1. トップ
  2. マンガ
  3. 「毒親」という言葉に救われた。親を疑えず「自分が悪い」と思い続けたサバイバーの心と行動の変化【マンガ】

「毒親」という言葉に救われた。親を疑えず「自分が悪い」と思い続けたサバイバーの心と行動の変化【マンガ】

  • 2026.10.10
undefined
©️『毒親育ちADHDリケジョが○○するまで』/ いちこ

「自分が弱いだけ」と思っていた作者を変えた言葉

嫌なことをされたのに、「自分が弱いだけかもしれない」と考えてしまう。相手が親なら、なおさら自分の感じ方を疑うこともあるでしょう。いちこさん(@1ch1k0_comic)の漫画『毒親育ちADHDリケジョが○○するまで』は、作者が子ども時代を振り返り、現在の生きづらさと向き合う作品です。その転機となったのが「毒親」という言葉でした。ただし、その言葉を知った瞬間に、すべてが解決したわけではありません。

undefined
©️『毒親育ちADHDリケジョが○○するまで』/ いちこ

「毒親」という言葉が必要だった理由

作者は第2話で、「毒親」という表現を知ったとき、うまい言葉だと思ったと語ります。研究職の経験もある作者は、毒の影響を量に結びつけ、親の叱責も程度や方法によって子どもへの影響が変わると考えました。子どもの頃の作者は、父親に厳しく責められても、自分が悪いと思っていました。妹への暴力についても、ニュースで見るような深刻な虐待とは違うと考え、当時は虐待だと認識していなかったと振り返ります。「もっとひどい家庭もある」「楽しい思い出だってある」。そう考えると、自分が傷ついたことまで否定したくなる場合があります。しかし、ほかの家庭と比べて被害の大きさを競わなくても、つらかった経験はつらかったと言ってよいはずです。作者にとって「毒親」は、親のすべてを否定するためではなく、これまで自分のせいにしていた苦しさを別の角度から見る言葉になったのでしょう。

undefined
©️『毒親育ちADHDリケジョが○○するまで』/ いちこ

本音を言えない理由が見えてきた

実家を離れた作者は、大学生活を楽しみ、研究職にも就きました。それでも大人になってから、不安や虚しさを抱えるようになります。仕事で出会った人たちには、繰り返し「本音を言わない」と指摘されました。なぜ本音を言わないのか。作者が自分に問いかけたとき、浮かんだのは「ありのままの自分は愛されない」という考えでした。本人にとって当たり前になっていた考え方ほど、その存在に気づきにくいものです。「相手に合わせるのが普通」「嫌だと言ったら嫌われる」。そう思って行動しているうちは、自分が何を望んでいるかを尋ねる機会さえ失われてしまいます。作者はこの気づきをきっかけに、忘れていた過去の記憶と向き合います。本音を言えないことを単なる性格の問題として片づけず、その背景を探り始めたのです。

undefined
©️『毒親育ちADHDリケジョが○○するまで』/ いちこ

自分が傷ついたことを信じるまで

後編第35話で作者は、職場にも母親と似た言葉で自分を責める人物がいることに気づきます。そこで初めて、自分の親が毒親である可能性を考えました。関連する本や体験談を読むと、涙が止まらなくなったり、似た感情を思い出したりしたといいます。それでも作者は何度も自分を疑い、幼少期の話を人にして、その反応を確かめました。ここが、この作品で特に胸に残るところです。作者は長年、親から傷つけられてきただけでなく、「自分は傷ついた」と判断する自分自身まで信じられなくなっていたのです。言葉を知ることは、すぐに答えを得ることとは違います。作者の場合、「毒親」という言葉があったからこそ、本を読み、人と話し、過去の出来事を確かめることができました。名前のなかった苦しさに、ようやく向き合う入口ができたように読めます。

undefined
©️『毒親育ちADHDリケジョが○○するまで』/ いちこ

言葉を知った先に生まれた小さな変化

作者はその後、経験を漫画に描き始めます。過去を振り返る作業では、見たくなかった出来事や、忘れていた感情にも向き合うことになりました。それでも最終話では、自分に合わないことを断ったり、過去を人に話したりできるようになったと語ります。家庭の話をしたら人が離れると思っていたのに、実際には信頼できる人が増えたことも変化の一つでした。かつて作者は、家族の問題を隠すために本音を抑えていました。今は、自分の経験を漫画として公開しています。

この対比には、「毒親」という言葉を知ってから積み重ねてきた変化が表れているように思えます。自分の過去にも、ずっと「私が悪かった」で片づけてきた出来事はないでしょうか。無理に思い出したり、誰かを一つの言葉で決めつけたりする必要はありません。ただ、当時の自分が何を感じていたのか、今なら違う見方ができるのかを考えてみる。その小さな問いが、自分の経験を捉え直すきっかけになるかもしれません。作者は完全に回復したとは語っていません。今後また心境の変化が描かれるなら、過去を理解した作者が、現在の自分とどう付き合っていくのかが気になります。これから積み重ねる小さな選択にも、注目したいところです。

X(旧Twitter):いちこ(@1ch1k0_comic)



▶︎「うつ病になりかけて…このままじゃアカン」本編を【第一話から読む】

#1 私と妹は虐待サバイバー
#1 私と妹は虐待サバイバー

 

クリエイター情報

いちこ

人生ふりかえりコミックエッセイ「毒親育ちADHDリケジョが○○するまで」連載中。誰かの変化のキッカケになったら嬉しいです。 化粧品の研究開発者|臨床心理学に興味しんしん|水族館と博物館とカレーもだいすき

の記事をもっとみる

注目コンテンツ