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《ミルクを飲む子パンダがかわいい!》上野動物園にいたリーリーは「熊猫F4」として施設の顔に⁉韓国生まれのフーバオの“熱狂的人気”で変わるパンダ基地のいま

  • 2026.10.12
アメリカで生まれ、神樹坪基地で暮らす贝贝。(2026年4月30日、筆者撮影)

日本からジャイアントパンダ(以下、パンダ)がいなくなり、パンダを好きな人たちの間では、中国にいるパンダへの関心が高まっています。一方、中国では新たなパンダの飼育施設が次々とできました。それらを含む施設を単独で訪れた筆者が、会えたパンダたちと各施設への行き方を紹介します。今回は中国ジャイアントパンダ保護研究センターの臥龍中華ジャイアントパンダ苑神樹坪基地です。


韓国生まれのパンダの前には多くの人が

中国ジャイアントパンダ保護研究センター(以下、パンダセンター)の臥龍中華ジャイアントパンダ苑神樹坪基地(以下、神樹坪基地)は臥龍自然保護区に位置する。この自然保護区には、野生のパンダも生息している。

臥龍の地は、2008年5月12日に発生した四川大地震で大きな被害を受けた。圧死したパンダもいる。その後、神樹坪基地が香港の支援で建設され、2016年5月に正式に開園。臥龍復興の象徴的なプロジェクトとなった。

成都から神樹坪基地へ向かう途中。「臥龍大熊猫保護区」(「大熊猫」はジャイアントパンダ)の表示がある。(2026年4月30日、筆者撮影)
神樹坪基地内。周囲は山。(2026年4月30日、筆者撮影)
神樹坪基地内。出入口の近く。(2026年4月30日、筆者撮影)

筆者が今年4月30日に神樹坪基地を訪れると、韓国のエバーランドで生まれたメスの福宝(フーバオ)の前に人だかりができていた。観覧者の数は、園内のパンダの中で圧倒的に多い。テレビカメラのような大きなカメラや一脚、三脚を持つ人も複数いた。福宝は韓国で大人気になり、2024年4月から中国で暮らしている。(参照:Red VelvetにNCT、IVE…K-POP スターはじめ国民を虜にしたパンダの フーバオ。中国出国後も異例の注目度)(参照:韓国で初めて生まれたパンダ、フーバオの“最後の3カ月間”に密着 『私の親愛なるフーバオ』の監督が目指した“放送局が撮れない映像”とは)

中国でも福宝の存在感は大きい。神樹坪基地は、四川省の省都・成都から約110キロメートル離れている。豊かな自然に恵まれている半面、車を運転できないとアクセスしづらかった。園内に食事を提供するエリアはなく、筆者が2017年3月に訪れた際は園内は閑散としていて、観覧者よりも職員のほうが多いほどだった。

それがこの数年間で様変わりした。すべて福宝の影響だとは言えないが、園内には麺類やおでんを提供するエリアがオープン。成都からのアクセスは飛躍的に向上し、周辺の宿泊施設には「福宝」の文字と共に福宝の大きな写真が掲げられている。

メスの福宝。2020年7月20日にエバーランドで生まれた。(2026年4月30日、筆者撮影)
福宝(奥)とオスの巢天骄(チャオティエンジャオ)。(2026年4月30日、筆者撮影)
ほら穴の上でお昼寝する福宝。パンダセンターの雅安碧峰峡基地(以下、雅安基地)にいる香香(シャンシャン)も、似た形のほら穴の上でよく寝ている。(2026年4月30日、筆者撮影)

ワシントン生まれの3兄弟も暮らす

福宝に次いで観覧者が多いのは、オスの小奇迹(シャオチージー)のエリア。小奇迹は、アメリカの首都ワシントンにあるスミソニアン国立動物園で生まれた。福宝と小奇迹の生年月日は約1カ月違い。2頭ともコロナ禍の2020年生まれだ。

小奇迹の兄で、同じくスミソニアン国立動物園で生まれた泰山(タイシャン)と贝贝(ベイベイ)もいた。筆者は以前、スミソニアン国立動物園とパンダセンターの雅安碧峰峡基地(以下、雅安基地)で贝贝を観覧していたので、贝贝の観覧は神樹坪基地で3カ所目だ。

午前11時ごろ泰山の前にいたら、飼育員がタケノコをあげ始めた。泰山は穏やかな顔つきでおいしそうに食べていて、見ている筆者も嬉しくなった。同じころ、近くのパンダたちにもタケノコがふるまわれていた。タケノコをあげる時間になると、観覧者が急増する。神樹坪基地の観覧エリアの多くは幅が狭いので、人が増えると移動しづらい。お目当てのパンダがタケノコを食べる様子を見たい場合は、早めに行って待機しておくほうがいいだろう。

オスの小奇迹。スミソニアン国立動物園で2020年8月21日に生まれた。(2026年4月30日、筆者撮影)
オスの泰山。スミソニアン国立動物園で2005年7月9日に生まれた。(2026年4月30日、筆者撮影)
オスの贝贝。スミソニアン国立動物園で2015年8月22日に生まれた。(2026年4月30日、筆者撮影)

臥龍の地で生まれ、上野動物園に約13年7カ月滞在したオスの比力(ビーリー)にも再会できた。比力とメスの仙女(シィエンニュ)は2024年9月に同園から帰国。日本名は、比力が力力(リーリー)、仙女が真真(シンシン)だ。

神樹坪基地では、修学旅行生らしき子どもたちが比力の前を通ったとき、引率の女性が中国語で「仙女……香香(シャンシャン)……」と話していた。筆者は中国語を理解できないが、この名前だけは聞き取れた。おそらく比力と仙女の娘が香香だと説明していたのだろう。

