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「一度は出演をやめたいと思った」尾上眞秀(14)が『連獅子』の稽古を乗り越え、歌舞伎座の舞台で挑む『屋敷娘』

  • 2026.10.17
尾上眞秀さん。

「たいへんなことをやりたい」。そう話す尾上眞秀さんが、いま歌舞伎座で挑んでいるのは、初めての裾さばきに、衣裳の引き抜きもある『屋敷娘』。「出演をやめたい」と思うほど稽古で苦しんだ『連獅子』を経て、舞台に立つたび、新たな課題に向き合ってきました。眞秀さん14歳の今に迫ります。


引き抜きの衝撃にびっくり!

――『屋敷娘』は大名屋敷に奉公する娘たちを描いた舞踊です。子役としてこれまでに演じて来た女方の役とはやはり違いますか?

(着物の)裾を引くのは初めてで、その扱いが難しいです。最初は動きに裾がうまくついてきませんでした。楽しみにしていた引き抜き(一瞬にして衣裳が変わる手法)も、瞬間の衝撃がすごくて驚きました。初めての稽古では、体が後ろに持っていかれてしまいました。

『屋敷娘』娘 お秀=尾上眞秀(令和8年10月歌舞伎座)©松竹

――実際に踊ってみて、初めてわかることがあるのですね。

きれいな形でいるためには、胸を張って、おなかが前に出ないようにしなければなりません。でも、胸は張りながらリラックスもしなければいけない。いろいろなところに気をつける必要があります。

(曽祖父である七代目尾上)梅幸さんの映像を見ると、すごくきれいなんです。何もしていなくても、ただ立っているだけできれいなのは本当にすごいと思いました。雰囲気もとても素敵です。

『屋敷娘』娘 お秀=尾上眞秀(令和8年10月歌舞伎座)©松竹

――同じ歌舞伎俳優として、曽祖父さまをそのように意識したのは初めてですか?

初めてです。あんなふうに踊れるようになりたいと思いました。

――眞秀さんはお祖父さまの七代目尾上菊五郎さんが憧れの存在だとずっと公言されていますが、さらに梅幸さんという目標ができたのですね。

いまは1日1回は、梅幸さんの『屋敷娘』の映像を見るようにしています。どんどん似せていきたいです。

みんなでプレイするチームスポーツが好き

尾上眞秀さん。

――女方に対しての興味が増しましたか?

はい。でも、立役も女方もどちらもやっていきたいという気持ちは、ずっと変わりません。小さい頃は、とにかく立廻りが楽しいという感じでした。豪快ですし。

――体を動かすのが好きなのですね。舞台に限らず、ですか。

はい。球技は好きです。でも、ただ走るのはあまり……。個人でするものより、チームスポーツのほうが好きですね。

――みんなでお芝居や踊りをつくっていくことにも通じそうですね。大勢の出演者に交じって出演した『四季』(2024年4月、歌舞伎座)も楽しかったのでは?

あんなに大勢が一度に舞台に出ることもあるんだなと思いました。すごく面白かったです。

『四季』「冬 木枯」木の葉 男=尾上眞秀(令和6年4月歌舞伎座)©松竹

――いろいろな「初めて」を重ねていますね。『四季』の4か月後には、尾上右近さんの自主公演「研の會」で『連獅子』に挑みました。大きな拍手のなかで輝いていました。

本当に大きな拍手をいただいて、とても気持ちよかったです。

悔しくてお風呂で落ち込んだことも

尾上眞秀さん。

――右近さんとの稽古が始まった頃にCREA WEBではその様子を取材させていただきましたが、あの後は順調でしたか?

順調、という感じじゃなかったです。なんか……。どんどん落とされて、自分で這い上がっていく、みたいな……。

――『連獅子』には、親獅子が仔獅子を「千尋(せんじん)の谷」に突き落とす場面があります。作品の設定さながらの状況だったのでしょうか?

はい。お稽古中に、1度は出演をやめたいと思ったくらい苦しかったです。

――どうやって乗り越えたのですか?

何回も自分の踊りを撮ったビデオを見て、できていないところを直しました。それを右近さんに見ていただいて、また直して。そうやって少しずつ上がっていった感じです。

――その経験が、歌舞伎座での右近さんとの『連獅子』(2026年4月)につながりました。これは嬉しかったでしょう?

『連獅子』仔獅子の精=尾上眞秀(令和8年4月歌舞伎座)©松竹

はい。あのときにあきらめなくてよかったと思いましたし、右近さんに落としてもらってよかったと思いました。でも……。

――嬉しいだけではなかった?

稽古が始まったら、また同じでした。すごく落ち込んで、周りの人の声が入ってこないくらい悔しくて、お風呂でじっとしていたこともあります。また、そこから上がっていかなきゃなりませんでした。

――そこでまたがんばったからこそ、いま歌舞伎座で『屋敷娘』を踊ることができているのだと思います。共演中の中村壱太郎さんとは、文楽、歌舞伎、ダンスが融合したマルコス浄瑠璃『金閣寺』でも共演したばかりですね。

はい。壱太郎さんと同じ舞台に立つのは、『金閣寺』が初めてでした。歌舞伎では今回が初めてです。『金閣寺』は、みんながほとんど何もわからない状態から集中して作品をつくっていく感じでした。今度は歌舞伎の踊りなので、壱太郎さんから女方のことをたくさん学びたいと思っています。

夢は『鷺娘』、『道成寺』。たいへんなことをやりたい

尾上眞秀さん。

――『金閣寺』で、日本舞踊とは異なるスキルを極めたダンサーの皆さんと踊った経験はいかがでしたか?

これまで使ったことのない筋肉を使うと疲れますし、リハーサルが進むなかで、そこに追いつかなければという気持ちでした。その一方で、操られている人形のように、身を任せる感じでいるときもありました。

――表現の幅が広がりましたね。

リハーサルの時間が少なくなってきたとき、「あそこのデュオをもう一度やりませんか」と自分から言ったこともあります。自分がちゃんとできていないのは嫌ですし、作品の質も落ちてしまいますから。

――ここ最近は、ジャンルを超えて舞踊作品への出演が続いています。どのように受け止めていますか?

これまでやったことのない動きを、基礎から教えてもらうのは面白いなと感じています。

――いつか踊ってみたい作品を教えてください。

『鷺娘』とか『道成寺』です。たいへんだと思いますが、たいへんなことをやりたいです。

――『屋敷娘』は、小道具の扱いも含め、女方の踊りの基礎が詰まった作品です。将来につながる経験になりそうですね。

はい。自分はまだ声変わりが始まっていませんが、そうなったらせりふのある役は難しくなります。その間に、踊りをしっかりやっていきたいと思っています。

『屋敷娘』娘 お秀=尾上眞秀(令和8年10月歌舞伎座)©松竹
『屋敷娘』娘 お秀=尾上眞秀(令和8年10月歌舞伎座)©松竹

――CREAでは旅に関することをみなさんに聞いています。最後に、眞秀さんが訪れたい場所を教えてください。

ポルトガルに行ってみたいです。街がすごくきれいだと聞いたので。

父の出身国のフランスには毎年行っています。マルシェに並んでいる野菜がすごくきれいで、それを見るのも好きなんです。夏休みに行くと、フランスの人ってみんなバカンスに出かけているから、人が少ないんですよ。スーパーの店員さんがひとりしかいないこともありました。でも、そういうところもいいなと思います。

文=清水まり 撮影=深野未季

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