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鳥のように自由に。創業者の軌跡をたどる「シャネル」の物語【2027春夏コレクション】

  • 2026.10.13
Aurore Marechal / Getty Images

「シャネル」のショーが繰り広げられた約18分間は、まさに至福のひとときだった。グラン・パレの天井を彩る、光り輝く鳥たちのインスタレーション。a-haの“Take On Me”とポップミュージックをミックスした、高揚感を誘うサウンドトラック。そして何より心を奪うのは、次々とランウェイに現れる83のルック。気づけば疲れも時間の感覚も忘れ、目の前の光景に夢中になっていた。真の美しさには、心に積もった疲れや雑念を洗い流す、解毒剤のような力がある。そんなファッションの素晴らしさを、改めて全身で実感した魔法のような約18分間だった。

Virgil CLAISSE / Getty Images

マチュー・ブレイジーがアーティスティック ディレクターに就任してから1年。創業者ガブリエル・シャネルとの絶え間ない対話を重ねながら、メゾンの歴史とコードを掘り下げ、現代女性に“自由”をもたらす装いを提示し続けている。今季のコレクションで着目したのは、ひとりの女性のなかに存在する、いくつもの異なる自分だ。時代や経験とともに変化し、時に相反しながらも重なり合っていくアイデンティティ。そんな女性の多面性を、ガブリエル自身の人生に重ね合わせ、ファッションが持つ変容の可能性を描き出した。

Virgil CLAISSE / Getty Images

ファーストルックは、胸元に羽根のようなロゼットをあしらった、身体のラインに沿って流れるようなスリップドレス。それは、創業者がランジェリーのアトリエでお針子としてキャリアをスタートさせた時代を思い起こさせる。モデルが手にしていたのは、メゾンのアーカイブから取り出された、ガブリエル本人が所有していた“2.55”バッグだった。第二の肌のように身体に寄り添う軽やかなドレスと、時を超えて受け継がれるアイコンバッグ。「シャネル」の原点と現在を結びつける、なんとも詩的な幕開けだ。

LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
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エドワード朝時代の身体を束縛する装いから、メンズウェアを取り入れたスタイルを経て、やがて女性の身体を解放する革新的なスーツを生み出したガブリエル。その変遷をたどるように、コルセットの構造を思わせるボーンのラインやリボンのトリミング、ペプラム、ひだ飾りの襟、曲線を描くボディスなど、過去のシルエットを象徴するディテールが現代の装いに装飾として取り入れられた。

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ブレイジーのデビューコレクションから現代女性を夢中にさせている、ブークレ、ウール、鮮やかなニット素材を組み合わせたローウエストのスカートが今季も多出した。それらは、ウエスト位置を低く設定するスタイルをいち早く取り入れたガブリエルの先進性へのオマージュでありながら、ブレイジーはそこに夜の外出を思わせる華やかなトップスやタンクトップ、色鮮やかな刺しゅうを施したジャケットを合わせ、現代的なスタイルへと昇華させた。

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とりわけ印象的だったのは、マスキュリンとフェミニン、構築と脱構築が自由に交錯するスタイリングだ。フォーマルなメンズウェアは切りっぱなしのエッジを残したジレへと姿を変え、パンツやペンシルスカートと組み合わせることで、シルエットも自在に変化する。素肌にジャケットをさらりと羽織ったセンシュアルな着こなしがあれば、プリーツを施したミニスカートのツイードセットアップには、フレッシュな魅力が漂う。どのルックもエレガントでありながら大胆で、どこか気負いがない。成熟した美しさもあれば、若々しいみずみずしさもある。50代の日本人モデルSAWAをはじめ、幅広い世代のモデルを起用したキャスティングも、年齢にとらわれない多様な女性像を印象づけていた。

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「シャネル」のDNAである自由な精神を、素材の革新によって体現したのが、スモッキング ツイードによる新しいスーツだ。伸縮性のある生地が身体の動きにしなやかに寄り添い、パフォーマンスウェアを思わせるほどの快適さを実現した。「シャネル」を象徴するツイードに、第二の肌のような柔軟性をもたらすという大胆な試み。コレクションの冒頭を飾ったボディウェアから、終盤に登場する新しいスーツへ。ガブリエルが追い求めた“自由”という思想が、時代を超えて一つの円環を描き、フィナーレを締めくくった。

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かつてガブリエルが女性にもたらしたのは、身体を解放する自由であると同時に、どんな自分でいるかを、自分自身で選び取る自由でもあった。装いの制約を取り払うことで、まだ知らなかった自分に出会えるかもしれない。ガブリエル自身が人生を通して示したように、服には人を変容させる力があるのだ。飛翔(ひしょう)する鳥のごとく、もっと自由に、さらなる高みへ——。ブレイジーの「シャネル」は、現代女性の可能性をどこまでも解き放っていく。

Hearst Owned
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