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朝ドラ【風、薫る】転生?継承?そんな雰囲気を漂わせた、まさかのラストシーン

  • 2026.9.28

朝ドラ【風、薫る】転生?継承?そんな雰囲気を漂わせた、まさかのラストシーン

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。近代看護界の先駆者となった2人の女性を主役とする物語。「風、薫る」のレビュー、最終回です。

ツヤはついに看護婦試験に合格!

時は現代。明るく清潔な医療現場できびきびと働く二人の看護師。映し出された二人の顔は、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)そっくりである。りんと直美が撒いた種は、100年以上の時を超え現代に看護師という職業を立派に根づかせ立派な花を咲かせている。現代の二人の看護師は、りんと直美の子孫だったり、はたまた〝転生〟のような存在だったりするのだろうか、同じ俳優が演じることで実感するのは〝継承〟、そんな雰囲気を漂わせるラストシーンとなった。

NHK連続テレビ小説『風、薫る』の最終週「道標」が放送された。りんと直美は、まだまだ整っているわけではない看護婦の世界への道を整えていこうと、まさにサブタイトルが示す「道標」になるべく、看護婦養成所を開設する。かつて「看病婦」と呼ばれた社会的に低い地位だった患者の面倒を見る存在から、ナイチンゲールの教えを土台とし、職業としての「看護婦」という存在をこの国に築き上げていくなか、さまざまな壁が現れては乗り越えてきた。

派出看護が広まる中で質の悪い看護婦が派遣されたり高額を要求されるような事態が訪れたりすることもあった。看護婦が職業として定着していくために、教育や資格が制度化されていき、正規の教育を受けていないため独学を11年も続けながらも正式には看護婦として認められないツヤ(東野絢香)のような存在も生まれた。そんなツヤも、直美たちの教えによってついに合格することができた。

りんと直美の養成所が、未来の看護師たちに「道標」として示すテキストは、やはりナイチンゲールの著書「Notes on Nursing』である。言うまでもない、かつて二人がバーンズ(エマ・ハワード)のもとで看護とは何かを学んだときに手にした本である。

「多少の犠牲は仕方ない」
衛生局の柳生(中村倫也)はこう言った。正しい看護婦を誕生させていくための交通整理の過程でそういった状況が起こることはやむを得ないという冷静な考え方だ。しかし、そういった「犠牲」をできる限り拾い上げていきたい、りんも直美もそういう性格であることは、これまでずっと見守ってきた我々はよく知っている。

直美は柳生に養成所の実習を見に来てほしいと言う。「犠牲」となったかもしれないツヤのがんばりをその目で見てほしいという思いがあったからだ。りんとともに、リウマチ患者として入院する佳枝(相田翔子)を看護するツヤは、佳枝の気持ちに寄り添うりんの姿に、本では学べない「看護」の側面を体験することができた。

そんなりんも、いまだ看護とは何かということがわかっていないのかもしれないと言う。しかし、大切なのはわからないまま考え続けることである、そう気づいたりんは、看護とは「今そこにあるもの」と結論づける。困っている患者が求めるものこそが看護だと。直美は直美で、わからないものはわからないままで大事にしていきたいとする。

養成所での学びのかいあって、ツヤはついに看護婦試験に合格する。この合格は、りんたちが積み重ねてきた努力が結実したことも意味する、物語の中でも大切な成果である。

偉人的雰囲気というよりは……

そんなりんは、シマケン(佐野晶哉)に勧められた通り、本を書くことを決意、それは包帯の巻き方や伝染病患者の看護など多岐にわたる実用書である。これまで学んできたことをすべて詰め込んだような一冊だ。これからの看護婦を目指す女性たち、病院へ通えない人たちが、頁をめくることで学びとなり、看護の手助けとなることができる。これもまた「道標」となる存在だ。

出版記念パーティには多江(生田絵梨花)が駆けつける。多江はいまや帝国医大病院の婦長である。多江もまた、りんや直美と別の場所、別の立場から看護婦の未来への道標を着実に築き上げ、給金の底上げなども実施するなど、やはり道標として役割を果たし続けてきた。

作中ことあるごとに登場した女性の人生を表す双六にも「看護婦」が駒の一つとして加わり、「一家団欒」がゴールに示されるようにもなった。「奥様」ばかりが最良の上がりではない。選択肢というものを女性が獲得したこともまた、りんや直美が駆け抜けてきた時代の大きな一歩だったのではないだろうか。

その作品タイトルの通り、風が吹くごとに物語は大きく動いてきた。そんな風の精のように、直美やりんの前に突如として現れ言葉を

「ふたりが起こした風は、この先遠くまで吹き続けるよ」
そんな言葉を残し、いつの間にか真風は姿を消していた。りんと直美が歩んできたことで起こされた風は、吹き続ける。それが冒頭に記した、現在の医療現場のラストシーンにつながってくる。

この作品は、「明治のナイチンゲール」とも呼ばれ、日本初のトレインドナースとして活躍した二人の人生をもとに紡がれたものである。日本の看護、医療の歴史の中でも重要な役割を果たしたといっていい二人の物語でありながら、そのような偉人的雰囲気というよりはある意味「普通」に近い、つまずいたりうまくいかなかったりする等身大に近い描かれ方をしてきたように見え、二人のキャラクター通り「寄り添って」くれるような存在だったことが印象に残った。

二人が切り開いた道は、「今そこにあるもの」をその後の時代ごとに重ね続け、必要なときにやはり風が吹き、それを感じた人たちが続き、現在我々が生きる時代へと繋がり続けてきたのだろう。風は、いつまでも吹き続けている。

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