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「利息を払うのがもったいない」貯金300万で住宅ローンを繰り上げ返済するが…→1ヶ月後、40代夫婦を襲った“想定外の大誤算”

  • 2026.11.1
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。現役銀行員ライターの加藤隆二です。

毎月の家計のやりくりをする中で、「借金はとにかく早く返してしまいたい」と考える方は多いのではないでしょうか?特に住宅ローンのような大きな金額になると、手元にお金が貯まるたびに少しでも繰り上げ返済をして、利息の負担を減らそうとするお気持ちはよくわかります。

私自身、銀行の窓口でそうしたご相談を数多く受けてきました。しかし、「早く返すこと」ばかりを優先してしまった結果、思わぬトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。

今回は、「繰り上げ返済が一番」と信じ、手元の貯金をすべて住宅ローンの返済に充ててしまった40代のご夫婦が、その直後に直面した“残酷な結末”についてお話しします。

借金は悪?繰り上げ返済に潜む「見えない罠」

住宅ローンを組んだら、少しでも早く完済してスッキリしたいと思うのは自然なことです。しかし、実はその「早く返したい」という焦りが、家計を追い詰める原因になることがあります。

銀行の窓口でご相談に乗っていると、「利息を払うのがもったいないから、手元の貯金を全部繰り上げ返済に使いたいんです」と意気込むお客様がいらっしゃいます。確かに計算上は総支払額を減らせるため、一見正しい選択に思えます。しかし、手元から現金がなくなってしまうことの「流動性リスク(すぐに使える現金がなくなる危険性)」を見落としている方が非常に多いのです。

もし「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」の適用期間中であった場合、繰り上げ返済によって年末ローン残高が減少すると毎年の所得税・住民税の控除額が減るデメリットがあります。また、期間短縮型で返済期間を縮めた結果、当初借入時からの返済期間が10年未満になってしまうと控除の適用資格自体を失います。流動性リスク(現金の枯渇)に加えて住宅ローン控除への影響にも注意が必要です。

貯金300万円を全額返済に充てた40代夫婦の誤算

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

私が以前、窓口で対応した40代のAさんご夫婦のエピソードをご紹介しましょう。お二人は共働きで堅実に貯金をしており、「早く借金から身軽になりたい」と強い希望を持っていらっしゃいました。

ある日、Aさんご夫婦は銀行窓口を訪れました。

「加藤さん、コツコツ貯めた300万円があるんですが、これを全部住宅ローンの繰り上げ返済に充ててください!これでかなり利息が浮くぞ!」

ご主人は晴れやかな表情でそうおっしゃいました。私は銀行員として、「いざという時のために、手元に現金を残しておかなくて大丈夫ですか?」と念のために確認しました。しかし、奥様も「無駄な利息を払うくらいなら、早く元本を減らしたいんです。毎月のお給料もありますし、大丈夫です」と笑顔で答えられ、そのまま300万円全額を繰り上げ返済に充てる手続きを行いました。

翌月、突然の病気で直面した高金利の現実

ところが、事態は思わぬ方向へ転がります。繰り上げ返済の手続きからわずか1か月後、Aさんのご主人が突然の病気に倒れ、緊急入院することになってしまったのです。

数週間後、青ざめた表情の奥様が再び銀行窓口にいらっしゃいました。

「夫が入院してしまって、手術費や当面の生活費が足りないんです。毎月の給料も減ってしまうし、手元の貯金は先月全部ローンに突っ込んでしまって……どうしよう……」

奥様は声を震わせておられました。会社員の夫が入院・手術した場合、公的医療保険の「高額療養費制度(限度額適用認定証)」により窓口での自己負担額は月数万〜十数万円程度に抑えられます。また、休職により給与が減少・無支給となった場合も「傷病手当金」(標準報酬日額の約3分の2)が支給されます。そのため、病気入院したからといって数百万円規模で直ちに現金が不足し高金利ローンを借りるしかない、というわけではありません。

しかし、一時的な立替費用や傷病手当金入金までのタイムラグ(申請から1〜2か月程度)、差額ベッド代等によって手元資金が枯渇していれば資金ショートを起こす展開自体は現実的です。手元に現金がないため、急遽医療費や生活費をまかなうために、金利が年10%を超えるローンを借りてしまったというのです。1%未満の住宅ローン金利を節約するために貯金を使い果たし、結果的にその10倍以上も高い金利でお金を借りるという大きな誤算となってしまいました。

緊急予備資金は必ず手元に残す

Aさんご夫婦のケースは決して珍しいことではありません。「借金返済」と「手元資金の確保」は、どちらか一方に偏りすぎないバランスが重要です。 

このような事態を防ぐためには、どんなに繰り上げ返済をしたくても「緊急予備資金」には絶対に手をつけてはいけません。一般的に、生活費の半年分から1年分(ご家庭にもよりますが、最低でも200万円〜300万円程度)は、いつでも引き出せる普通預金などに現金として残しておくべきです。

現在の日本の住宅ローンは歴史的な超低金利です。一方で、病気や失業など万が一の際に慌ててお金を借りようとすると、カードローンやフリーローンなど高金利の借り入れに頼らざるを得なくなります。「借りられる超低金利」は最大限に活用し、手元のキャッシュはしっかり守るという視点を持つことが、家計防衛の鉄則です。

住宅ローンは長く付き合っていくものです。目先の利息にとらわれず、いざという時にご自身と家族を守る「現金」の価値を、今一度見直してみてくださいね。


執筆者:加藤隆二
現役銀行員ライター。保有資格:FP2級(個人資産相談業務) 銀行勤続30年以上の豊富な融資・預金業務の現場経験を活かし、生活に直結するお金のリアルな事情を発信し続けています。

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