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「危険なカビ」に主なカビの薬がすべて効かなくなっていたと判明

  • 2026.10.7
「危険なカビ」に主なカビの薬がすべて効かなくなっていたと判明
「危険なカビ」に主なカビの薬がすべて効かなくなっていたと判明 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

お風呂場のタイルの目地に黒い点を見つけて、今日は見なかったことにしようと決めた夜は、誰にでもあるはずです。

カビの仲間には、人の体に入りこんで病気を起こすものもいます。

中でも、病院で広がりやすく、薬が効きにくいことで警戒されているのが「カンジドザイマ・アウリス」という真菌(カビの仲間)です。

人がこの真菌と戦うための薬は、いまどこまで通用するのでしょうか。

ケニアの病院で入院患者から見つかった菌を研究チームが詳しく調べ、その手がかりとなる報告を発表しました。

研究の詳細は、2026年9月29日付で学術誌『Scientific Reports』に掲載されました。

目次

  • 病院にひそむ真菌と、4種類の「武器」
  • ケニアで見つかった菌に、4種類の薬は効いたのか?

病院にひそむ真菌と、4種類の「武器」

病院にひそむ真菌と、4種類の「武器」
病院にひそむ真菌と、4種類の「武器」 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

カンジドザイマ・アウリスは、世界保健機関(WHO)が優先度の高い病原真菌として名指ししている相手です。

警戒される理由は、大きく3つあります。

1つ目は、病院の中で広がる院内感染を起こすことです。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(細菌と真菌が口の中で「悪魔合体」し、歯へのダメージを増大させていた)

2つ目は、身の回りの環境にしぶとく残り続けることです。

そして3つ目が、複数の種類の薬が効きにくい「多剤耐性」をもつことです。

今回の報告で問題になるのは、真菌による感染症の薬のうち、次の4つの系統です。

アゾール系、エキノキャンディン系、ポリエン系、そしてフルシトシンです。

医師にとって、これらは真菌と戦うための4種類の武器のようなものです。

ところが、この4系統すべてに耐性をもつ菌が、すでに見つかっていました。

それが「汎薬剤耐性(PDR)」と呼ばれる菌です。

汎薬剤耐性のカンジドザイマ・アウリスはきわめてまれで、これまでの報告は2022年にアメリカ・ニューヨークの患者1人から見つかった例だけでした。

つまり、世界でたった1例しか知られていない「例外中の例外」だったのです。

では、ケニアの病院で見つかった菌は、この例外の仲間なのでしょうか。

研究チームは、この菌の正体と薬の効き方を調べました。

ケニアで見つかった菌に、4種類の薬は効いたのか?

ケニアで見つかった菌に、4種類の薬は効いたのか?
ケニアで見つかった菌に、4種類の薬は効いたのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

調べられたのは、ケニアの病院に入院していた28歳の患者から採られた菌です。

この患者は、手術した部位に病院内で感染症を起こしていました。

研究チームは「VITEK 2」を使って、菌の種類を見分け、薬の効き方を調べました。

薬の効き方は、菌が増えるのを抑えるのに必要な薬の濃さ(最小発育阻止濃度、MIC)で表されます。

この値が大きいほど、たくさんの薬を使わないと菌を抑えられない、つまり薬が効きにくいということです。

調べた結果、この菌は4つの系統すべての薬に耐性を示しました。

アゾール系ではフルコナゾールが効かず(MIC 64 mg/L以上)、エキノキャンディン系ではミカファンギンが効きませんでした(MIC 8 mg/L超)。

さらにポリエン系のアムホテリシンB(MIC 2 mg/L)にも、フルシトシン(MIC 64 mg/L以上)にも耐性を示しました。

4系統すべてに耐性をもつカンジドザイマ・アウリスとしては、ニューヨークの例に続いて世界で2例目の報告となりました。

研究チームは、菌の遺伝情報をまるごと読み取る「全ゲノム解析」も行いました。

読み取った遺伝情報を、基準となる菌株(B8441株)と比べて、どこが違うのかを探したのです。

その結果、この菌は「クレードI」と呼ばれる系統のグループに属していることが分かりました。

さらに、4つの遺伝子に変異が見つかりました。

ERG11、CDR1、FKS1という3つの遺伝子では、たんぱく質の部品(アミノ酸)が1か所、別のものに置き換わる変異がありました。

もう1つのFUR1という遺伝子では、たんぱく質を作る途中に「ここで終わり」の合図が入ってしまう変異が見つかりました。

1例目はアメリカ、2例目はケニアと、別の大陸から同じく「全部効かない」菌が報告されたことになります。

研究チームは今回の発見を、薬への耐性の脅威が強まりつつあることを示すものだとしています。

そのうえで、抗真菌薬を必要な場面で適切に使う取り組み(抗真菌薬スチュワードシップ)が急いで求められると強調しました。

「世界に1例だけの例外」だった全部効かない菌に、2例目が加わりました。

私たちが当たり前に頼っている薬は、いくらでもある武器ではなく、大事に使わなければ尽きてしまう限りある備えなのかもしれません。

せめてお風呂場の黒カビくらいは、いつものスプレーにおとなしく負けてくれることを願うばかりです。

参考文献

Emergence of pan-drug resistant Candidozyma auris in Kenya, the second globally documented case (Scientific Reports)
https://doi.org/10.1038/s41598-026-70653-9

元論文

Emergence of pan-drug resistant Candidozyma auris in Kenya, the second globally documented case
https://doi.org/10.1038/s41598-026-70653-9

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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