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70代女性「今日中になんとかしてください!」閉店10分前に在庫切れの薬を求められ…→切実な理由に薬剤師「頭が下がる思い」

  • 2026.11.5
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

閉店まで10分を切った夕方、「今日中に、いつものメーカーの薬を揃えてください」と譲らなかった70代の女性。

同じ成分の別メーカー品なら用意できると伝えても、「それではダメなんです」と首を振りました。

強いこだわりの背景には、認知症の夫と続けてきた毎朝の“いつもの薬”の習慣がありました。

薬の見た目の変化が心配なときに知っておきたいこともご紹介します。

「同じ成分でもダメなんです」と譲らなかった閉店間際の要望

閉店の10分前、70代くらいの女性がご主人の処方せんを持って来局されました。

血圧のお薬のジェネリックで、普段お渡ししているメーカーのものでした。ところが、そのメーカーの薬は出荷調整が続いていて、当日は在庫がありませんでした。

「同じ成分で、別のメーカーのお薬ならご用意できます」とお伝えすると、女性はすぐに首を振りました。「同じ成分でもダメなんです。いつものじゃないと」

「いつものメーカーですと、入荷は明日の午後になります」とご説明すると、女性の口調が一気に強まりました。

「明日の午後じゃ困るんです。今日中に何とかしてください!」
閉店作業を始めていたスタッフも手を止め、こちらを見ていました。

女性はバッグから、使い終わった薬のシートを取り出してカウンターに置きました。錠剤が入っていたくぼみは、すべて空になっていました。

「明日の朝の分が、もうないんです」

メーカーにこだわった切実な背景

「別のメーカーのお薬では、何か困ることがあるんですか」と尋ねると、女性は少し声を落としました。

「色が違うと、夫は吐き出してしまうんです」

ご主人は80代で、認知症があるそうです。以前、別のメーカーの薬に替わったとき、いつもの白くて丸い錠剤ではなく、薄い黄色の楕円形の錠剤になったことがありました。

するとご主人は「これは違う薬だ」と言って口に入れても吐き出してしまい、何日も飲めなかったといいます。

認知症の夫と続けてきた、毎朝の“いつもの薬”の習慣

「朝ごはんのあとに、白い丸いのを一つ。それが夫にとっての“いつもの薬”なんです」
女性が守ろうとしていたのは、メーカーそのものではなく、ご主人が安心して薬を飲める毎朝の時間でした。

私はすぐに系列の店舗に問い合わせ、同じメーカーの在庫があることを確認しました。翌朝の開店前に受け取れるよう手配できたことをお伝えすると、女性は「朝ごはんのあとなら間に合います」と言って、ようやく肩の力を抜かれました。

一見すると理不尽にも思えた要望の裏に、長年の介護で積み重ねてきた工夫があったことを知り、頭が下がる思いでした。

薬の見た目の変化が不安なときに伝えておきたいこと

お薬は同じ成分でも、メーカーによってデザインや色が変わることがあります。
見た目が変わっていても同じお薬なので、効果は変わらないはずですが、患者さんが安心して服用できるかどうかが何より大切です。

メーカーや色・形の希望は、かかりつけ薬局に事前に共有する

ジェネリック医薬品は、同じ成分でもメーカーによって色や形が異なります。見た目が変わると飲めなくなるご家族がいる場合は、その事情を薬局に伝えておいてください。記録に残しておくことで、在庫の確保や切り替え時の配慮がしやすくなります。

供給が不安定な時期に備えて、早めに残数を確認する

一部の医薬品では、出荷調整が続いているものもあります。寒暖差で処方が増える季節は特に、残りが数日分になる前に受診や来局の予定を立てておくと安心です。

※登場人物のプライバシー保護のため、内容の一部を変更しています。


ライター:下田篤男

京都大学薬学部総合薬学科を卒業後、調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務してきました。総合病院の門前店舗では管理薬剤師を務め、たくさんの患者さんと向き合う日々の中で、「薬を渡す」だけではない、人と人との関わりの大切さを実感しています。現在は薬剤師として現場に立ちながら、医療記事の執筆・編集や薬局経営コンサルタントとしても活動中。読者の皆さまに、薬局がもっと身近で頼れる場所になるような情報をお届けしていきたいと思っています。   


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