1. トップ
  2. 「自分をいじめていた同級生がトラックに…」目撃した男性が見せた“表情”の真意は【マンガ】

「自分をいじめていた同級生がトラックに…」目撃した男性が見せた“表情”の真意は【マンガ】

  • 2026.8.30
undefined
©️『出張裁判係』/ ユリカ・ユリカ・ユリカ

毎日を忙しく生きていると、死について考える余裕など、なかなか持てない。
「来月どうしよう」「老後はどうしよう」と、今を生きるための問題だけで精一杯になりがちだからだ。

それでも、社会の先行きへの不安が大きくなったとき、ふと「死んだ後、自分はどうなるんだろう」と考えてしまうことはないだろうか。
今では、死をきっかけに別の人生へ進む「異世界転生」ものも珍しくない。「死んだら、もう一度やり直せる」というストーリーが主流になる中、まったく逆の方向から死後の世界を描く漫画がある。それがユリカ・ユリカ・ユリカ(@ma2nagaaan)さんの『出張裁判係』だ。

 『出張裁判係』は、幽霊を倒すのではなく「説得」する

昨今の漫画やアニメでは、死をきっかけに別の世界で人生をやり直す「異世界もの」が主流で、「死」は終わりではなく、人生から逃げ出すための入口として描かれることも多い。

本作はそれとはまったく違う角度から「死」を描いている。単純に死者と戦う物語ではなく、あの世へ行く期限である「49日」を守らない幽霊に対して、退治するのではなく「説得」を試みる物語なのだ。この魂は何を抱えてこの世に残っているのか、どうすれば本人が納得してあの世へ進めるのか——そこに向き合う作品である。


49日を過ぎても成仏しない幽霊には、簡易裁判が開かれる。それでもあの世へ行くことを拒み続ければ、思考や魂そのものが消え、悪霊となってしまう。つまりこの作品では、生きている間の「どう生きたか」だけでなく、死んだ後の「死をどう受け入れるか」までもが問われるのだ。

undefined
©️『出張裁判係』/ ユリカ・ユリカ・ユリカ

さらに面白いのが、「裁判」と「死後の世界」を組み合わせている点だ。
幽霊や悪霊を退治するには、お祓いをする——つい、そんな展開を想像してしまう。しかし『出張裁判係』の主人公たちが行うのは、あくまで公正・公平な裁判である。幽霊を「説得」し、対話を重ね、あの世へ向かう幽霊自身の「納得」を描いているのだ。

主人公・渡辺と裁判係が向き合うのは、その人の「人生」

『出張裁判係』の面白さが表れているのが、第1話から第3話にかけて描かれる、主人公・渡辺と押切のエピソードだ。第1話で渡辺は、自分をずっといじめてきた押切が、居眠り運転の車に轢かれて命を落とす瞬間を目撃する。

第2話では、「もう自分はいじめられない」——そう思った渡辺が、押切の事故の瞬間、思わずホッとしたような笑顔を見せてしまう場面が描かれる。それは決して押切の死を喜んだわけではなく、長い間苦しめられてきた人間が、ようやく恐怖から解放された瞬間にこぼれてしまった笑顔だった。

しかしその光景を、当の押切自身が見ていたのである。

undefined
©️『出張裁判係』/ ユリカ・ユリカ・ユリカ

自分の死を悲しむどころか笑った渡辺に、押切はプライドを傷つけられ、あの世へ行くことを拒み続ける。押切の怒りは収まらず、ついには暴走して裁判空間で暴れ回ってしまう。

そこで第3話、裁判係が押切に下すのは「有罪」という判決だ。裁判係は常に公正・公平であろうとするが、それは誰もを平等に扱うということではない。「想像力も無く 自身の犠牲者に何の悔いも恥もしない 自己中心的で人間的愚か者はーー「嫌い」に当たります」。裁判係は押切を、そう厳しく断じる。

undefined
©️『出張裁判係』/ ユリカ・ユリカ・ユリカ

このまま この世を彷徨い 魂の存在が崩れ果てても良い」——そう突き放すほど厳しい裁判係だが、この話の真骨頂はその先にある。プライドが完全に折れた押切は、ようやく観念してあの世へ行くことを決意する。

そこで渡辺が最後にかけるのが、「もし 生まれ変わりがあったのなら もっと純粋な顔で笑えるようなところに 産まれたらいいな」という、意外な優しさの言葉だった。渡辺は押切の行為を許したわけでも、苦しみを否定したわけでもない。それでも一人の人間として、その先の人生を願う。

「有罪だから終わり」ではなく、その人が何をして誰を傷つけ、何を抱えたまま死んだのか、そして最後にどう死を受け入れるのか——『出張裁判係』が描いているのは、死後の裁判という形を借りた、人生そのものへの見つめ直しなのだ。

「死んだらやり直せる」ではなく、「今をどう生きるか」

「死」を人生のやり直しの入口として描く物語も魅力的だが、本作はまた違う角度から、「人生を終えたとき、自分は何を残しているのか」という視点で死と向き合っている。

私たちは「いつか謝ろう」「いつか会おう」とつい先送りにしてしまうが、その「いつか」が必ず訪れる保証はない。死後の世界を描きながら、最後には「今をどう生きるか」という問いを読者自身へ返してくる。それが本作の魅力だ。

X(旧Twitter):ユリカ・ユリカ・ユリカ(@ma2nagaaan

 



 

▶︎ あの頃、自分をいじめていた相手は、目の前で【第1話を読む】

#1 死んだ後、成仏しようとしない『彼ら』のもとに現れるのは…
#1 死んだ後、成仏しようとしない『彼ら』のもとに現れるのは…
出張裁判係
ユリカ・ユリカ・ユリカ
全話一覧を見る 

クリエイター情報

ユリカ・ユリカ・ユリカ

その辺で好き勝手に主に漫画を描いている人。 名前はマウンテンゴリラのノリで名乗っておりますので、 「ユリカ」とだけで大丈夫です。 3を付けてもいいですね。敬称みたいになります。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