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「いいね」より「微妙だったね」に流される――人の目が気になる人

  • 2026.9.25
人の目が気になる人、「いいね」より「イマイチ」に流されていた
人の目が気になる人、「いいね」より「イマイチ」に流されていた / Photo by https://kaboompics.com/ on Pexels

映画の帰り道、友だちの「微妙だったね」の一言で、さっきまでの「面白かった」がしぼんでいく。

人からどう評価されるかがとても気になる人は、周りの否定的な気持ちに、自分の気持ちまで合わせてしまいやすいようです。

首都師範大学と浙江師範大学の研究チームは、若者44人に人づきあいの場面の画像を見せ、「自分がその場にいたらどう感じるか」を答えてもらいました。

その後で「ほかの学生の評価」を見せると、人の評価を恐れる傾向が強い人たちは、周りが自分より否定的な時に、評価をはっきり下げていたのです。

脳の電気信号にも、その否定的な声に長く注意を向け続けている様子が表れていました。

研究内容の詳細は2026年5月1日に『Biological Psychology』にて発表されました。

目次

  • 「周りはもっと嫌がっている」と知ると、気持ちも沈んだ
  • 仕組まれた「ほかの学生の評価」で、気持ちの揺れを測った
  • 脳は否定的な声を「じっくり」受け止めていた

「周りはもっと嫌がっている」と知ると、気持ちも沈んだ

「周りはもっと嫌がっている」と知ると、気持ちも沈んだ
「周りはもっと嫌がっている」と知ると、気持ちも沈んだ / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

誰かに悪く思われていないかが、いつまでも頭から離れない。

こうした気持ちがとても強い状態を、心理学では「社交不安」と呼びます。

社交不安の特徴は、人から悪く評価されることへの強い恐れと、周りに受け入れられたいという強すぎる気持ちの2つです。

この2つが重なると、人は仲間外れにされないように、周りに合わせて身を守ろうとしがちです。

これまでの研究が主に調べてきたのは、顔の魅力の点数や、知識を問う質問など、外に出す意見の同調でした。

今回の研究チームが注目したのは、もっと内側にある「気持ちの同調」です。

気持ちの同調とは、ある場面で自分がどう感じそうかという気持ちを、周りの人の感じ方に合わせて変えてしまうことを指します。

チームは、社交不安の傾向を測るアンケートで社交不安の傾向が高かった若者22人と、とても低かった若者22人を比べました。

すると傾向の強いグループは、ほかの学生が自分より否定的に感じていると知らされると、あとで評価し直した時の点数をはっきり下げていたのです。

反対に、ほかの学生が自分より前向きだった時には、同じようには合わせていませんでした。

しかも傾向の強いグループは、とくに困ったことの起きない中立の場面まで、傾向の弱いグループより嫌なものとして評価していました。

これは最初の評価でも、評価し直した後でも同じでした。

研究チームはこれを、何ごとも悪いほうに受け取りやすい「否定への偏り」が全体に広がっている表れだと見ています。

研究を紹介した記事は、周りに合わせて気持ちを変え続けると、自分らしい感じ方が少しずつ削られ、後ろ向きな考えが強まるおそれがあると指摘しています。

人の評価に振り回される感じに覚えがある人には、気になる話でしょう。

ただし、これは若者44人という小さな研究の結果で、参加者は画像の場面に自分がいると想像して答えています。

また、2つのグループは、アンケートで測った社交不安の傾向の強さで分けられたものです。

では、目に見えない気持ちの揺れを、チームはどうやって確かめたのでしょうか?

そして、自分と食い違う声を見た後で否定的な場面を評価し直す時、脳では何が起きていたのでしょうか?

