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軽自動車にグローバル化の時は来るのか?

  • 2026.10.14

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第493回)

■満を持して……、スズキ初の軽乗用車EVがお披露目

スズキ初の軽乗用車EV「eSKY(イースカイ)」 写真右は鈴木俊宏社長

東京・新宿のイベントホール。10月6日に自動車メーカーのスズキとしては初めてとなる軽乗用車EV(電気自動車)の「eSKY(イースカイ)」がお披露目されました。プロトタイプの試乗については先の小欄でもお伝えしましたが、公式に発表されたのはこの日でした。

「おはよう、秋晴れのさわやかな日がデビューになったな。じゃ、行こうか」

クルマにこう語りかけた鈴木俊宏社長が自らステアリングを握って姿を見せました。鈴木社長の“演技”はいつも味があります。

この日は発売日、価格も明らかになりました。発売は約1カ月後の11月16日、そして価格は最廉価グレードの「A」で212万円、軽乗用車EVでは最も安く、補助金が適用された場合、実質155万円あまりで購入できることになります。8月に投入された中国・BYDの「RACCO(ラッコ)」の廉価版は214万5000円。スズキの営業担当は「社内で相当な議論をした。いろいろな意見をいただく中でこの価格になった」と話します。“ライバル”も横目で見ながらの戦略的な価格設定であることがうかがえます。

「軽自動車を磨き続けてきたスズキだからこそ辿り着くことができた一つの答え」

鈴木社長はスピーチで力を込めました。eSKYは一回の充電で約310kmの走行が可能で、軽のEVではトップクラス。販売台数は月間で1000台を目標としています。

中国・BYD「RACCO(ラッコ)」

軽乗用車のEVはすでに日産自動車、三菱自動車、ホンダが先行していますが、今年に入って中国・BYDが海外勢として初めて参入しました。全国軽自動車協会連合会によると、RACCOの販売台数は9月末までで648台。さらに今回のスズキ・eSKYの投入により、軽のEV市場が活性化するかが注目されます。

「軽自動車のEVってどうあるべきかというのをしっかり議論してつくり込んできた」

軽EVでは後発であるものの、その“猶予期間”でつくり込みを進めてきたことに自信を見せます。その上で鈴木社長は「ハードルが高い部分もある。そういったところを少しずつ理解していただきながらEVを普及させるという活動にもっていくのが大事」と語りました。

一方で、鈴木社長は「軽のEVは本流になる可能性がある」と明言。「eSKY」はEVの敷居を下げ、軽の動力源において潮目を変える存在になっていくかもしれません。「eSKY」のプラットフォーム(車台)をベースにした派生車種も今後出てくることでしょう。

■EVは軽自動車の本流になる? 海外進出への期待と課題

日産「サクラ」

もう一つの注目は日本独自の規格である軽自動車が海外にはばたく日がくるのかということです。BYDという海外勢の日本参入、また、EU(欧州連合)は日本の軽自動車を参考にした新しい車両規格「M1E」を導入する動きも見せています。この規格は小型EVの普及・優遇を視野に入れています。

スズキはすでにパキスタンなどの子会社で軽自動車をベースとした車両を現地生産していますが、鈴木社長は日本市場は重視しながらも「その延長線上で海外でというところもあるかもしれない」と含みを持たせました。その上で軽EVについては「日本で鍛えてもらって、それから一歩一歩、海外の可能性をクリアできればいい」と話しました。

日本の乗用車市場で約4割のシェアを持ち、事実上の「国民車」に成長しながら「ガラパゴス」と言われた軽自動車の規格が国際市場で認められることは大変喜ばしいことと思います。ただ、海外への投入で、仕様が海外優先になるのではないかという懸念もあります。

ラジオなどの電波を受信するアンテナは、かつて前方ボンネット脇からAピラー、後方のトランク脇、リアガラスなどに存在していましたが、最近はルーフ後方の設置が主流になっています。上級車は突起のない「シャークフィンアンテナ」が多いものの、軽自動車などはコストの関係でバータイプの「ポールアンテナ」が主流です。

スズキ「eSKY」のアンテナはルーフ後方右側にある

ポールアンテナは洗車や高さ制限のある立体駐車場を使用する際に起こしたり倒したりする必要があります。車高の高いクルマは手が届きにくいという短所もあります。ただ、軽自動車は国内専用のため、アンテナは多くがルーフ後方右側についています。ドライバーが操作しやすいように配慮されています。

これに対し、輸出を視野に入れたクルマはアンテナがルーフ後方中央についています。海外仕様との共通化によるものですが、これにより、アンテナに手が届きにくくなるわけです。高価なシャークフィンアンテナやガラスアンテナを採用したり、倒れた状態でも受信状態を維持できるようなものもありますが、手動で伸縮させるものは使いにくさが拭えません。

これはほんの一例で、サイドブレーキの位置、ワイパー・ライトのコラムスイッチ(輸入車は右ハンドル仕様でも国産車と逆になっているケースがある)など、弊害とまでは言えませんが、これらはユーザーにある種の慣れを求めます。軽自動車以外の登録車はグローバル化により、海外仕様との共通化が進みました。左ハンドル仕様も必要なので当然といえば当然ですが、結果、海外がメインで、日本仕様は「おこぼれ」としか思えないようなクルマも散見されるようになりました。

「軽自動車をつくり続けてきた歴史は、お客様と共に歩んできた歴史」

発表会で鈴木社長はこのように話していました。軽自動車が海外に進出しても、「日本ファースト」の精神は忘れないでいただきたいものです。

(了)

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