神樹坪基地のツーリストセンターに置かれていたチラシには、福宝、小奇迹、比力、マレーシアで生まれた谊谊(イーイー)の4頭が「熊猫F4」として掲載されていた(谊谊はすでにパンダセンターの綿陽基地に移動)。「F」はforeignerとのこと。4頭とも、中国国外で生まれた、もしくは滞在していたパンダだ。ちなみにF4のメンバーは固定ではなく、入れ替わる。

また、神樹坪基地は繁殖に力を入れている施設だ。比力は繁殖に向け、2025年1月に雅安基地から神樹坪基地へ移動した。時期にもよるが、神樹坪基地では子パンダを見られる機会が多い。筆者が訪れた日も複数の子パンダが公開されていて、子パンダたちはミルクを飲んだり、母親にじゃれついたりしていた。

オーストリアの首都ウィーンにあるシェーンブルン動物園で生まれたメスの福凤(フーフォン)は、子どもの双子を育てていた。福凤も双子として生まれている。筆者が2018年1月5日にシェーンブルン動物園へ行ったとき、福凤は1歳で、双子の福伴(フーバン)と母親の阳阳(ヤンヤン)と一緒にいた。その約11カ月後、福凤と福伴は2歳で中国へ渡った。

オスの比力。2005年8月16日に臥龍で生まれた。(2026年4月30日、筆者撮影)
タケノコを食べる比力。(2026年4月30日、筆者撮影)
木を気にしている比力。上野動物園と雅安基地にいたころは、高い木に登っていた。(2026年4月30日、筆者撮影)
シェーンブルン動物園で2016年8月7日に生まれたメスの福凤と、福凤の双子の子ども。(2026年4月30日、筆者撮影)
メスの南小月(ナンシャオユエ)の双子の子ども。ミルクを飲んだ後、顔に付いたミルクをタオルで拭いてもらっている。飼育員ははしごを上り、上にいる子どもにもミルクをあげていた。(2026年4月30日、筆者撮影)

成都発着のツアーに初参加

これまで筆者が神樹坪基地へ行く場合、主に2つの方法をとっていた。1つは、成都から約60キロメートル離れた都江堰(とこうえん)までバスか高速鉄道で行き、都江堰からタクシー、もしくは配車アプリDiDiの車で向かう方法。もう1つは、成都のバスターミナルから長距離バスに乗り、運転手に頼んで臥龍基地の近くで降ろしてもらう方法だ。

今回は初めてツアーを利用した。ツアーと言ってもガイドは付かず、基本的に往復のバスの運行だけ。支払った料金は、往復のバス代と神樹坪基地の入場料込みで3498円(Trip.comで申し込んだ際、日本円の表示にしていたので日本円)。神樹坪基地の入場料だけで90元(約2000円)かかるので格安だ。

当日、成都中心部の集合場所へ行き、バスの空いている席に自由に座った。外国人は筆者だけのようだった。バスは大型で快適。しかも座席でスマートフォンを充電できた。

バスは午前7時過ぎに出発し、午前9時11分に神樹坪基地のツーリストセンターへ到着。ツーリストセンターと神樹坪基地の間を往復するシャトルバスの運賃20元は、ツアーの料金に含まれないため、ここで購入した。その後は自由行動。集合時刻の午後4時30分までに各自がバスに戻ると、バスは成都へ向け出発した。

ツアーのバスで成都から神樹坪基地へ行く途中に立ち寄った休憩所。
神樹坪基地のツーリストセンターと神樹坪基地を結ぶシャトルバスから撮影。バスの窓には小奇迹のステッカーが貼られている。外の建物の壁に福宝の写真があるのが見える。(2026年4月30日、筆者撮影)

福宝の観覧まで1時間、都江堰の施設は満員で入場できず

神樹坪基地へ行く日は、中国の労働節の連休(5月1日~5日)と重ならないようにした。昨年、苦い経験をしたためだ。

筆者はゴールデンウイークの休暇を利用して、昨年5月1日にパンダセンターの都江堰基地を訪れ、都江堰に宿泊した。ホテルの料金は通常の約3倍で、他のホテルも同様だった。5月2日は、DiDiの車で午前7時にホテルを出発。だが、途中で大渋滞に巻き込まれ、長いトンネル内で長時間にわたり、車がほとんど動かない状態が続いた。

神樹坪基地にたどり着いたのは、出発から約2時間半後の午前9時半ごろ。園内は混雑していて、福宝の観覧に1時間以上並んだ。麺類などを販売するエリアも大混雑。しかも気温が高く、日差しも強かった(今年は涼しかった)。早めに園を出て、帰りの車をDiDiで手配しようとしたら、ことごとくキャンセルされた。困って職員に相談していると、子どもの世話をするボランティア活動で都江堰から来ていた学生たちに声をかけられ、都江堰へ戻る車に一緒に乗せてくれた。

翌5月3日は、都江堰にある成都ジャイアントパンダ繁育研究基地 都江堰野放繁育研究センター(熊猫谷)を予約せずに訪れたら、満員で入場できなかった。仕方なく都江堰から高速鉄道で成都へ戻り、5月4日に帰国した。

成都から神樹坪基地へ向かう途中、長い山岳トンネルを通る。(2026年4月30日、筆者撮影)

中国では春節、労働節、国慶節に伴う大型連休がある。上野動物園で生まれた暁暁(シャオシャオ)と蕾蕾(レイレイ)の公開が雅安基地で9月29日に始まったので、今後、日本から四川省を訪れる人が増えるかもしれない。中国の大型連休中に行く場合は、入場券や宿泊施設、交通手段を早めに予約しておくことをおすすめしたい。

中川 美帆(なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(17カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、オーストラリア、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

パンダワールド We love PANDA

定価 1,650円(税込)
大和書房

文・撮影=中川美帆

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