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「VIVANT」で緊張感をまとう別班の司令官から、ギリシャ悲劇の王妃まで。キムラ緑子さん64歳の現在地

  • 2026.10.6

「VIVANT」で緊張感をまとう別班の司令官から、ギリシャ悲劇の王妃まで。キムラ緑子さん64歳の現在地

「VIVANT」で櫻井司令を演じているキムラ緑子さん。年末には一転、ギリシャ悲劇の王妃役に挑みます。演出家・栗山民也さんとの稽古では、役を知り、少しずつ近づいていく過程を楽しんでいるそう。インタビュー第1回は、「VIVANT」の役どころから、舞台『エレクトラ』への想いまでを伺いました。

プロフィール

キムラ緑子さん 俳優
きむらみどりこ●1961年生まれ。兵庫県淡路島出身。劇団M.O.P.を経て舞台のみならず、映画・ドラマで幅広く活躍。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」で注目を集め、近年は「VIVANT」、NHK連続テレビ小説「おむすび」などに出演。2026年12月、舞台『エレクトラ』に出演予定。

「裏切るとでもお思いですか?」

「裏切るとでもお思いですか? 誰がどうなるかは絶対言いません」

現在放送中のTBS系日曜劇場「VIVANT」。キムラさんは、敵か味方かが複雑に錯綜する壮大なスケールのドラマで、国家の意思決定に関わる自衛隊の秘密諜報組織「別班」の最高司令官・櫻井里美を演じている。

AIに囲まれた指令室から堺雅人さん演じる別班員・野木憂助に国を守るための任務を伝える櫻井司令。キムラさんが登場した瞬間、画面の空気が一変、緊張感がみなぎる。

「私は海外ロケには行かず、ずっと日本の、あの指令室のセットの中で朝から晩までたった一人で喋って、寂しく格闘しておりました。だから、時々堺さんと会うと、ホッとしたりして」

たまに登場する野外ロケのシーンでは、櫻井司令の人間味が微かにほどけて、見ているこちらもホッとする。

「ただ、堺さんのセリフがめっちゃ早いし、間違えないんです。タタタタタッて。私は普段からしゃべるのが早いんですけれど、『ん?』っていう間に堺さんのセリフが終わっている。瞬発力がすごいです。シーズン1から2の間に海外ロケを経て、会話や動きにさらにキレが出て、ああすごい、さらにすごくなったなと思いました。だから、私もついていくのが大変です」

さらに、15年続くNHK Eテレ「グレーテルのかまど」では、15代グレーテル役の瀬戸康史さんと軽妙洒脱なやりとりを繰り出す、声だけの「かまど」役で出演している。

「司令」から「かまど」まで、幅広い役柄を軽やかに行き来するキムラさんが次に立つ舞台が『エレクトラ』だ。

「私の役は主人公・エレクトラの母、クリュタイムネストラです。『エレクトラ』といえば、いにしえのギリシャ悲劇。なんかむずかしそう、登場人物の名前を覚えるだけでたいへん、と思われるかもしれませんけれど、そうはならない。人間臭くて、現代に生きる自分たちと共有できそうな役柄ばかりです」

父を殺した母への復讐に燃える娘・エレクトラと、みずからの“正義”を胸に秘めながら王である夫を殺した母・クリュタイムネストラ。

「これは家族の話です。実は母親が嫌い、という娘もいるかもしれないでしょう。そういう身近で起こりがちな家族の物語でありつつも、いま世の中で起きている戦いの話でもある、と私は思っています」

「性格的に、身体がすぐ動いちゃうんですね」

演出は栗山民也さん。キムラさんはこれまで何作か、栗山作品に出演してきた。

「栗山さんがどう演出なさるのかを聞いて、本番の舞台までに自分を成長させて変化していく。自分だけじゃなくて、共演者のみなさんもどうなっていくんだろう、って見るのも楽しみです」

W主演でエレクトラ役の明日海りおさんとは、今回が初共演となる。

「稽古場が楽しいんです。まず、栗山さんのノート(いわゆる“ダメ出し”)を聞く。共演者へのノートも稽古場で時間を共有しているから、次にこの人は何をしてくるのか、変化を見るのがすごくおもしろい。それが相手役だとしたら、こちらも変わる。それを結構長い時間かけてやる。最近、そういう現場が少ないので、栗山さんの現場すごくは好きですし、勉強になります。演じる役の人のことをもっともっと知りたい、理解したいと思い、研究し、ちょっとずつ近づくという作業なので、やればやるほど近づいていく感じが楽しいですね」

ドラマや映画にも活躍の場を広げているキムラさんだが、「私は舞台がいちばん馴染みがいい」と言う。35歳で東京に出てきてからというもの、ほぼ毎年欠かさず、舞台に立ち続けてきた。

「性格的に、セリフに合わせて身体がすぐ動いちゃうんですね、舞台の上で。でも、『エレクトラ』はサブタイトルが<詩と音楽の光景>ですからね。動いちゃう身体を抑えて、言葉だけでお客様に届けることができるのかしらっていう恐怖がちょっとだけあります」

ちなみに、直立不動で芝居をしなくてはならない、一人でしゃべらなくてはいけないシーンが多い「VIVANT」も「すごくたいへん」だそうだ。

クリュタイムネストラを演じることは「一人ストレートプレイ※」というキムラさん。では、娘に復讐を誓われる母・クリュタイムネストラにキムラさんご自身のお母さまを重ねてみることはあるのだろうか?

「考えたこともなかったです。でも、出てくるものは母なんでしょうね。演者というのは、その親からもらったものしか出せないから。だから、母の役を演じるとしたら、母の何かは出るんでしょうね。手の仕草でも、声でも、母はクリュタイムネストラのどこかにいるのかもしれません」

※ストリートプレイとは、セリフを中心に物語が進行する演劇

【information】詩と音楽の光景『エレクトラ』

2026年12月13日(日)〜12月30日(水) <東京公演>東京建物ぴあシアター
2027年1月16日(土)〜17日(日) <愛知公演>Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
2027年1月21日(木)〜22日(金) <大阪公演>梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

父を奪われ、母への復讐に燃える娘エレクトラ。夫を自ら裁いた王妃クリュタイムネストラ。愛と憎しみがぶつかり合うギリシャ悲劇を、台詞と旋律、沈黙と叫びが交錯する「詩と音楽の光景」として描く。これは、遠い神話ではない。そこにあるのは、戦争や分断、暴力が繰り返される今に通じる「正義とは何か」という問い。古代の悲劇が、いま新たな物語として立ち上がる。

原作:ギリシャ悲劇
翻案:岩切正一郎
歌詞:高橋亜子
音楽:ブランド・リー
演出:栗山民也
出演:明日海りお キムラ緑子 中尾明慶
渡邉蒼 徳重聡 豊原江理佳 山西惇 ほか

企画制作:ホリプロ
主催:ホリプロ/ぴあ
公演サイト https://horipro-stage.jp/stage/electra2026/

撮影/橋本哲

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