています。30歳を迎えるタイミングで『うま』という僕的にもチャレンジングな舞台を経験して、2026年のうちにもう1本舞台をやれて、しかもそれが大好きな小川さんの演出で、大好きな役者さんもたくさん出ているこの作品に臨める。

たぶん僕史上最難関じゃないかなと思うんですよ。セリフも言葉の意味はもちろん、比喩とかの意味も覚えなきゃいけない。僕は細かい性格なので、「なぜこれを言ったんだろう?」という意味をひとつひとつ理解しないと嫌なんですけど、この膨大な情報量とセリフ量をなんとか処理しながら、カンパニー一同で頑張りたいですね。

――小瀧さんの中で『ロックンロール』とはどういったものですか?

小瀧:僕自身ロックはあまり通ってこなかったのですが、SUPER BEAVERさんやサンボマスターさんも好きですし、ロックで震わされるものってR&Bで震わされるものとは種類が違う気がしていて。突き動かされる感じが心地よくなってきたんですよね。大人が思いっきりロックンロールをしているっていうカッコよさ、自由に生きていくんだ!というメッセージ性、音楽を通して誰かを勇気づけたり突き動かしたりするロックの魅力を僕もすごくカッコいいなと思うので、そこもヤンに共感できる点かもしれないです。

――ご自身の中に“ロック”はありますか?

小瀧:ロック好きな人ほど、「おりゃ~!」という感じには生きてないですね。ジャズもバラードもいろんなジャンルの音楽が好きで、これというものがないかもしれないです。でもヤンはロックが好きで、なのに自由を奪われて、「俺はロックが好きなだけなんだ」と闘っていく。そこまでのものって自分にとってなんなんだろう?と考えながらヤンを理解していく日々を過ごすんだと思います。

――ヤンはロックがあるから自分らしくいられるような人物ですが、小瀧さんにとってそうした存在はありますか?

小瀧:表現というか、パフォーマンスみたいなものは僕の根底にあり続けるものですね。それでファンの方に喜んでいただくっていうのは、これからも続けていきたいです。

ドラマも好きですしドラマにはドラマの魅力があると思うんですけど、やっぱり直接生で観てもらうのが好きなんです。チケットを買って、劇場に足を運んで、役者たちが役を生きる姿を観るというのは風情があると思いますし、舞台やミュージカルにしか感じられない良さなのかなと思います。

――表現をしていない自分というのは、今まで考えたことがなかったのでしょうか。

小瀧:未来について考えたのは高2ぐらいで、デビューしてからはもう迷うことなく。迷う時期や難しい時期もありましたけど、今はもう全然ですね。これからもファンの皆様の声に応えたいなという思いです。

――最後に作品を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします。

小瀧:観るにはちょっと難しい戯曲かもしれないですが、登場人物の生き様や信じるもの、信念、理想、自由主義みたいなものがどう交差して、どう各々が導かれていくのかを目撃してもらえたらうれしいです。

難しい言葉もいっぱい出てくるんですけど、そんなに難しく考えすぎず、楽しんでもらえたらと思います。僕たちの芝居もそうですし、当時のロックミュージックもぜひ楽しんでいただきたいです。

(取材・文:近藤ユウヒ 写真:米玉利朋子[G.P.FLAG inc])

舞台『ロックンロール』は、11月6日~8日に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、11月13日~12月6日に東京・東京建物 ぴあ シアターにて上演。

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