仕組まれた「ほかの学生の評価」で、気持ちの揺れを測った

仕組まれた「ほかの学生の評価」で、気持ちの揺れを測った
仕組まれた「ほかの学生の評価」で、気持ちの揺れを測った / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

実験の参加者は、電極のついた帽子をかぶって、パソコンの画面の前に座りました。

電極は、頭の表面から脳の電気信号を拾うセンサーです。

画面には、人づきあいの場面をえがいた画像が、全部で300枚映し出されます。

半分は中立の場面で、残りの半分は人づきあいの中で脅かされるような、否定的な場面でした。

参加者は1枚ごとに、自分がその場面の人物になったと想像します。

そして、その場にいたらどれくらい心地よいか、あるいは嫌な気分かを、9段階で答えました。

答えを決めるとすぐに、画面に「以前に同じ画像を見た大学生200人の平均点」が表示されます。

ところが実は、この点数は研究チームがあらかじめ決めておいた作りものでした。

全体の3分の1では参加者と同じ点数が、別の3分の1では少し前向きな点数が、残りの3分の1では少し否定的な点数が示されたのです。

つまり参加者は、「周りも同じ」「周りはもう少し平気」「周りはもう少し嫌がっている」という3通りの反応を、知らないうちに見せられていたわけです。

そのあと参加者は、30分の休憩をとりました。

休憩が終わると、同じ画像をすべてもう一度評価しますが、今度はほかの学生の点数は出てきません。

1回目と2回目の点数を比べれば、周りの評価を見たことで、その人の見込む気持ちがどれだけ動いたかが分かります。

こうして浮かび上がったのが、先ほどの「否定的な声には合わせ、前向きな声には同じようには合わせない」という偏りです。

研究を紹介した心理学ニュースサイト「PsyPost」の記事は、傾向の強い人たちが、自分の恐れを裏づける情報を選んで取り込み、恐れに反する情報をほとんど受け流していたと説明しています。

とはいえ、点数の変化だけでは、頭の中でどんな処理が起きていたのかまでは分かりません。

そこでカギになるのが、同じ実験で記録していた脳の電気信号です。

脳は否定的な声を「じっくり」受け止めていた

脳は否定的な声を「じっくり」受け止めていた
脳は否定的な声を「じっくり」受け止めていた / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

チームが注目した脳の信号は、2つあります。

1つ目は、周りと意見が食い違ったと気づいた時に、自動的に出る素早い反応です。

食い違いに気づいてからおよそ400ミリ秒後(0.4秒後)に、電気信号が一瞬へこむもので、「N400」と呼ばれます。

2つ目は、もっと遅れて出て、長く続く信号です。

脳がある情報を、自分の目標や恐れに深く関わるものだと判断すると、電気の高まりが長い時間保たれます。

これは「LPP(後期陽性電位)」と呼ばれ、注意を向け続けたり、気持ちを整えようと努力したりしている目印とされています。

たとえるなら、1つ目は「あれ、違う」と気づく瞬間で、2つ目は「どういうことだろう」と考え込んでいる時間です。

はっきり差が出たのは、2つ目のLPPでした。

社交不安の傾向が強い人たちは、自分と食い違う周りの評価を見た後で否定的な場面を評価し直す時、とくに周りの点数が自分より低かった場合に、LPPの変化が大きくなっていたのです。

研究チームはこれを、否定的な声を処理するために、頭の働きを多く注ぎ込んでいた表れだと考えています。

PsyPostの記事の言葉を借りれば、周りをただ自動的にまねしていたのではなく、食い違いについて考えすぎ、否定的な情報を自分の気持ちに一生懸命取り込もうとしていた、ということです。

一方、1つ目のN400では、はっきりした違いは見つかりませんでした。

統計の上では、グループ・周りの評価の向き・場面の種類という3つの条件が絡み合う効果が出ました。ただ、組み合わせごとに細かく比べると、どれも統計的な有意差には届かず、はっきり解釈できる結果にはならなかったのです。

このことから記事は、社交不安に見られる偏った同調は、とっさに止められない反射ではなく、後から来る深い考えの段階で生まれていると見ています。

研究チームは、否定的な声に偏って合わせることが、社交不安の症状を長引かせる1つの原因になっている可能性があると述べています。

もしこの症状を和らげることが出来るのなら、前向きな場面や前向きな声がどんな役割を持つのかは、これから調べる必要があるそうです。

人の目が気になる脳は、暗い声にばかり熱心に耳を貸す、ちょっと困った聞き上手なのかもしれません。

参考文献

Social anxiety drives people to conform specifically to negative feedback (PsyPost)
https://www.psypost.org/social-anxiety-drives-people-to-conform-specifically-to-negative-feedback/

元論文

Aberrant emotional conformity among individuals with social anxiety
https://doi.org/10.1016/j.biopsycho.2026.109276

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。 好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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