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霊長類のおしゃべりに「文法のルール」を発見か

  • 2026.10.3
霊長類のおしゃべりに「文法のルール」を発見か
霊長類のおしゃべりに「文法のルール」を発見か / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

人間の言葉と動物の鳴き声を分けるものは何か。この問いの答えとしてよく挙がるのが「複雑な文法」です。

動物の鳴き声の決まりは、人間の言葉ほど複雑ではないと考えられてきたからです。

そんな中、系統の離れた3種の霊長類の鳴き声の並びを、新しい方法で調べた研究が報告されました。

サルたちの「おしゃべり」には、人間の言葉に通じる決まりが隠れていたのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年9月21日に『bioRxiv (Cold Spring Harbor Laboratory)』にて発表されました。

目次

  • 複雑な文法は人間と動物を分ける「境界線」とされてきた
  • 3種のサルの鳴き声に、人間と同じ段階の決まりはあったのか?

複雑な文法は人間と動物を分ける「境界線」とされてきた

複雑な文法は人間と動物を分ける「境界線」とされてきた
複雑な文法は人間と動物を分ける「境界線」とされてきた / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

私たちは毎日、単語をただ並べるのではなく、決まりに沿って組み立てて話しています。

この文の組み立て方の決まりが、いわゆる文法(統語)です。

そして複雑な文法こそが、人間の言葉と動物のコミュニケーションを分ける境界線だと広く考えられてきました。

もちろん、動物の鳴き声にも文法らしき構造が見つかることはあります。

ただしそれは鳴き声の中にぽつぽつ現れる程度で、その決まりもせいぜい「正規」と呼ばれる単純な段階どまりだとされてきました。

一方の人間の言葉は、それより上の「超正規」な文法、つまり少なくとも「文脈自由」と呼ばれる段階の計算の複雑さを持つと考えられています。

正規の段階の決まりは、「この音の次にはこの音」と前から順番につないでいくようなイメージです。

これに対して超正規の段階では、ある構造の中に同じ種類の構造を入れ子のように埋め込むことができます。

たとえば「私が昨日見た犬が吠えた」という文では、「犬が吠えた」の中に「私が昨日見た」という別の文がすっぽり収まっています。

このように決まりが自分自身を中に含み込める性質は「再帰」と呼ばれます。

では、人間以外の霊長類の鳴き声は、本当に単純な段階どまりなのでしょうか。

研究チームはこれを確かめるため、確率的な形式文法(記号の並べ方の決まりを数学的に表したもの)について「尤度(ゆうど)」を求める新しい方法を使いました。

尤度とは、あるデータがある決まりから生まれたとした時の「もっともらしさ」を表す数値です。

これを使えば、鳴き声の並びをどの段階の決まりで説明するのが一番それらしいかを比べられるわけです。

調べたのは、系統的に離れた3種の霊長類、ボノボ、オリーブコロブス、コモンマーモセットの鳴き声の並びです。

3種のサルの鳴き声に、人間と同じ段階の決まりはあったのか?

3種のサルの鳴き声に、人間と同じ段階の決まりはあったのか?
3種のサルの鳴き声に、人間と同じ段階の決まりはあったのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

サルたちの鳴き声の並びは、単純な決まりだけで説明できるのか、それとももっと複雑な決まりが必要なのか。

分析の結果、3種いずれの鳴き声の並びにも、「超正規」な再帰的文法から生まれた可能性が最も高い部分が含まれていることが示されました。

研究チームは、この点が人間の言葉に似ていると述べています。

つまり、動物の文法は良くても単純な段階どまり、という従来の見方に収まらない並びが、サルたちの鳴き声の中に見つかったことになります。

ただし注意したいのは、これは鳴き声の並びのすべてではなく「一部」についての結果だという点です。

また、その部分がそうした文法から生まれたと断定したのではなく、「最も可能性が高い」と評価されたという結果でもあります。

それでも、系統の離れた3種のそれぞれで、こうした部分が見つかったことは見逃せません。

研究チームは今回の発見が、文法こそが人類へとつながる進化の大きな転換点だった、という考え方に疑問を投げかけるものだとしています。

文法の獲得を人類だけの大きな転換点とみなす筋書きのほかにも、別の進化のシナリオを考える余地が生まれるというわけです。

その具体的な中身は、これからの議論を待つことになりそうです。

私たちが「ただの鳴き声」として聞き流してきた音の並びにも、人間の言葉と似た決まりが潜んでいるのかもしれません。

人間と動物を分けていた線は、思っていたよりずっとあいまいなのかもしれません。

参考文献

Supra-regular recursion in primate vocal sequences (bioRxiv (Cold Spring Harbor Laboratory))
https://doi.org/10.64898/2026.09.19.752870

元論文

Supra-regular recursion in primate vocal sequences
https://doi.org/10.64898/2026.09.19.752870

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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