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「弱みを見せるのは危険。ただ強く賢くあれ」そう生きてきた心臓外科医が、人に頼れない理由【漫画】

  • 2026.10.8

他人から指摘されて初めて気づく自分のクセというのはあるものだ。また、うっすら自認しているけれどなかなか修正できないことがあるとき、指摘されるとモヤっとしてしまうのは、その指摘が図星であることが多い。認めたくない自分と、自分でも分かっている自身の良くないところ。そういう思わぬきっかけから、人との距離が縮まることもある。

『おつかれさまです、榛原さん』(あまめのこし)は、社会で生きていくうえで避けては通れない「人との関わり」のギブアンドテイクがうまくできない人ほど刺さるヒューマンドラマだ。

この物語の主人公は、手術件数、術後成績ともに国内トップの心臓血管外科医である榛原あおい(はいばら・あおい)。卒後11年目の中堅医師として同僚の医師や看護師、患者からの信頼も厚く、周囲からは天才外科医と言われる憧れの存在だ。だが一方で、仕事に全振りで私生活を整えられず、汚部屋暮らしをしている現実も…。売れっ子装幀家・梶良太との出会いをきっかけに、榛原は少しずつ自分と向き合い始める――。

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出典:『おつかれさまです、榛原さん』【4話】自己責任論(pixiv)

放っておけない

第4話では、完徹当直明けに自伝本の打ち合わせを終えた榛原を、心配した梶が自宅まで送ることに。ゴミ屋敷と化している榛原の自宅を見た梶は、そんな状態で生活する榛原を看過できないと片付け始める。

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出典:『おつかれさまです、榛原さん』【4話】自己責任論(pixiv)

「頼ること」は「弱みを見せること」

榛原が片付けながら思い出すのは、地元で過ごした学生時代の記憶。それは、榛原が人に簡単に甘えたり頼ったりすることができない原因とも言えるものだった。地方で、男性の後ろ盾のない女家庭において、差し出される親切は下心や支配の入り口。「弱みを見せるのは危険。ただ強く賢くあれ」。そう思って生きてきた榛原にとって、私生活がきちんとできていないことを開示したり簡単に人を頼るのは、弱みを見せることと同義だ。

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出典:『おつかれさまです、榛原さん』【4話】自己責任論(pixiv)
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出典:『おつかれさまです、榛原さん』【4話】自己責任論(pixiv)

誰にでも得意・不得意なことがあって、できることや得意なことを補い合いながら私たちは暮らしている。榛原は仕事の現場では仲間と助け合いながら仕事をしているのに、人間的な生活を送ることは「一人でできていて当たり前」だと思っており、その思い込みによって自分で自分を苦しめているようにも見える。榛原のように「周囲に頼る=甘え=悪いこと」と考えて抱え込んでしまう思考の現代人は多いだろう。

最初は梶に対し苦手意識を持っていた榛原だったが、梶の仕事と梶の優しさに触れることで、第一印象から少しずつ変わっていく。

梶の仕事である装幀は、「作者の言わんとすることを汲み、編集部の方針を尊重し、商業性を担保すること」。人の上辺や外見をなぞるだけではその人の本質にたどり着くことはできず、そこから一歩も二歩も踏み込んでどんな人なのかを知ろうとしなければ本質を知ることはない。梶が装幀の仕事をする上で作者をきちんと理解し、作者の思いを汲もうとしてくれていることを榛原も理解していく。7話では心の距離が少しずつ変化していく様子が伝わってくる。

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出典:『おつかれさまです、榛原さん』【4話】自己責任論(pixiv)

ドキッとさせられる、梶のセリフ

また、梶の「身に覚えがありすぎる光景」という発言も気になる。榛原の心のシャッターをやすやすと開けていくように見える梶だが、実は梶は梶で自分を労わることができない過去があったのかもしれない。

梶の訪問と部屋の掃除を受け入れてしまったことで、受け取るつもりがなかった梶のフォローや気遣いを受け取るかたちになった榛原。梶の「返せる自分じゃないと人と関われないって思ってますか?」という言葉をきっかけに、榛原自身の根底にある思いに気づいていきそうだ。

自伝本の装幀デザインを変更したいと申し出た榛原。装幀と本の内容とのギャップが出そうな気もするが、自伝本はそのまま出版されるのか。そして、榛原と梶の関係性はどう変わっていくのか。まだまだぎこちない2人が生み出す自伝本がどんな作品になるのか、今後の展開に目が離せない。

 


あまめのこし
2024年9月に『おつかれさまです、榛原さん』の読み切り版をpixivに投稿し、翌2025年4月から連載を開始。本作は2025年4月の「pixivマンガ月例賞」で大賞を受賞した。普段は社会人生活を送りながら漫画制作に取り組んでいる。趣味は、読書、映画、乗馬、観劇。

・ブログ
・作品:『おつかれさまです、榛原さん』

 



 

▶『おつかれさまです、榛原さん』本編を第1話から読む

#1 この人 苦手だ
#1 この人 苦手だ

 

クリエイター情報

あまめのこし

野生の漫画描き。  『おつかれさまです、榛原さん』という女医が主人公のヒューマンドラマを描いています。汚部屋外科医と、おせっかいデザイナーの再生譚。 人間愛が好き。

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