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音無美紀子、榊原郁恵ら実力派キャストがたくましくチャーミングな女たちを体現!/ONEOR8『台所の女たちへ』稽古場レポート

  • 2026.10.7
ONEOR8『台所の女たちへ』舞台稽古の様子 写真:塚田史香 width=
ONEOR8『台所の女たちへ』舞台稽古の様子 写真:塚田史香

現在、東京・ザ・スズナリにて公演中のONEOR8公演『台所の女たちへ』。作・演出の田村孝裕が2014年に劇団青年座へ書き下ろした戯曲を2チームのキャストに分かれて演じており、10月4日までは恩田隆一率いる"恩田組"で上演されていた。10月5日からは、山口森広、冨田直美、音無美紀子、駒塚由衣、大草理乙子、かんのひとみ、幸田尚子、高野ゆらこ、工藤さや、里内伽奈、米田マナ海、榊原郁恵が出演する“山口組”の公演が開幕。その数日前、山口組が小屋入りしてから初めて行われた、衣装を身に着けての通し稽古を特別に見学したので、その模様をレポートする。

【写真】葬儀を舞台にしながらもカラッと笑える会話劇 ONEOR8『台所の女たちへ』“山口組”の舞台稽古の様子

◆それぞれのキャストが持つ魅力や人となりが役柄に活きる

本作は、葬儀の日の台所を舞台に、入れ代わり立ち代わり現れる女たちが賑やかな会話を繰り広げていく物語。軍需産業で財を成した二村家三代目・儀之介の通夜は明るく、笑い声が絶えず響いている。やがて、台所で語られる女たちの話題は、かつて二代目の葬儀で起こったとある事件におよぶ――。

かくも女たちは逞しく、いつの世もかしましい。惚れた腫れたの恋の話に近況がてらの噂話、夫や子どもなど家族の話――作中で描かれる60年という時代の流れの中でも、人が気になることや求めることはそう変わらないのだろう。台所を守る女たちの会話は、他愛もない雑談のようで、ふいに本質を突き、ふわりと愛が漂う。

舞台上には、昭和の面影を残す台所のセット。手前にはダイニングテーブルと6脚の椅子が置かれており、古めかしくも豊かな家庭だったことがうかがえる造りだ。通し稽古を前に、山口と音無の2人はぎりぎりまで台詞合わせに余念がない。大声で声出しをするキャストの傍らで、小道具や照明を再確認するスタッフの姿もあり、劇場という空間ならではの緊張感が漂っていた。ただ、大きすぎる声出しに反応して笑い声も上がり、キャストたちの和やかな関係性が垣間見えた。

二村家は長男・儀之介、長女・玉枝、次女・恵美子、三女・小百合の一男三女。玉枝は長女らしくしっかり者、恵美子はちょっとおとぼけで、小百合は少々したたかな印象だ。それぞれにひとり娘がおり、さらには女中、弔問客とその娘と登場人物は多いものの、誰もが“濃い”個性の持ち主で、見ていてもすんなりと頭に入ってきた。

音無が演じる美代は、かつて二村家の女中だった。戦争で両親を亡くして女中となり、奉公した二村家で儀之介に見初められて妻となった。椅子の位置が乱れるとさっと直し、手際よくテーブルを拭く姿からは、どれだけ丁寧に家へ尽くしてきたかがよくわかる。穏やかな口調はとても人当たりが良く、しなやかな佇まいには、この家に寄り添い続けた年月がにじみ出ていた。時折のぞくかわいらしさは、音無自身の魅力が役に溶け込んでいるからだろう。その人柄が、賑やかな台所にやわらかな温度をもたらしていた。

娘とともに現れた弔問客の京子を演じるのは榊原。夜の街での源氏名はマーガレットで、昔で言う儀之介の“2号さん”だった人物だ。テレビなどで見る榊原のイメージとは離れた役どころだが、意外なほどにはまっていた。夜の街を生き抜いてきた女性の豪胆さがありながら、どこかチャーミングにも映る。相反する二面を軽やかに両立させるのは、榊原ならではの魅力だろう。

唯一の男性キャストとなる山口が演じる儀之介は、女ばかりに囲まれて終始たじたじ。不器用で、こだわりが強くて、少し見栄っ張り。「男なんて…」と、台所の女たちが噂をするような、ちょっぴり頼りない人物像に思えた。ただ、とても優しい。それも優しいだけではなく、強い信念も伴っていて、だからこそ美代は尽くせたのだろうと納得できた。儀之介と美代の小気味良い会話からは確かな絆が感じられ、そんな“優しすぎる”儀之介を、山口は愛嬌たっぷりに演じていた。

◆同じ台本でもそれぞれのチームでキャラクターの手触りが違う面白さ

物語が進むと、台所の会話は二代目の葬儀での出来事へと遡っていく。そこで母親の若き日を演じるのは、現在の娘たち。ふとした仕草が母と重なる瞬間があり、親子は似るものだと頷いてしまう。そうして受け継がれる癖や振る舞いこそが、人の暮らしの積み重なりなのだろう。

葬儀という湿っぽいシチュエーションながら、カラッと笑える会話劇。通し稽古を客席で見守る田村の笑い声も、何度も劇場に響いていた。ちなみに、恩田組では儀之介を恩田隆一、美代を田中真弓、京子を高乃麗が演じている。恩田組は本番を観劇したが、同じ台本でもキャラクターの手触りが違い、そこも面白い。恩田の儀之介は繊細な優しさが感じられ、田中の美代は優しいほほえみを湛えながらも、手のひらで転がすような聡明さがあった。京子も、より豪胆な部分が強調されていた印象だ。俳優が変わることで、胸にしみてくる温かさは同じでも、滲んでくる色は違ってくる。恩田組を観劇している人も、ぜひその色の違いを味わってみてほしい。

(取材・文:宮崎新之 写真:塚田史香)

舞台『台所の女たちへ』は東京・ザ・スズナリにて10月12日まで上演。

※榊原郁恵の「榊」は「木偏に神」が正式表記

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