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頭に「電流」を流すと統合失調症の症状が減ると判明

  • 2026.10.8
頭に「電流」を流すと統合失調症の症状が減ると判明
頭に「電流」を流すと統合失調症の症状が減ると判明 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

肩こりのひどい夜、低周波の治療器を貼ってピリピリした感覚に身をまかせ、「たぶん効いてる」と自分に言い聞かせた経験がある人もいるでしょう。

統合失調症は、主に薬を使って症状を抑えていく病気です。

しかし中には、薬を使ってもなかなか症状が良くならない人もいます。

そこで薬に「上乗せする」治療の候補として注目されているのが、頭に置いた電極から電流を流す「経頭蓋直流電気刺激(tDCS)」です。

今回、研究チームは、薬が効きにくい統合失調症の入院患者を対象に、本物の電気刺激と、ごく短い時間だけ電流を上げ下げしてあとは止めてしまう偽の刺激を比べる試験を行いました。

果たして、5日間の電気刺激で症状は変わったのでしょうか。

研究の詳細は、2026年10月3日付で学術誌『Scientific Reports』に掲載されました。

目次

  • 薬が効きにくい統合失調症という難題
  • 5日間の電気刺激で、症状はどう変わったのか?

薬が効きにくい統合失調症という難題

薬が効きにくい統合失調症という難題
薬が効きにくい統合失調症という難題 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

統合失調症の治療では、薬が使われています。

ところが、薬を使ってもはっきりとした改善が得られないケースがあり、これは「治療抵抗性統合失調症」と呼ばれています。

治療抵抗性統合失調症は薬への反応が限られているため、今も医療の現場で大きな課題となっています。

薬だけでは届かないなら、別の方向から手を貸せないか。

そうした発想から候補に挙がってきたのが、tDCSです。

tDCSは、頭の表面に電極を置き、そこから直流の電流を流すという方法です。

薬の代わりではなく、薬による治療に追加する「補助的な治療」として期待されてきました。

ただし、これまでの研究では結果がそろっておらず、本当に効果があるのかははっきりしていませんでした。

そこで今回の研究では、電極を前頭部と側頭部、つまりおでことこめかみのあたりに置く「前頭・側頭tDCS」に絞って、その短期的な効果を確かめることにしました。

調べたのは、症状の重さと、患者さん自身の生活の質の2つです。

試験に参加したのは、治療抵抗性統合失調症で入院している患者45人でした。

患者は、本物の刺激を受けるグループと偽の刺激を受けるグループに、くじ引きのような方法で振り分けられました。

さらに、患者と研究者の両方がどちらのグループかを知らないまま進める「二重盲検」という形がとられました。

最後まで試験を終えたのは39人で、本物の刺激のグループが20人、偽の刺激のグループが19人でした。

5日間の電気刺激で、症状はどう変わったのか?

5日間の電気刺激で、症状はどう変わったのか?
5日間の電気刺激で、症状はどう変わったのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

本物の刺激のグループは、1日2回、5日連続でtDCSを受けました。

一方の偽の刺激では、30秒ほど電流を上げ下げするだけで、残りの19分間は電流を止めていました。

つまり偽の刺激は、ごく短い時間だけ電流を上げ下げして本物らしく見せかけ、残りの時間は電流を止めているという「ふり」の刺激です。

症状の重さは、統合失調症の症状を点数で表す「陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)」で測りました。

生活の質は、世界保健機関(WHO)が作った簡易版の質問票で調べています。

分析では、時間を追ったデータの変化を2つのグループで比べ、さらに別の統計の方法でも同じ結果になるかを確かめました。

その結果、本物の刺激を受けたグループは、偽の刺激のグループに比べて、PANSSの合計点がより大きく下がっていました。

症状の種類ごとの点数でも、同じように本物の刺激のほうがより大きく下がっていました。

この差は、偶然では説明しにくいほどはっきりしたものでした。

薬が効きにくい人たちでも、短い期間の電気刺激で症状が和らいだと言えそうです。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(脳への電気刺激を制御チップで自動化し、うつ状態を解消させる技術が登場)

一方で生活の質については、良くなる傾向は見られたものの、はっきりした差とまでは言えませんでした。

症状の点数が下がっても、それが毎日の暮らしの実感にまで届いたかどうかは、今回の試験だけでは分からないということです。

また、今回確かめられたのは、あくまで短期的な効果です。

研究チームは、この結果を確かなものにするには、より大きな規模で、その後の経過も追いかける試験が必要だと述べています。

今回の参加者は45人(最後まで試験を終えたのは39人)だったため、より多くの患者でも同じ結果になるかどうかを、これから確かめていく段階です。

「薬が効かない」と聞くと、もう打つ手が残っていないように感じてしまいます。

しかし今回の研究は、薬とは別の方向から症状に働きかける道に、まだ探る価値があることを示しています。

参考文献

Fronto-temporal transcranial direct current stimulation reduces symptoms in treatment-resistant schizophrenia: a randomized sham-controlled trial (Scientific Reports)
https://doi.org/10.1038/s41598-026-70785-y

元論文

Fronto-temporal transcranial direct current stimulation reduces symptoms in treatment-resistant schizophrenia: a randomized sham-controlled trial
https://doi.org/10.1038/s41598-026-70785-y

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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