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「自然と涙が…」うつ病で退職の29歳女性、障害年金の請求目指すも…社労士が明かした“1年6カ月の壁”

  • 2026.10.13
障害年金は、原則として初診日から1年6カ月を過ぎた日以降に請求可能(画像はイメージ)
障害年金は、原則として初診日から1年6カ月を過ぎた日以降に請求可能(画像はイメージ)

筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気などで就労が困難なひきこもりの人などを対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。

障害年金の請求は、原則として、初診日から1年6カ月を過ぎた日以降に行うことができます。うつ病などの精神疾患を抱え、収入の見通しが立っていない人にとってこの期間は非常に長く感じられることでしょう。

そもそも1年6カ月間待たなければならない理由には、一体どのようなものがあるのでしょうか。また、速やかに請求するためには、どのような準備をしておけばよいのでしょうか。浜田さんがある20代女性を例に解説します。

職場復帰を目指すも体が拒否反応

29歳の遠野結月さん(仮名)はうつ病のため現在は休職中。実家で両親と同居しながら治療に専念していますが、それでもうつ病は改善せず、再就職の見通しも立っていません。

そこで結月さんは障害年金の請求を検討するようになりました。ただし障害年金は、原則、初診日から1年6カ月を過ぎた日以降に請求できることになっています。

「もっと早くから障害年金を請求する方法はないのだろうか」

そう思った結月さんは、社会保険労務士である私への相談を決めたといいます。結月さんは自ら面談に出席しました。

面談の席で、私は結月さんから事情を伺いました。結月さんは会社員だった28歳の時に仕事のストレスでうつ病を発症。心療内科を受診し、医師の勧めでしばらく休職して様子を見ることになりました。

休職を機に結月さんは実家に戻ることにしました。結月さんとしては「いつまでも会社に迷惑をかけるわけにはいかない。早く復帰しなければ」という気持ちはありましたが、その思いとは裏腹に、心と体は拒否反応を示していました。

「復職することを考えるだけで自然と涙が出てくる」「体に力が入らず震えが出てしまう」「不安で食欲も落ち夜もよく眠れない」といった状態になってしまうのです。

そこで主治医と相談し、休職から半年後に会社を退職しました。退職後も引き続き実家で休んでいましたが、うつ病が改善することはなかったといいます。

再就職に向けて行動を起こすこともできず、あっという間に時間は過ぎていきました。

精神疾患は「症状固定」による特例が認められず

そうこうするうちに結月さんは29歳になりました。うつ病で初めて心療内科を受診してから1年が経過したところです。障害年金を請求するためには、あと6カ月待つ必要があります。

そこまで話が進んだところで、結月さんは私に質問しました。

「再就職のめども立っていないので、私としてはもっと早くに請求したいのです。何とかなりませんか」

「残念ながらそれはできません。障害年金では、『障害認定日』以降に請求できることになっているからです。障害認定日とは障害の状態を定める日のことをいい、初診日から1年6カ月を過ぎた日のことをいいます」

すると結月さんはさらに質問をしてきました。

「障害年金では、初診日から1年6カ月が過ぎる前に請求できる特例があると聞きました。私はその特例に当てはまらないのでしょうか」

「確かに特例はあります。ただし、それは『病気やけがが治った場合』です。ここでいう『治った』とは『症状が固定し、治療の効果が期待できない状態』を指します。主に次のようなケースがあります」

・心臓にペースメーカーを装着した。または植え込み型除細動器(ICD)や人工弁を装着した・人工関節や人工骨頭の挿入置換手術を受けた・急性腎不全などで人工透析を受けることになった・手足を切断した※上記以外にも症状固定とみなされるものがある。詳しくは日本年金機構の公式サイトを参照すること。

精神障害では症状固定といったものは定められていないので、初診日から1年6カ月よりも前に請求することはできないのです。

「障害認定日」を過ぎた日以降に速やかに請求するには?

症状固定の説明を聞いた結月さんは疑問を口にしました。

「そもそもなぜ、うつ病などの精神障害は症状固定というものがないのでしょうか」

「精神障害ではその症状が日々変化しやすいため、症状固定といった診断がつかないからのようです。ある程度の時間をかけて様子を見ないことには、その障害状態がどのくらい重いのかが判断できないとされているのです」

「そうなのですね。それなら障害認定日に書類を提出できるよう、今から早めに診断書を作成してもらうのはどうでしょうか」

この質問に私はゆっくりと首を左右に振りました。

「残念ながら、それは認められません。なぜなら、診断書の現症日(障害状態を証明した日)は、障害認定日以降3カ月以内の日付のものと決まっているからです。つまり、初診日から1年6カ月から1年9カ月の間で受診した日の障害状態を証明したものでなければなりません」

「じゃあどのようにすれば、最も速やかに請求できるのでしょうか」

「今からできることを少しずつ準備していくしかありません。具体的には、まず主治医に次のように伝えてみます。『障害年金の請求を考えているので、障害認定日が過ぎたら速やかに診断書の作成をお願いします。そのために受診日の調整をしていただくかもしれません。その際はどうぞよろしくお願いいたします』などでしょうか」

私は話を続けました。

「さらに、診断書の作成を依頼する時に日常生活の困難さをまとめた文書も渡せるよう、あらかじめ準備しておきたいところです。精神障害用の診断書には、日常生活能力の判定といった欄があり『日常生活のそれぞれの場面において、何がどのように困難なのか』といったことを医師に証明してもらうからです。普段の問診だけでは十分に困難さが伝わらないこともあるので、事前に文書を作成しておきたいところです」

この話に結月さんは黙ってうなずきました。それを見た私は、さらに説明を続けました。

「障害年金の請求では、『病歴・就労状況等申立書』という書類も必要になります。こちらには、発病(体調を崩した時)から請求時までの状況をまとめることになっています。この申立書には、診断書では書ききれない状況を記載することになるので、診断書と同じくらい重要な書類となっています」

「なんだか大変そうですね…。私1人でできるかどうか」

「請求に向けて私もお手伝いすることができます。何をどのようにまとめればよいのかは私が主導していきますのでご安心ください」

「それは心強いです。ぜひお願いいたします」

結月さんはほっとした表情を浮かべました。こうして結月さんと私は、来るべき日に備え、少しずつ準備をしていくことになりました。

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也

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